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前話までで何か所か人物名の混乱があり、訂正しています。主要人物ではないので話の流れに支障ありません。よろしくお願いします。
美しい景色の中で簡単な昼食を済ませました。
日が沈む前にはお屋敷に着くとのことでしたので、この昼食が旅を共にしてきた者たちと過ごす最後の食事です。
たった4日間とは言え、身分を気にしながらも双方それなりに打ち解けてきて楽しい道中でした。
「お嬢さま方、お屋敷が見えてきました。もう間もなく到着です。」
御者のパルトが御者台の小窓から我々にそう伝えてきました。
ずっと窓から外の変わりゆく景色を眺めていましたが、どうやらお屋敷は馬車の進む前方にあるようで全く気が付きませんでした。
御者台のある小窓の前にはパルトの背があって前方を見ることができません。
しばらくすると徐々に馬車が速度を落とし一旦止まります。
再び動き出し私が外を眺めていた窓に建物の石壁が見えてきました。
「あら…お屋敷と言うよりこれは…。」
はっきり言いますとこちらのお屋敷は…。
馬車内の我々は顔を見合わせて呟きました。
「城…ですわね。」
馬車が城の門をくぐり入り口の前に停車し御者がステップを取り付けます。
馬車の扉が開けられると、その数メートル前に私の父と同年代のロマンスグレーの素敵な男性が立っていました。
「旦那様、ナタリア・ヒルトップ伯爵令嬢を無事お連れ致しました。」
外に響く御者の声で彼がこの城の主だということが分かりました。
やはり私に愛情なんて抱いていない父の決めた結婚は「後妻」だったのですね。
「私は領主のサイラス。ナタリア嬢、迎えに行けず悪かったね。遠いところまで大変だっただろう。貴方も侍女たちも息災か?」
旦那様は馬車のステップから降りる私に手を差し出しエスコートしながらそう尋ねられました。
ばあやは家令か執事と思われる男性に丁寧に手を引かれながらゆっくりと馬車を降り、続いてミーナは侍女らしくさっと一人で降りてきました。
「ありがとうございます。道中の宿も車内も快適でございました。感謝いたします。」
旦那様に手を引かれながら城の中に入ると左右に並んだ使用人に迎えられました。
「堅苦しい挨拶などは無しにしよう。あなたの部屋に案内するから夕食まではゆっくりされたらいい。ソフィア!ナタリア嬢を部屋へと頼む。」
私たちはソフィアと呼ばれた恐らく、侍女や女中を纏めている女性の案内で品よく設えられた部屋へと案内されたのでした。
ソフィアはやはりこの城の女性使用人の長で「奥様付きの侍女」であると言っていました。
ではいずれ私の侍女となるのでしょうか。
う~ん、どうしましょう。
ミーナをソフィアの下に付けてもらって、今まで通り私の身の回りのことをしてもらいたい。
それが叶わないのならせめて目の届く範囲の仕事に配置して欲しいと思うのですが、旦那様にお願いしてみないといけませんね。
今日は旅の疲れもあるだろうからと部屋に夕食が運ばれて来ること、早めに休んで明日の朝食を一緒にしながら紹介や説明・案内などしたいということなど旦那様からの言葉が伝えられました。
親子ほど歳の離れた方ですが穏やかそうな人柄と、私の父と違ってすらっとした長身に引き締まった体形に若いころは美丈夫だったと思わせるお顔も、今のところ嫌悪に感じるところはございませんから後妻として嫁ぐも、そんなに悪くはないかな…と私は思うのでした。
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