第25話 歴史の授業
2022/12/04
授業の内容を一部改変。
問.別世界の地球に転生した学生が苦労する科目は?
答.歴史の授業です。
「あ゛ぁ~~~、歴史とか高校生になってもあるのか~。嫌だな~ばっくれたいな~お姉ちゃんとイチャイチャしたいな~~~」
「アタシも同じ気持ちだけど、素直に諦めなさいよ」
愉快でワイワイした学生生活を送っているとはいえ、学生の本分は勉強だ。それは『Heartギア』を使った異能の授業をするこの学園でも変わらない。
むしろ普通の学生が習う勉強その他にプラスして、異能に関するアレコレを学ぶことになるから、3年間詰め込み教育することになるのだ。
代わりとばかりに学園の施設は充実しているけど……そんなものはどうでもいいから、この世から歴史の授業を消してくれと願いたいボク。
「これより新入生最初の歴史を始める。特殊総合学園系列では、他の高校と授業で習う教科書や範囲が違うので注意するよう。……と言っても、昨日までの授業で他の先生も言ってることだけどな! まあ、お決まりってやつだ。今日はサラッと読むだけだが、ちゃんと聞いておくんだぞー。それじゃあ最初のペ-ジ開こうか」
50代と思われる髪が白くなってきた感じの男先生が、マジメな態度からフランクな雰囲気に変わって歴史の授業が始まる。
先生が言ったように今日は流し読みのようだが、ちゃんと授業を受けないと突然質問されてアタフタすることとなる。
そう、例えば――
「そうだな……今の部分、中学の最後の方で習う内容だが大まかな説明はできるかな――黒羽瑠維さん」
「むぅ、これの英単語は語呂が悪いな……む? 何かな先生?」
「間違えてもいいから、今、私が話した内容について言ってみて」
「フ、我に地球の歴史《アース・ヒストリー》など不要! 我が覇道に過去は存在せず、未来のみがあ――」
「黒羽瑠維さん。単位とその眼帯を没収されたくなかったら、聞く姿勢だけでも取れ。先生、2度目は無いぞ?」
「はい。ごめんなさい。ちゃんと授業受けます」
――こんな風に。
(どうせ中二セリフの研究でもしてたんだろうなー)
ニヒルな表情から一瞬で真顔になった瑠維にクラスメイトは「(自称)地獄の猟犬、よわっ!?」と驚いたり呆れたりしている。
眼帯を外して教科書を開き、如何にも「自分、マジメに授業受けています先生!」アピールをしている瑠維にさらに呆れかえっている!
(そんなんなら、最初から普通に授業を受けてればいいのに……)
歴史嫌いのボクや明日奈でも質問されたら最低限答えられるようしているのに、なぜ他のことができるのか?
こういう所も原作の黒羽瑠維と違う点なんだよな。
ボクの予想じゃ、あと数日するかしないかで奴らが瑠維に接触するだろうし、計画の見直しもしておくか。
ボクが今後について考えている間も、歴史の授業は進む。
そう、ボクと明日奈が頭を抱えたくなる授業が!
「常識問題だが、ここで有名な〇〇ショックが起きる。この危機を脱するため力を尽くしたのが当時の〇〇総理だった」
それが当然だとばかりに電子黒板へ重要単語を書いていく先生。
授業を受けているクラスメイトも、ノートを取ったりせずに軽く聞き流している。あの凛子や瑠維ですらそうだ。
それぐらい学生にとっては復習でしかない“常識”なのだ。
――ボクと明日奈を除いてな!
「〇〇ショックなんて名前だっけ? 確か……あー、あれは前世のか」
「〇〇総理って誰よ? アタシの知ってる総理は何もしてないっての……」
ボクと明日奈だけは、ノートにぶつくさ言いながらメモを取っていた。
そう、これだ。
これが、歴史の授業をボクと明日奈が苦手……というか嫌いな理由。
5歳の時に『Heartギア』について調べた際に知ったが、この世界は同じ地球でも、前世の頃にいた地球とは歴史が違う。
歴史が違えば、そこで活躍する人物も違ってくる。
それは仕方ないと諦めていた。歴史の授業とか受ける時に苦労しそうだなーと、ボクと明日奈2人揃って歴史は頑張ろうと覚悟していたんだ。
しかし、歴史はボクらの予想外の攻め方をした。
(完全に違う名前や名称だったらいいのに、何で中途半端に似ているのが登場すんだよ! 何で時々、同じ名前で登場する奴がいるんだよ!)
全てが別物ならどれだけ良かったか……!
