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第35話 勘で戦う奴は大体理不尽

 2023/01/08

・戦闘シーンを大幅修正。

 2023/05/03

・サブタイ変更



【side.忍】


『こちら友理。作戦第一段階成功』


『明日奈よ。こっちも成功したわ』


『くっくっく、我の方も舞台は整ったぞ』


「こちらも成功です。これより戦闘に入ります」


 友理さんの立てた作戦、その第一段階が成功したことを明日奈さんが創ってくれたイヤリング型の通信アーティファクトで確認をしました。

 次に連絡するのは一定時間後ですね。戦闘の最中に連絡すると気が散るでしょうし、緊急時以外は通信を控えています。


 ……それにしても便利ですねコレ。

 ピアスでもないのに滅多な事じゃ自然に外れませんし、自分の意思で操作をしていますから隙を見せることもない。しかも、向こうからの声は他人に聞こえない仕様。通信距離が限定されていると明日奈さんは言っていましたが、一般的な市の大きさまで通信可能圏内なら十分ですよ。


 こんな代物をがんばればいくつでも創れるという時点で上の人間はこぞって欲しがりますし、友理さんが護ろうとするのも納得です。

 数年前、公安所属の何名かに脅しを掛けて正解だったと思います。意地でも他国に知られないよう情報規制をしているみたいですし。


「バカな。ワタクシめの異能は黒羽瑠維1人を・・・・・・・対象に指定してたはず。なぜ、複数人が……?」


「アナタの『世界でアローンひとり・ジ・ぼっちワールド』には欠点がありますので、そこを付かせてもらいました」


 私たちの相手、名をキリルでしたね。彼の言う通り、事前に友理さんから貰った情報によれば『世界でアローンひとり・ジ・ぼっちワールド』という異能は対象を指定することが絶対条件です。対象を複数指定することはできませんし、複数人と一緒にいる状態だと異能が掛かりにくくなるそうです。

 今回の作戦では友理さんが掛けた幻術で7人全員を瑠維さんに見せ、尚且つ1人だけだと誤認識させる必要がありました。ここで重要なのは『世界でアローンひとり・ジ・ぼっちワールド』が上手く掛からなかった場合、相手が不審に思ってしまうことです。

 なので、ここでも明日奈さんに創ってもらったアーティファクトが活躍します。



 アーティファクト『群であり個であるレギオン』。

 小さな虫が集まって大きな蟲になったデザインのアクセサリー。

 それを正面切って戦うことになる人、全員に配られました。



 その力は複数人を個人と認識・・・・・・・・・させる能力。これによって私たち7人――と、ついでにアルカさんの腕に抱かれたマルコ――は『世界でアローンひとり・ジ・ぼっちワールド』の対象である1人と認識されました。

 そこに友理さんが幻術を被せれば完璧です。


 ……1番念入りに創ってもらったモノですが、能力からして対キリル専用のアーティファクトとなっているんですよね。

 明日奈さんには悪いですが、今回以外活用法が思いつきません。

 汗と涙の結晶なのに――不憫です。


 さて、思考を切り替えて私も仕事を再開しましょう!


「――っ!? 欠点? それ、は……」


「これ以上は敵と会話しません。作戦第二段階、開始します」


「コイツらみんな倒せばいいんだよね? がんばるぞー!」


「がんばれー」


「ワッオーン!」


 凛子さんが拳を打ち合わせ、闘気を身に纏います。

 ……アルカとマルコは平常運転ですね。

 こっちは気にしなくても良いでしょう。アルカに万一があるとは思えませんし、マルコに至ってはその強さを信用しています。


 だから、私のやるべきことは1つだけ。


「友理さんの敵を……排除します! 『シャドウ・ドミネーション』」


 異能を発動。周囲に存在する影を具現化させ、奴らに向かわせる。


「!? 散開!」


 部下である男たちがキリルの叫びに即座に反応し、鞭のように伸びた影を回避します。咄嗟の判断はさすがプロと言ったところです。


 ですが私も……友理さんのために磨いてきた実力があります!


「バラけて! 『影鞭』!」


 男たちが避けた影の鞭――ソレを細くしてさらに伸ばします。


「な、ぐわっ!」


「影が……締め上げて……!?」


「この……! 離せ、離せよっ!」


 『影縛りの術』。具現化した影で対象を拘束する技です。避けられなかった男たちを縛る。見た目以上に頑丈なので逃げられやしませんよ?

