SS コスプレパーティー
今回、デフォキャラが多数登場です。
ボクは前世の記憶が戻ってからの約9年間で、それぞれのヒロインの子たちと様々な事をしてきた。
正月には餅つきや羽根つきをした。
クリスマスには大きなケーキを食べてプレゼント交換をした。
春夏秋冬の季節イベントもこなした。
我ながら人生を思いっきり楽しんでいると言えるだろう。
だが、1つだけやり残したことがある。
そのために、今日という日のために準備を進めてきた!
なので……!!
「これより、コスプレパーティーを開こうと思います!!」
「おー」
「ワッオーーーン!」
「だから! 何でアンタは、そう脈絡がないのよっ!!」
ボクの宣言と同時にアルカが無表情のまま手をパチパチ叩き、マルコが前足と口を器用に使ってクラッカーを鳴らし、明日奈のツッコミが炸裂する。
予想通りの布陣だ。
明日奈なら必ずキレのいいツッコミをしてくれると信じていた。
時刻は夜10時。
場所はお風呂上がりのみんなが集まる広いリビング。
中学校卒業を間近に控え原作開始が近づいてきたので、ここらで1発ボクのやる気を奮い立たせるイベントをしたいとお姉ちゃん、忍、アルカも含めた幼なじみーズなヒロインたちと思いっきりコスプレパーティーをするため、今回は柚木家のお泊まり会でサプライズイベントを行うことにした。
サプライズって人によっては嫌がられるけど、この場にいるメンバーはみんなノリが良いから問題ない。
「ふふ、ユウちゃん今日のために張り切っていたもんね」
「テレビで見た仮装大賞のようなものと考えればいいのでしょうか?」
「コスプレかー。興味はあったんだよねー」
「私もよ。気になるのは衣装の種類ぐらいかしら?」
お姉ちゃんはボクがどれだけ今日を楽しみにしていたか知っているし、忍はピンと来ない様子だけど嫌がってはいない。凛子と小夜に至ってはむしろ興味があるらしい。大丈夫、金に任せて質の良いモノを各種取り揃えている。
と、いうわけで……
「1番手は明日奈さん! キミに決めた!!」
「アタシ!?」
まさか、最初に自分が指名されるとは露程も思ってみなかったんだろう。
だが残念。ボクがその幻想を壊してあげよう。
「いやいやいやいや! 何でアタシなの? こういうのは主催者が……」
「さっきした1人クジ引きで、“明日奈”って書かれた紙が当たったんだよ」
「せめて本人に引かせなさいよ!」
いいじゃん。時間も押していることだし。
ちゃんとボクの名前が書かれた紙だって入れてあったんだぞ?
「最初に明日奈のコスプレが見たいって人は挙手!」
「「「はーーーい!!」」」「……はい」「はーい」「アンッ!」
「み、味方が誰もいないですって!?」
お姉ちゃん、凛子、小夜は元気よく手を上げているし、忍、アルカですら控えめに手を上げていた。ついでにマルコも片足を上げてる。
「これが孤立無援ってやつか……実際に見ると悲しい気持ちになるな」
「やかましい」
恨みの籠もった目で睨んでくる明日奈。
「ま、ここは大人しく諦めてみんなで楽しもう。そこに即席で作ったステージがあるだろ? 着替えたら、そこに立ってお披露目ってことで。衣装は隣の部屋にたくさん置いてあるから、直感でコスプレるといいよ」
「コスプレるって……」
ブツブツ文句を言いながらも隣の部屋に向かった明日奈。
壁に耳を当てたら「う~ん……どれがいいかしら? 変なのばっかねぇ」と、意外にも真剣に悩んでいるようだった。
で、数分後。
「どう? ちゃんと着こなしてやったわよ」
即席ステージには浴衣姿の明日奈が登場した。
くるりと回って“似合ってるでしょアピール”をしている。
実際似合っている。お姉ちゃんたちも「カワイイよ、明日奈ちゃん!」「うちわ持ったらもっと様になるかしら?」などと反応がいい。
だが、だが違うんだよ明日奈……!
「……明日奈」
「な、何? まだ文句でもあるの?」
「文句なんかない! でも、今回のこれは“コスプレパーティー”なんだ。明日奈の浴衣姿はもう何度も見ているし、似合っているのなんて分かりきってるんだ! ボクが夏祭りの度に心の中でどれだけ褒めていると思ってる!? しかし! コスプレとは本来、普段だったらまず着ないような衣装を身につけるから面白味があるんだ! もっと攻めた格好をしようって!!」
「褒めるか責めるか、どっちかにしなさいよ! 反応に困るのよ!」
照れるべきか怒るべきか判断に迷う微妙な表情で、明日奈は「だったら、どうすればよかったのよ!?」と言うが……
「隣の部屋に入ってすぐ“ニャンコセット”が飾ってあっただろうが! これみよがしにさぁあ!?」
「これみよがしにあったから、スルーしたのよボケぇ!」
18禁ゲーム『ヴァルダン』の“明日奈ルート”にあった猫耳&猫尻尾を装備した明日奈による、主人公籠絡イベントが懐かしいから準備したんだっての。
転生者である今の明日奈じゃまずやらないし、いい機会だと思ったんだ。
ちなみに、あざとい明日奈(原作)の策略によって主人公はすでに1人の少女として見ていたことも相まって、狼になって襲ったんだよなー……
で、当然そこからはモザイク必須の展開だよ。
おのれ主人公め……!!
