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第38話 あなたを信じてる

※外面と内面でギャップが凄まじいですが、生暖かい目でご覧ください。


・2023/02/04

 戦闘シーン追加、会話内容変更


【side.瑠維】


 決まった……

 完璧に決まった……! 今の私カッコイイ……!


「フッ、我の放つ覇王の波動《ザ・オーバーロード》に声も出せんか」


「……そうね。言葉が出ないわ。いろんな意味で」


 う~、レイカちゃんだっけ? 何だかお母さんたちみたいなちょっぴり呆れられているような眼差しをしてるよぅ。

 この登場シーン気に入ってるんだけどなぁ……


 私の家族を人質にしようとした悪い奴らの仲間だけど、不幸が重なって騙されているから余り責めないでと友理に心配されている子なんだよね。全部が終わったら仲良くして欲しいって頼まれてるし、私のことをみんなが心配してくれたから用意できた舞台でもある。だったら、悩むよりも先に勝たなくちゃ!

 よ~し、がんばれ! 私ぃ!!


「フッ、いつになく魂《ソウル》が燃え上がるな」


「あら、だったら……」


 わ!? さっきまでの呆れていた目は何だったのかってぐらい、レイカちゃんったら冷たい目をしてる! おっとぉ、これはもしかしなくても!?


「私が冷やしてあげるわ……物理的にだけど」


 そうレイカちゃんが言った瞬間、周りの気温が下がっている!?

 あ! 足下が凍っている! 異能の攻撃だ!


「抱きしめてあげる――『スカジの抱擁』」



――ビキビキビキピキ!



 足下の氷がドンドン広がって、体積を増やしていって……あれは、氷で出来た大きな手? ――って、わー! 伸びて左右から襲ってきたー!


「とうっ!」


 後ろへ向かってバク転ジャンプ回避――からの着地成功! ここで余裕があれば決めポーズを忘れない。シュバッとポーシング!


「ほう! それがキサマの異能『氷結』か!」


 私のいた所を見れば女性的な、だけど大きさが3メートルはありそうな巨大な手がオブジェの上部分を覆っていた。



 『氷結』。

 “シンプル・ザ・ベスト”とも言うべき異能で、名の通り周囲を凍らせたり、生み出した氷を自在に操る異能だって友理が言ってた。

 使い手次第で応用力がグン!と上がる異能の例で、レイカちゃんはその辺りの才能がすごいって話してたなぁ。



 アレ、避けなかったら捕まって包まれて寒さで眠くなりそう……こう、かまくらみたいな変な安心感もあって。

 あ! なるほどそういう……!


「『スカジ』。北欧神話に登場する、雪と山を司る巨人の女神だったな。その名は“傷付けるもの”や“死”を意味している。そんな女神の抱擁とは、興味こそあれど捕まれば一巻の終わりを意味していると見た」


「ふぅん……意外と博識なのね」


「覚えやすい神々の名《ゴッズ・ネーム》は一通り頭にある」


 だって、その方がカッコイイから!


「『アイスバーン』」


「――っ!? 『焦土』!」


 間髪入れずレイカちゃんは公園の地面全てを凍らせてきた。

 凍るスピードが早かったせいでビックリしたけど、こっちの技も間に合った。私を中心に黒炎が地面を走り、向こうの技を押し返した。


 ――って、ああああっ!? 近くの遊具が燃えたぁ!!

 お、お小遣いで何とかなるかな……?


「そう。それがアナタの異能なのね。氷と炎。事前の調査で知ってはいたけど、普通に考えるなら相性が悪いみたい」


「くくく……我の方が相性悪ければ、さすがに友理もこんな作戦を立てんさ」


 友理によれば運を味方にしている・・・・・・・・・と言っていたから、他の戦場も相手との相性が悪いということはないはず。

 私の知る通り異能によるものなら、明日からの友理の身が心配だけど。


「じゃあ、こんなのはどう? 『アイシクル・ジャベリンⅡ』」


「そんなのありか!?」


 レイカちゃんが次に放った技は複数の氷槍……なんだけど、その氷槍の後ろ部分が高速回転して冷気を撒き散らしている。そう、まるでジェット噴射みたいに。まるで意志を持つかのようにまっすぐ飛ばず、攪乱するような軌道で飛んでいる。


「ファンネルじゃん! ガン〇ムのファンネルじゃん!」


「ガン……? 何よそれ?」


「ならば我も必殺技だ! 『追尾する猟犬ハウンド・ストーカー』!」


 私が考えた最高にカッコイイ技その1をとくとご覧あれ!


