今日死ぬとして貴方は何をしますか?
※この物語はフィクションです
就職活動が苦痛だった
そもそも何か熱い思いを持って大学に進学したわけではなく、世間の風潮に流された結果の選択だった。
だから周りに流されるままサークルに入り、遊び惚けていたらこんな時期になったしまった。
なんとなく今日は企業説明会に行きたくない、そんな理由で近所の公園のベンチに腰掛けぼんやりとしていたらあっという間に二時間が経過していた。
「俺、一体何やってんだろ」
何をやっても中途半端、これといった特技もない。
「……今日は帰ろ」
気分じゃない。
本当はいけないことだとは知っていたけれど、どうしても足が動かなかった。
きっと今日休んだら明日からは何とか頑張っていけると信じる他無く、重い腰を上げて来た道を引き返し家に帰る。
「危ない!」
「……え?」
筈だった。
次の瞬間には目の前が真っ白に染まり、体の感覚が失われる。
「――――!――――!!」
暫くして視力を取り戻すも、その視界は赤い曇りガラスを通したようなぼんやりとした光景が広がっていた。
「誰か!救急車を呼んでくれ!」
ようやく意味のある言葉として聞き取れたそれは、明らかに自分に向けて掛けられていた。
救急車、その単語を耳にしたと同時に全身を形容し難き激痛が駆け巡る。
自分が今どんな姿なのか、周りはどんな状態なのかは定かではないが、一つだけ確信したことがあった。
「……俺、死んだな」
こうして平凡で何の取り柄もない青年の生涯は幕を下ろした。
否、ここからが本当の始まりだった。