「え~っと、ユウちゃん? 大丈夫?」
「ユユっち、さっきから百面相してるよ?」
くっ! 落ち着けボク、coolになれ!
「明日奈! コスプレとは何たるかを見せてやる!」
そう言い、急いで隣の衣装部屋に向かう。
こうなったらボクがコスプレして、見本になるしかない!
~数分後~
「わっはっはっはー! 魔王友理、参上!!」
どうだ! この渾身の魔王コスは!
跪け愚民共!ってね。
「きゃあああああああああああ♡ ユウちゃんカッコイイぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい♡」
「アアアンッ!」
いやーはっはっは。異能関係からもこれがボクに相応しいと思ったからね。
それで、お姉ちゃん。何で目がハートなの? 息が荒いの? 「男装のユウちゃんにお姫様抱っこも……」って何を想像してるのさ?
後マルコ、「主に相応しい格好だ!」って、それノリじゃなく本気で言ってるよな? 悪魔的にこの格好ってアリの部類なの?
「……何でこんなに似合うのかしら? 服に着せられていないわ」
後ろで明日奈が首を傾げて不思議がってる。
おかしいよねー。ボク、この衣装は今日も含めて2回しか着ていないのに。
と、ここで――
「それじゃあ、次は私がしてみるわ」
まさかの小夜が立候補!
「小夜!? いや、でも、変なのばっかよ?」
「だからこそ、おもしろいんじゃないの♪」
「次! その次は私もやりたい!」
「ふふふ、凛子は何が似合うかしら?」
そのまま鼻歌交じりに出て行く小夜。
何と言うか、原作の柊小夜よりもノリがいいよなー。
ボクと明日奈が関わったことで“楽しさ”を小さい頃から知っていた影響かもしれない。あと意外にも凛子と仲がいいんだよなー。
~数分後~
「お客様いらっしゃいませ~ピョン♪」
「「ブフッ!?」」
ボクと明日奈は同時に吹き出した。
だって、だってあの小夜が、バニーで登場だぞ!
「これだよ……こういうのが見たかったんだ! ちょっとお堅いイメージがある小夜がノリノリでバニーコス! あぁ、歓喜の涙が……」
「ちょっとアンタ黙れ。涙拭きなさい気持ち悪い」
ゲームでも見れなかった姿だぞ? 感動しない訳がないだろう!!
「――って、アレ? 凛子は?」
「凛子さんなら早速コスプレをしに行きました」
忍が「小夜さんのバニーを見てすぐに……」と言った瞬間、
――バーーーンッ!!
リビングのドアが勢いよく開き、
「どうどう? 似合ってるかな!」
ワンコな凛子がいた。
メッチャ似合ってる。今の凛子はジャージ姿でツインテールの髪を下ろしているから、雰囲気も違うんだけど、犬耳&犬尻尾に加えて律儀に首輪まで付けている。頬に描かれた線は猫ヒゲを描くために置いていたペンによるものだろう。
「ワン! わふぅ……」
「そうかそうか! 似合ってるか! でも似合いすぎてこのまま友理のペットになっちまえば、っていうのは酷くないマルコ?」
「アウー」
「友理は友達だってば全くもー!」
……昔から凛子とマルコは相性よさげだったけど、最近はついに言葉が通じ合い始めてた。いや、ホント何で分かるのさ?
「……世界七不思議?」
「その不思議に、確実に入っている存在が何を言うか」
ボクの表情から言いたいことを察したのかアルカが答えてきたけど、地球を飛び越えた宇宙な不思議の塊が何を言うんじゃって感じだよ。
さて、場も暖まってきたことだし……
「忍よ……」
「? 何です友理さん?」
「次はキミだ! お姉ちゃん!」
「は~い。忍ちゃんは私と一緒に着替えましょうね~」
「秋穂さん!? これはどういう――」
「忍はあんまりオシャレをしないからなー。せっかくなので忍へのプレゼントとして私服にも使える服を用意してみました」
忍は数年前まで非合法組織の実験施設にいたためか、年相応のオシャレに対して興味が薄い。ボクからのお使い中は忍者の格好だし、普段も地味な服装ばかりしている。そんなの、勿体ないじゃないか!