 これで3人減りましたね。


「死ねぇガキ!!」


 部下の男がナイフを投げつけてきました。私に向かって正確に飛んでくるとは、良い腕をしていますね。でも……遅い。


「……『影転移』」


「え? はぁ!? 消え――」


 私は自分の影の中に潜り、ナイフを回避する。

 これは友理さんの通う学園へ侵入するため、最も努力の末に磨き上げ、扱いに長けた技と言えます。その効果は自分の影の中に潜り、また近くにある別の影に瞬間移動できるというもの。

 だからほら? 街灯に照らされた男の影が死角となる位置にくるよう戦いの中で調整していれば――


「こうやって奇襲もできます」


「ぎゃっっ!?」


 ――男の影に転移して、背後を取ることも可能。

 あとは友理さん特製の麻痺毒をたっぷり塗り込んだクナイを肩に刺せば、あら不思議。男は地面に倒れビクンッ! ビクンッ! と体を痙攣させて……いや、これ、大丈夫ですよね? 白目剥いてますけど、合法的な薬剤で合ってますよね!?


 お仲間さんも倒れた男の有様を見て、こたらを非難します。


「くっ、神経毒か! オレらよりあくどいマネしやがって!」


 ごもっとも!

 マフィアの方に正論を言われるのは厳しいです。


「もうガキだからって容赦しな――」


「ハイヤーーー!!」


「ごばっ!?」


 義憤に燃え(?)こちらへ攻撃しようとした男は、しかし突然飛び込んで来た凛子さんに側頭部を蹴られ意識を失いました。

 白目になって舌をだらんとさせて……これ生きてますよね?

 足下で痙攣している男といい、絵面が酷いです。


「弱い! 弱いよー! 外国の悪い人たちだって聞いていたのに、とんだ期待外れ! 友理との修行の方がずっと手応えあるよ!!」


(荒ぶってますねー)


 見れば、凛子さんが相手したと思われる男たち計6名が背後で倒れていました。……私が4人を無効化している間に苦もなく6人――あ、さっきのも含めて7人か――を倒してしまうなんて友理さん、どれだけ鍛えさせているんですか?


「何をしているのです!? 囲んで潰しなさい!」


「「「は!」」」


 キリルの命令により、3人の男が凛子さんを囲います。

 それぞれ包丁、メリケンサック、特殊警棒を構え、誰かがやられることを前提に突貫するようでした。急いで影での拘束を試みます――が。


「ハアアアアアアアアァァ……」


 凛子さんの纏う闘気が拳に集まり、



「『無双連撃気功拳』!」



 次の瞬間には、突貫をしだした男たちが吹っ飛んでいました。


「え、えー……」


 えと、何ですか今の技?

 凛子さんの姿がブレたかと思ったら囲っていた3人とも綺麗に後ろへ飛ばされ、ボロボロな状態で意識を手放しているという……

 男たちの状態を観察するに1人最低3発は拳を叩き込まれたのでしょうが、全く見えませんでした。凛子さん強すぎませんか?


「動くな! コイツがどうなってもいいのか!?」


 チラリと声のする方へ目を向ければ、最後に残った部下の男がアルカさんの首元にナイフを押しつけていました。

 ……人質のつもりなのでしょうが、全く意味ないんですよね。


「危ないから、どいて」



 そう言ってアルカさんは無表情のまま数歩ほど前に出ます。

 首元に押しつけられていたナイフを通り抜けて・・・・・・・・・



 『存在曖昧』という力だそうです。

 異能ではなく、アルカさんが元々持っている力の1つ。“そこにいるのに、そこにはいない”そんな矛盾した状態を生み出すという、身も蓋も無い言い方をすれば都合の良い時だけあらゆる事象が体をすり抜ける力です。

 だから誰も捕らえることは出来ないし、傷付けることもできない。



 で、アルカさんに手を出せば最後の仲間が動きます。



「へ? あれ、どうs――ぎぎゃぁっっ!?」


 突如現れた黒い、バス程の大きさのある物体。

 それが男を地面に押しつぶし、骨を折り、その爪を体に食い込ませます。



「グルルゥ……」



 そう、今まで静観していたマルコが真の姿を見せたのです。


「な、何なのですか、この化け物は!」


「ガルァアアアアアアアアアアアアアッッ!!」


 『第35柱マルコシアス』。

 巨大な狼の体にグリフォンの翼と蛇の尻尾を合わせ持った、正真正銘の大悪魔。戦闘の際にしか真の姿になれませんが……その強さは圧倒的です。

 正直言って、本気のマルコだけで勝負が着いてもおかしくありません。


 いえ、友理さんが私と凛子さんに実戦経験を積ませつつ、保険でマルコと一緒に行動させたのは分かってるのですが、アルカさんを狙われた時点でマルコが怒るの知っていましたよね? 滅多なことで真の姿にならないとはいえ、過剰戦力としか言い様が……


