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誤字報告ありがとうございます。自分では気づかないものですね。ありがたいです。
ひと月とはあっという間でした。
父は嫁ぐための支度などするつもりがないようで、あの日以来接触はありません。
私はばあやとミーナと共に自分たちの少ない持ち物をまとめあげました。
それと同時に今後使用し無くなるだろう、この離れの整理と片づけもしました。
改めて思ったのは母の遺したものの少なさでした。
伯爵夫人のドレスや宝飾品などはそのままミランダ様が売ったり使ったりしているのでしょう。
母が嫁ぐ際に持ってきた装飾品などは、ばあやが密かに保管してくれていました。
本来なら私が社交界へデビューする際に渡すはずだったと、嫁ぎ先に持っていく荷物の中へと丁寧に入れてくれました。
さて相変わらず私はどちらのどなた様のところへ嫁ぐのか分からないままです。
はっきりした日時も分からないでいると執事のジョナサンが「先方が3日後に到着されるそうです。」と伝えに来ました。
それからきっちり3日後に荷馬車と立派な馬車がヒルトップ伯爵邸の奥の奥に到着しました。
伯爵邸の使用人の手を借りて荷馬車に3人の荷物を積み込みました。
そして私たち3人は立派な馬車に乗り込みます。
「主人は屋敷を留守にしており、その代行で執事が屋敷を離れるわけにいかず迎えが私のような者1人で誠に申し訳ない。」
お迎えの御者が頭を下げますが、立派な馬車と誠実そうな御者さんだけで私は十分だと思っています。
「私はどこへ連れていかれるのか。」と悲観的になるのは精神衛生上よくありません。
御者には敢えて行き先を聞かず、楽しみに思うことで不安や心配を意図的に払うのでした。