なので、お姉ちゃんと少し前に忍へのプレゼントとして一緒に服を買いに行ったんだ。姉妹デートも兼ねたから楽しかったよ。お姉ちゃんも「ユウちゃんとのデート、最高の1日だった~」って言うぐらいだからね。
そんなこんなで、お姉ちゃんにドナドナされていく忍。
抵抗したのも一瞬。最後は諦めた表情になってた。
「……忍ちゃんに子牛の幻影が見えたわ」
「あら明日奈も? 奇遇ね、私もよ」
「ドナドナ~ってやつだね!」
「……ドナドナ? 何それ?」
「アルカは知らないのか。ドナドナってのは――」
「わわわわわんわんわーわわん、わわわわんわんわーん♪」
~数分後~
「うぅ、は、恥ずかしいです」
オシャレな格好をした忍が出てきた。
「「て、天使だ……!」」
ボクと明日奈のセリフが見事にハモる。
それ程までに、今の忍は可愛らしかった。
特に普段しない格好だからか、モジモジと恥ずかしがっているのが庇護欲を掻き立たせる。お小遣いとかあげたい。
「友理、アンタ良くやったわ。グッジョブよ」
「分かってくれたか明日奈」
ボクらの心は1つ(忍ちゃんマジ愛らしい)になった。
堅く、それぞれの想いを込めて握手をする。
だが、まだだった……!
まだ大天使が残っていたのだ!!
「ユ~ウちゃん♡ どう? 天使さんだよ!」
後から天使姿の我が姉が出てきたのだ!
ボクの理性にヒビが入る。
「お姉ちゃん!」
「ん? な~にユウちゃん?」
「古来より天使と悪魔は互いに争ってきた! そうだね!?」
「確かにそういうイメージがあるね~」
「でもボクは、今のお姉ちゃんになら無抵抗で浄化されてもいい。いえ、むしろしてください! 慈愛の笑みと共にしてください!!」
「私もね……今の魔王なユウちゃんにだったら襲われたって……いいよ?」
あぁ、何て尊いんだ……
「お姉ちゃん!」
「ユウちゃん!」
ハシッと抱き合うボクとお姉ちゃん(魔王と女神)の図。
絵画にしたらモナリザに匹敵する名画となるだろう。
タイトルは『尊さ』だな。
「おーい、いい加減にしろシスコンどもー」
呆れた表情の明日奈によって無理矢理引き離された。
「酷いよ明日奈ちゃん!」
「そうだぞ明日奈ちゃん!」
「やかましい。秋穂さんはともかくアンタは“明日奈ちゃん”とか呼ぶな」
コイツ、文句を言うボクら姉妹を軽く受け流しやがって。
と、そこでアルカが声を掛けてきた。
「友理、友理」
「何だよアル……カ?」
ロボット風のアルカが立っていた。
「喰らえ~ビームサーベル~」
なんか手に持った玩具の剣を軽く振っている。
「アルカ……何それ?」
「ガ〇ダムのマネ。テレビでやってたセリフ」
「そ、そうか」
「似合ってる?」
「お、おう」
無表情なアルカがアニメで見たらしいキャラクターのセリフや動きをすると、すっごくシュールだ。
一応、楽しんでいるってことでいいのか?
それからもコスプレパーティーは続いた。
みんなが着たコスプレを交換して付けたり、新しいのをしたり。
天使姿のボクを見た明日奈が「究極レベルで似合わない……」と言ったり、魔王姿になってもお姉ちゃんの慈愛が失われなかったりしたのが印象的だったな。最後までニャンコセットを明日奈が拒み続けたことだけが不満だった。
深夜。
「ふわぁ……喉渇いた」
寝る前にテンションが上がってたせいか、喉の乾きで起きてしまった。
適当に水を飲んで寝るとしよう。
すると、
(――っ!? 人の気配? まさか、泥棒……?)
家のセキュリティはかなり高いはずだけど……
ゆっくり音を立てないように気配のする方へ向かえば、
「こう、かしら? 自分で描くと難しいわね」
聞こえてきたのは明日奈の声だ。
(明日奈? こんな時間に何をしているんだ?)
どうにも気になったので、そのまま音を立てずに近づいていく。
するとボクの目に飛び込んできたのは……!
「にゃ、にゃーん♪」
恥ずかしくしながらも、姿見の前でニャンコセットを身につけ、あざとくポーズをとる明日奈だった!!
「うぅぅ、やっぱこれ恥ずかしいわ。さっさと仕舞って――」
「……明日奈」
「ふぇ!? ゆ、ゆゆゆ友理!? 何でここに!? いや、これは違うのよ! 別に本当は興味があったとか、そんなんじゃ……!」
「カワイイ……!!」
「え? あの、ちょっとアンタ、目が怖いわよ」
「ちょっとワンコセット身につけてくるんで、このままボクが主人公の代わりに狼となってニャンコ明日奈を食べちゃう展開とかは……」
「 い い わ け あ る か !! 」
「フギャン!?」
額に思いっきり猫パンチを喰らった。
地味に痛いけど、正気には戻った。
明日奈からは、このことをみんなにバラしたら容赦しないと脅されたけど、絶対に言わないさ。ボクの脳内メモリーに永久に残すからね。
永久保存版の可愛さだったもん。
記憶が無くなるまで脳にチョップを喰らう訳にもいかないしさ。
ワードのトリミングで覚えた成果です。みんなカワイイなー。
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登場人物の紹介は2章からなので、元の登場人物たちの姿を見たい人は画像クリックで『みてみん』まで飛んでご覧ください。