狭すぎるソラ
第一話 狭すぎるソラ
「少尉ィィ!止めろ。軍法会議になるぞ!」
高度三万メートル・・・
普通、法に絞られ空に行く時には行けない場所だ。そこに今、俺はいる。
なぜ、俺がこんな所にいるか・・・
日本空軍 高機動AI試験部隊 会議室
「白魔女に餌を与えすぎた・・・それでか・・・」
「生まれて、しまいました」
「はぁ、データを消しますか・・・」
「魔女に破壊させましょう。それしかないわ・・」
「はっ!」
ここは各部署の腕の立つ、試験機乗りの集まる場所だ。
高機動で人工知能を搭載した戦闘機を試験している。
その中に一人だけ問題の隊員が居た。
「今日もか・・・羊!ここは君の牧場じゃない!自由に飛べと誰が言ったぁぁぁ!」
上官に怒鳴られようと彼は殆動じない。
「・・・・・」
無言だ・・・・
「仕方ない・・!賢い女(白魔女)とデートでもしてろ!」
その時、上官の携帯が鳴る。
「もしもし?決闘?どうして彼に?白魔女!」
「オイ羊!大変だ!魔女と実弾でやるらしいぞ!やるのか?」
ここでは味方どうしで撃墜しあい。評価する場所なのだ。
もちろん、死はかぶされるが。
「はい・・・」
「死を畏れないのか?」
「あいつにいろんな事させたいんで」
「行ってこい」
擬人型AIバージョン3.92White Witch
白魔女と呼ばれるAIだ
制作者は羊草 ソラ、羊と呼ばれている彼の事だ。
彼はコックピットに飛び乗ると、
Alの話でも聞くように液晶ディスプレイに顔を寄せた。
彼はフッと独り言を呟く。
「呼吸が聞こえる・・・」
そう、このプログラムは生きているのだ・・
機体の端にあるJetボタンを押してエンジンを起動させる。
そしてもう一言。
「頭のいい奴だ・・クリーンエンジンを考えるのだから」
クリーンエンジンとは燃料もいらない上、
ラムジェットエンジン程の動力を持つ未知のエンジンだ。
それをコイツが発案したのだ。
余談だがこの飛行機にも非常用動力として付いている。
南アルプス、高度7000
決闘が始まる。機体は両者F27fairyと呼ばれる第七世代ジェット機だ。ただAIが違う。
鳴り響く警報音、迫るミサイルにも彼と白魔女は全く動じない。
それどころか、ミサイルから敵を探している。並大抵の人間には出来っこない技だ。
広がる山々、朝日を浴びて、真珠色に輝く雪、空がどこまでも澄み切っている。
そんな中、決着は全く付かなかった。
山々に入り、迫るロケット弾、ミサイル、機銃をかわしていく。こっちが攻めると相手もかわしていく・・・
”ここであいつを頼ろう・・”
そう思うとソラは液晶ディスプレイの非常と書いてある項目を開くいた。
その一番下にある
AIシステムサポート制限解除と書かれたプログラムを作動させる。
作動された途端、失速寸前まで速度が下がり、躊躇いなくエンジンを全開にする。
ソラはシートに座るだけで手一杯の状態になっていた。魔女はもう正面だ・・・
パリンとガラスが割れた音がした。機銃が風防にめり込み破壊する音だ。
パイロットを失った魔女は地上にたたきつけられる。
「もういいぞ、白魔女・・・」役目を終えたようにAIは動作を停止した。
日本空軍 高機動AI試験部隊 会議室
「もしもし、えっ!そんな・・魔女が落ちたですって」基地指令は驚きを隠せずにいた。なにしろ、基地をあげて制作したAIが一人が作ったAIに負けたのだから・・・
南アルプス、上空
新天地に行こう、液晶ディスプレイにはそう書かれている。
ソラは耳をすませる。
彼女がどんな考えを持っているのか・・・
そこは空間だ、機械と人間の境界の空間。そこに彼女のが横たわっている。
そこにソラだ。
彼女は立ち上がると俺の目を指で閉ざす。
真っ白な手、まるで粉を付けたようなサラサラの手。
「そのまま・・・閉じてて」
そして今、3万メートル付近にいる、基地からの無線も聞こえる
まだ俺の目は彼女の指に押さえつけられている。
バァン、と空気を突き抜ける音とともに目が開く。
「ここは・・・」ソラは周りを見ていた
F27は垂直に古城の中庭と思われる所に着陸した。