 まあ、そんなこんなで残りはキリルのみ。

 勝負は大詰めです。


「くっ、こうなったらワタクシめだけでも……!」


 マフィア幹部キリルは、全滅した部下たちを見てすぐに逃げる選択をしました。

 しかし、ここで逃がすわけがありません。すぐさま『影鞭』をキリルへ向かって伸ばしますが、ここにきて予想外のことに。


「『世界でアローンひとり・ジ・ぼっちワールド』、対象は――わたくしめ・・・・・!」


「――っ!? これは!」


 キリルに伸ばした『影鞭』が全て外れました。

 いえ、正確には私が奴を捕捉出来なくなっている……!?


(しまった! 例の異能を自分自身に・・・・・掛けた!?)


 何とか集中してキリルに意識を向けようとしますが、向けた瞬間に意識が外れてしまい追うことも叶いません。

 どうすれば……!


「ははは! 逃げさえすれば、生きてさえいれば、わたくしめの勝ちです! 覚えておきなさい少女たち! この借りは必ず――」


「多分そこ!!」


「――かえ゛え゛え゛ぇっっほ゛っ!?」


「ええええええええええっ???」


 ありのまま起こったことを言います。

 異能のせいで捕捉できずにいたキリルが、凛子さんに腹パンを喰らいました。転げ回り、目を白黒させています。


「ゴハ。な、なぜ? どうやって捕捉を……!?」


「勘!!」


 理不尽ですね。

 これでは意識を逸らさせようが意味ありません。だって勘で殴るんですから。


「そんなバカな話が、もう一度異能を……!」




「対象、キリルの『Heartギア』。その異能を、停止」




「発動――できない! はぁああん!?」


 再び『世界でアローンひとり・ジ・ぼっちワールド』を発動しようとし、しかし発動ができなくなったことで動揺するキリル。

 そこを見逃す訳がありません。


「『影縛り』」


「しまっ!? むぐぅぅぅ!」


 何をしても逃げられないよう全身を影で縛り上げます。

 あとは隙間から麻痺毒を塗ったクナイで刺せば終わり。ビクビク痙攣しだしたキリルと同じ仕事を最初に捕まえた3人にも施します。

 ……やっぱり酷い光景ですね。友理さんに改良をお願いしましょう。


 これで、私たちが担当したマフィアは全員無力化しました。


「ふぅ、助かりましたアルカさん」


「どういたしまして」


 アルカさんの切り札。知ってはいましたが見るのは初めてです。


 『異能停止』。

 対象の『Heartギア』に干渉し、その異能を無効にしてしまえるすべ。異能を扱う者にとっての天敵。それがアルカさんです。

 ある程度時間が必要とはいえ、強力無比と言わざるを得ません。


(ホント、何者なんでしょうアルカさんは?)


 友理さんは正体を知っているみたいでしたが……さてはて、私にも教えてもらえる日は来るのでしょうか?


「ひとまず、全員を本格的に拘束しましょう」


「お縄だお縄だー!」


 影から頑丈な拘束具を取り出し、凛子さんと一緒にマフィアを拘束しながら他の場所で戦っている仲間の勝利を願います。


(皆さん、どうかご無事で)



~おまけ~


明日奈(;´・ω・)「麻痺毒って、どこで手に入れたのアンタ?」


友理(´・ω・)「異能を使った手作り品さ! 友理印の麻痺毒、ってね!」


明日奈(#゜Д゜)「完全に非合法じゃないのよ!!」


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― 新着の感想 ―
[一言] >それを聞いた香坂拓也は、真っ先にお宝を隠しました 友理Σ(゜Д゜)「はっ! まさか妹もn━━」 明日奈 (o゜∀゜)=○)´3`)∴ 友理 明日奈(# ゜Д゜)「気持ちが悪くなるよう…
[一言] 一対一なら無敵やん
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