 私の異能『黒炎』。その特徴である“纏わり付く”という性質を利用して炎同士を絡め合い、形作る。

 そうしてできたのが、猟犬のような姿の黒炎。それをレイカちゃんの氷槍と同じ数だけ作り――突撃させる。


「行け」


 縦横無尽に飛ぶ氷槍に飛びかかる猟犬の姿をした黒炎。

 私の技から逃れようと動き回る氷槍だけど、伊達に『追尾する猟犬ハウンド・ストーカー』なんて必殺技名を付けていない。この技の本質は対象にどこまでも喰らい付いていくこと。そして、猟犬たちから漏れる黒炎にある。

 少しでも近づければ漏れた黒炎に触れて――


「燃え広がれ」


 氷なんて、あっという間に溶かしちゃうんだから。


「鬱陶しい!」


「それはこちらのセリフぞ!」


 攻防は続いた。

 レイカちゃんが多彩な氷の技を出し、私がそれを迎え撃つ。

 そんなやり取りを何度も何度も繰り返した。


 正直言って膠着状態に入っている。

 レイカちゃんは私の身に付けているロザリオの件もあって、下手に威力の高い攻撃ができない。かく言う私も、レイカちゃんを必要以上に傷付けたくないから直接『黒炎』を向けられない。


「ふぅ、ふぅ……日本人にしてはやるわね」


「はぁ、はぁ……常日頃から戦いを意識してきた結果さ」


 そう、妄想という名のイメージトレーニングで!!


「どう? 諦めてこのまま捕まってみない? 状況から考えるに、何らかの方法で私たちの接触を察知したみたいだけど、どんな作戦を立てても無駄よ。裏の人間は刃向かう者に容赦しない。この状況を作ったのがどんな異能でも、直に応援が来る。あなたが――」


「無駄だな」


「……どういう意味かしら?」


 何を言っているんだろレイカちゃんは? すごく簡単なことなのに……


「奴らは必ず・・我の仲間が、友人たちが倒す。なぜなら、友人たちは『任せろ』と言ったのだから。キサマらの組織も必ず・・滅ぶ。なぜなら、我の親友が『絶対に潰す』と豪語してみせたのだから。なら、我がキサマを倒せば全てハッピーエンドで終わる。それだけの話さ」


「そんな、夢物語なんて――」




「――できるよ。私は……友理を信じてるもん」




 だって友理は、その辺のことでウソは付かない。

 初めて会った日も「また明日!」って手を振って別れた。しばらくしてからも「1週間後のこの日に遊びに行こう」って指切りした。中学校に入る前の忙しい時期も「1段大人になってから、また会おう」って約束してくれた。そして、実行してくれた。

 たまに無茶して会いに来た日もあった。明らかに寝不足でフラついてるのに「大丈夫」だと、笑いながら家に来てお泊まり会をした。


 そんな友理がいつもの調子で「明日から生徒会の仕事一緒にがんばろうな」って言ったんだ。なら、私はその言葉を信じる。


「レイカ=氷道よ。貴様は何のために“今”を生きている? 組織とやらに忠義でもあるのか? 何かやりたいことでもあるのか? 我は、我を認めてくれた皆と共にありたい。青春を謳歌し、笑い合いたい。そのために全力を振り絞っている。ただただ……この幸せを願い続けている」


「――っ!」




 レイカちゃんが「黙れ」とばかりに睨み付ける。



 だけど不思議。どうしても私にはその目が、今にも泣きそうな迷子の小さな子の目にしか見えなかったの。



 本当は分かっているのに、怖くて前に進めない子の目に。




「我は友理ほど他人の心を知る術を持っていない。だが、そんな我にも分かるぞ。貴様は心のどこかで救いを求めている。自己嫌悪しながら、例えそれが破滅でも良いからと、そう願ってしまっている」


「分かったような口を利くな!!」


 レイカちゃんの周囲の氷が爆発的に広がっていく。一瞬で私の周囲を覆うように、持久戦なんか考えずすぐにケリを付けたいかのように、……幼い子が聞きたくないことに耳を塞ぐかのように。