パチモンと本物、知ってる歴史と知らない歴史、それらがごちゃ混ぜなせいで頭の中がプチパニックを起こす。
結果、ボクたち転生者は歴史のテストでいつも赤点ギリギリな状態だ。
前世で聞いた名前や名称を答案用紙に書いてしまった回数は数知れず。
(歴史は歴史でも、近代史の方なら『Heartギア』に関連したことも多くて覚えやすいのに……)
授業では丁度、そのところに差し掛かっていた。
「――お互いの理解の不一致から始まった一部の国同士での第3次世界大戦も終わり、世界はようやく平和になった訳だが、ここでテストにも必ずと言っていいほど出る、ある期間になった。“高度経済成長期”と“停滞期”と呼ばれるものだ」
“停滞期”。
時代的な順番でいえば、“高度経済成長期”のあとに起こったとされる期間。『Heartギア』が世に出る切っ掛けになったとされる時期。
戦争が長引いたことが原因とされているが、詳しいことは解明されていない。心理学者、歴史学者の間でも意見が割れているらしい。
「“高度経済成長期”が終わり、人々の暮らしが豊かになったことで世界は大きな1歩を踏み出したが、事は各国政府の狙いとは異なる方向へ進んだ。当時の人は“今のままの状態がずっと続いて欲しい”と皆が思ってしまった。“停滞期”では技術や生活の進歩より、今の平和な暮らしをどれだけ長く維持するかに人々の関心があった」
“集団心理”という言葉がある。
簡単に言えば大勢の意見や雰囲気に少数が流れやすい状態な訳だが、長引いた戦争を経験した大勢の人が時代の変化によって「また戦争が起こったりしないか?」と強く不安になり、その考えが若い世代にも伝達したことで大きな変化を嫌い、現状の維持を求め続けた。
それが人類の歩みが良くも悪くも止まってしまった“停滞期”の真相ではないかと、有力説として今も議論されている。
ようは「今のままでも苦労なんて無いし、こんままでよくね?」って考えが大多数を占めちゃったわけだな。
戦争がボクのいた地球よりも僅かながらでも多く、長引いたなら……それだけ若い世代が犠牲となり、残された者が悲しみに暮れたということでもある。
技術の進歩はイコールで兵器技術の進化にも繋がるだろうし、少しでも兵器を連想させるような技術の宣伝とか見聞きしたなら……あり得ない話ではないかも。自分たちが体験した戦争よりもさらに悲惨になる戦争に子や孫が巻き込まれるかもしれない。
何かを進めるということは、それだけ何らかの衝突がどこかで起こる可能性が高くなることを示しているから。「オマエの国が〇〇を発明したから、我が国で失業者が出たんだぞ!」って、そんな具合に争いの種になるかもって……
「すぐに終わるだろうと各国政府の誰しも思った“停滞期”は何年も続き、本格的に危機感を覚えた者たちによって打開策を考えることになった。様々な方向性で問題の解決に当たったわけだが、その中で秘密裏に世界中のトップ科学者たちが集められ計画された『人々の関心を一気に受けるようなオーバーテクノロジーを披露する』作戦が成功することとなる。そう……」
先生は一拍を置いて――
「『Heartギア』だ」
――クラス全体に聞こえるよう、しっかりした口調で言う。
同時、クラスのほぼ全員が自身の『Heartギア』を見る。
ボクも、自分の『Heartギア』に手を添えた。
「『Heartギア』の誕生については謎が多いが、偶然がいくつも重なった奇跡によって出来上がったとされている。適性が必要で、子供が試験対象かつ結果が出るまで数年を要するということから、完成から発表までに時間が掛かり、それだけ“停滞期”が長引いたわけだが……『Heartギア』は、それによって成される異能は、人々の心を掴んだ。人類の進化がようやく再開した」
そこからの話は、ボクが5歳の時に調べたことと同じだった
人々の心を掴んだのと同時に各所で混乱も起きたけど、各国政府の対応が早かったこと、適切だったことから最小限に抑えられ、デモンストレーションとして行われた異能の披露・それらがもたらす利便性の説明が各地で行われた。
そこからさらに紆余曲折があり……異能を扱うための特殊総合学園設立計画の始まり、『Heartギア』関連の法律の可決と同時に人々に『Heartギア』が行き渡るようになった。
それが、約100年――1世紀も昔の話だ。
「『Heartギア』に関係したことが一段落したことで、『Heartギア』作成に関わった技術を小出しに発表していった。“停滞期”の時の反省から兵器利用は基本禁止として、あくまで防衛のための手段として広めたわけだ。先日の模擬戦で使われた『プロテクトフィールド』がそうだな」
『兵器利用基本禁止法』だっけ? 数少ない世界共通の法律。
これが結構厳しいらしく、50年ぐらい前に兵器利用して隣国に積年の恨みを晴らしてやるぜ!と粋がってた国が1つ地図から消えた。バレてすぐ、その国以外の国全部が敵に回って。瞬殺だったらしいな。小さい国だったから尚更。
有罪受けた連中は死刑か終身刑がほとんどだってさ。おっかな。
そんな法律もあるからか、各国は厳しく軍事関係を監視し合っている状態だ。だからか前世の地球とは違い、人種差別や宗教差別による争いこそあれど、紛争がない。というか、起こりそうになったら大国がいっぺんに押し寄せてきて「「「ちょっとOHANASIしようぜ?」」」となるとか。おっかな。
今はかなり『Heartギア』関連は落ち着いたけど、不正に『Heartギア』を入手する狡猾な犯罪組織も出てきたから、ここ数年は警察組織と連携しての取り調べや検挙も多く、新しい法律を作ろうという動きもあるそう。
最後に先生は言う。
数年前、日本で起きた『Heartギア』所有者によるものだとされる事件では、非合法組織の実験体にされていた子供たちが助け出されたが、施設がまるで八つ当たりのように破壊され尽くされたことで、逆に困ってしまう人も出たらしい。犯罪組織が利用していると知らずに貸し出し、土地が荒れすぎて買い手が付かなくなった土地の所有者とか、土地の所有者とか、土地の所有者とか……
……はぁ、困った奴もいたもんだな~(すっとぼけ)。
~おまけ~
明日奈(¬_¬)「(今の先生の話、どっかで……?)」
友理(;゜з゜) ~♪「ピュ~ピュピュ~♪」




