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時魔術士の強くてニューゲーム ~過去に戻って世界最強からやり直す~(Web版)  作者: 坂木持丸
第2章 第2の魔王

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25話 魔術士の拠点を襲撃してみた


 俺はラビリス救出のため、魔術士協会が拠点とする迷宮へと突入した。


「――“時間加速(ヘイスト)Ⅶ倍速(セブン・スピード)”」


 迷宮内の石壁の通路を、魔力放電の光だけ残して倍速で駆け抜ける。

 今の俺の速度には、罠すらも追いつけない。

 俺が通り過ぎたあとに、がばっと床に落とし穴があき、ひゅんっと矢が空を切る。

 巡回中の魔術士ともはち合わせするが――。


「……っ!? き、貴様、ど――」



「――“止まれ”」



 騒がれる前に停止させ、杖を破壊して先へ進む。

 過去に戻ったときのために、この迷宮のマップを頭に叩き込んでおいて正解だった。

 最短ルートで次層への階段へと差しかかる。


(……まずは1層攻略完了、と)


 迷宮に入って、まだ1分ちょっとだ。

 それほど難易度の高い迷宮じゃないのは助かった。


 1層あたりの広さもそれほどではないし、最深部も12層だ。

 おそらく、ラビリスがいるのもその12層だろう。

 このペースならば20分とかからずに、そこまで到達できそうだ。


(……魔物はもう復活してるのか)


 通路の先に魔物を見つけて、俺は眉をひそめる。

 迷宮に出てくる魔物は、迷宮内の隠された培養室で作られ、迷宮警備のために転移魔術によって定期的に補充されている。

 そのため、大群暴走が起きたあとなどは、しばらく魔物が出現しなくなるはずだが……。


 どうやら、魔術士たちは迷宮の培養室にも手を加えているようだ。

 そもそも、この迷宮で本来見られる魔物とは違う。


(……合成魔獣キマイラか)


 魔術によって人工的に作られた魔物だ。

 こんな低難度の迷宮には似つかわしくない魔力をまとっている。

 魔術士の指揮下で動いているのか、統率も取れていて隙がない。

 しかし――だから、なんだ。


「……邪魔だ」


 剣を抜き払い、すれ違いざまに魔物たちの急所を斬り裂いた。

 数多の魔物を屠ってきた我流の斬撃――。

 魔物たちは俺に気づくと同時に、血をまき散らしながら倒れていく。



「へ……?」「し……侵入者!?」「は、速い――!?」



 5層までもぐると、魔術士たちが増えてきた。

 この辺りの階層から本格的に根城にしているのだろう。



「――“止まれ”」



 彼らが呆けている間に、彼らの時間を停止させていく。

 しかし、討ち漏らしがいたのか。

 じりりりり……ッ! と警鐘が鳴り響き、迷宮内が赤く明滅し始めた。


「し、襲撃!?」「どうやってここに!?」「し、侵入者はどこだ!?」


 警報を聞きつけてか、下級魔術士たちがわらわらと現れるが。

 数が増えたところで――俺の速度には追いつけない。


「侵入者は……1人!?」「1人でここまで突破されたのか!?」「は、速すぎて見えな――」



「――“止まれ”」



 魔術士たちを停止して、そのまま通り過ぎる。

 この迷宮は、この時代では最先端のセキュリティで守られているのだろう。

 しかし、この時代のセキュリティが、100年後の時魔術士の襲撃を想定できているはずもない。


「な……!?」「速い――ッ!?」「と、止まらない――ッ!?」「なんだ、あの魔術はぁっ!?」「う、うわぁあああッ!?」


 俺を見た魔術士たちがパニックになり、総崩れになる。

 我先にと逃げだそうとする魔術士たち――。


 その眼前に、俺は一瞬で回り込んだ。

 魔術士たちが反射的にかまえようとした杖が、ぼろぼろと腐り落ちる。


「……ひっ!?」「く、来るなぁっ!」「な、なんなんだよ!? この化け――」



「――“止まれ”」



 そのくり返しで、俺はどんどんと深層へと進んでいく。

 まだ侵入してから10分ほどしか経っていないうえに、出会った魔術士たちを片っ端から停止させているのだ。

 ほとんど魔術士は、侵入者が1人であることすら把握できていないだろう。


 そんな状況で、まともに俺に対処できるはずもない。

 迷宮攻略は順調、だが……。


(……魔力が薄くなってきたな)


 迷宮というのは本来、深層にもぐればもぐるほど魔力が濃くなっていくものだが……。

 この迷宮はもぐればもぐるほど――魔力が薄くなっていく。

 やはり迷宮の魔力をしぼり取って、研究に使っているのだろう。


(……予想はしていたが、やっかいだな)


 俺はポケットから魔石を取り出し、口へと放り込んだ。


 そのまま、8層への階段を降りきった瞬間――。

 階段前の広間に布陣している魔術士の集団が目に入った。


 俺が階段を降りてくるのを待ち受けていたのだろう。

 すでに、巨大な儀式魔法陣が完成している。



「「「――“火炎弾Ⅸ(ナイン・フレイム)”!」」」



 大人数の魔力と魔術演算力によって発動する儀式魔術。

 本来ならば、災害指定の魔物や大軍相手に使われるような攻撃だ。

 爆炎が迷宮の壁や床を一瞬でえぐり飛ばし、俺の視界が炎一色に染まっていき――。


「やったか……!?」「は、はは……ッ! 見たか、9位階の魔術の威力を!」「直撃したぞ! 灰すら残ってないだろ!」


 勝ち誇ったように歓声を上げる魔術士たち。

 だがその歓声は、煙が晴れるとともに――ぴたりとやんだ。



「…………う、うそ……だろ」



 俺は爆心地で無傷でたたずんでいた。

 こんな単純な攻撃ならば、どれだけ威力が高かろうと関係ない。

 自分の時間を停止させれば、それだけで防ぐことができる。


「集え――」


 俺はすっと手のひらを前に出した。

 儀式魔術によって周囲に放出された魔力を、手のひらへと吸い寄せ――。

 ばちばちばち……と全身に膨大な魔力の雷をまとう。


「は、はは……」


 魔術士たちが1人また1人と、絶望したようにへたり込んでいく。


「…………ば、化け物」


 そんな誰かの呟き声を聞きながら――。



「――――“止まれ”」



 俺は彼らに向けて、そう唱えるのだった。


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