「私にはもうこの生き方しか無いの! お母さんも、お父さんも、私のせいで……! 優しかった大人たちは私を押しつけ合って! 仲の良かった子は腫れ物に触るように接してきて! 他の人間も同情するような目で見てきて! だから、だから、だからぁあああっ!!」


 周囲の氷が尖っていく。まるで、何もかも拒絶したいみたいに。


(あぁ、友理の言った通りだなぁ)


 友理は、私がレイカちゃんと戦うことになった時に言った。



 ――戦いになったら彼女と話をしてみて。


 ――それで、瑠維が思ったことを正面から言ってあげて。



 そう、友理は私にお願いしてきた。

 ここぞという時に限って、私はギャルゲーの主人公並みに他人の心の変化に鋭いって、反応に困る言い回しで。


 私はレイカちゃんの過去に何があったのか、何も知らない。

 今のレイカちゃんを見て分かったのは、ずーっと長い間苦しんで、感情にフタをして、ここにきて私が爆発させちゃったんだろうなってことぐらい。友理はこうなることを望んでいたんだろうなー。


(もしかして私、初めて友理に頼られた?)


 なら、がんばらなくっちゃね。

 そう……私なりの格好良さで!!


「良かろう、来い。我が全て受け止めてやる」


 私は眼帯型のアーティファクトを外して、朝からずっと溜め続けていた異能の力を解放する。レイカちゃんの氷を溶かすための炎を。




「『ニブルヘイム』!!」




 周囲の氷が、冷気が、私を凍らせて黙らそうと押し寄せる。後先を考えていないからこその力の暴力だね。並みの攻撃じゃ押し通されちゃう。


 だけど今の私なら、並以上の攻撃ができる。余分に増えた分も含めて、本気以上の出力と覚悟をその攻撃に乗せて――放つ。




「『ゲヘナ』!!」




 私を中心に、制御しきれるか心配になる程の『黒炎』が燃え上がる。この世の一切合切を逃がさず燃やし尽くす地獄の炎が。



「うぁわあああああああああああああああああっ!!」



「せやぁあああああああああああああああああっ!!」



 お互いの全力が、ぶつかる。



 北欧神話の下層に存在するとされる氷の国を名に冠した『氷結』が。



 罪人に永遠の滅びを与えるとされる地獄の名を冠した『黒炎』が。



 そして――




[補足]

・本来、レイカ=氷道は根がとても優しい子なので、切っ掛けさえあればいつ感情の爆発が起きても不思議じゃない程に追い詰められていた。

・原作の瑠維は後半になって自分に自信が付いてくると元来の勘の良さ、他人を見る目が発揮される。

 そのせいで二次創作では、瑠維を主人公にガチ百合展開へ持ってこうとする作品がいくつかあった。黒羽瑠維役の声優は苦笑いした。




~おまけ1~


 眼帯型アーティファクト『蓄積するは我が黒炎』

 黒羽瑠維専用のアーティファクト。

 最大24時間分の『黒炎』の力をストックし、眼帯を外すことで解放することができる。ただし、解放してから一定時間が経つとストックしておいた力は自然消滅してしまう。ご利用は計画的に。

 命名は瑠維自身。

 明日奈が適当に付けようとしたら駄々をこねられた。




~おまけ2~


 お互いの全力が、ぶつかる。


 北欧神話の下層に存在するとされる氷の国を名に冠した『氷結』が。


 罪人に永遠の滅びを与えるとされる地獄の名を冠した『黒炎』が。


 そして――


作者( ・`ω・´)「続きはWebで!」



 「フザけてないでさっさと書け!」

友理(#゜言゜)=○)´3`∴ 作者

       「次回も明日! 2章のエピローグで!」



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― 新着の感想 ―
[一言] どっちが勝つかな
[一言] >「抱きしめてあげる――『スカジの抱擁』」 >――ビキビキビキピキ! スカジで、某ローグライクゲーム。 不思議なゲームの初代試練を思い出す自分。 ペケ○とかって仲間。 かなり足を引っ張…
[一言] これはちゃんと神話に詳しいにわかでない正統派の中二病! ・・・どうしてこうなった
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