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明日を迎えよう

作者: 磯 いでる

ファンタジー世界が苦手な方は辛いと思います。



また、アプリがうまく表示されないので、文が不自然に切れていたり、改行されています。


その辺のご指摘は甘めにお願いします。

静かな森の中、囀りが聞こえてくる。


「はい、出来たよハレカ」

「ありがとう、お姉様!」


少女は姉に花冠を被せてもらい、嬉しそうにしている。

飛び回る妹が青空に向けて無邪気に話しかけた。


「天使様、いる?ねえ、お姉様は信じる?」

「いないと思うけど……、ハレカが信じるならいてほしいな」


朽ち果てた木に腰をかけて、姉は長い髪を風になびかせた。


天使が、もし、いるのなら、

この子と私を、この森から解き放ってくれますか?



ここはどこかの世界。

緑豊かで、文明のない、

たった二人だけの世界。


滅びてしまった都市がある。

空に浮かんでいた島々で人々は暮らしていた。


それぞれの島には宝石と同じ名前がついていて、二人はターコイズの島に生まれた。


ある時、エメラルドの国の、森の命が戦争を始めた。


植物だけが生きる島で、狩人が狩りから戻らない。


森に喰われている---。


そう書き残されたメモが森の入り口に落ちていた。


ナイフで斬りつけた傷が新しいのに緑が踏まれた様子もない。


二人の父は村長として、村を守る為に命をはった。


死んだかどうか、アメリにはわかっていた。


妹にはしばらく村には帰れないことだけを伝えて旅支度をした。


「ここ?どこ?」

「結界の外の世界よ」

「村は?パパは?」

「結界の中よ、ママも後からくるわ」

「おまじないのお仕事?」


妹には残酷すぎる魔法を父は教えないと決め、

姉と共に結界の外へ敢えて逃したのだった。


戦争に、魔法を使えない者は連れていけないからだ。


そして、今二人がいるのは、"かつて結界が張られた村があったところ"だ。


ハレカは気がついていないのだ。

姉の座った巨木が、村を守っていた古代樹だったことを。


「ねえ、天使様!いるならお返事してー」

天使はよく晴れた日の南の空に現れる、と村では教えていた。


ハレカはそれを信じているのだ。

アメリはそれを信じているから、

妹にやめなさい、などと無粋なことは言わなかった。

その、瞬間までは。


バサッと鷹や鳶などが羽撃くようなとてつもなく大きな音がした。


アメリは瞬きをして、一度目を長く閉じた。

深呼吸をして、森の木々のざわめきを体に纏わせ、

静かに攻撃から身を守る体勢に入った。


「何者か!」

アメリに冷たい視線が注がれていた。

白い、翼が青空をバックに煌めいていた。

人間の男の体の後ろにその翼はあるように見える。


腕組みをした、18のアメリより、5つほど年上に見えるような----あまりに馴染みある顔をした----


「天使様だあ!」

飛び回る妹を尻目に、アメリは詠唱の呪文を唱えられずにいた。


この天使、魔法を使わせないつもりだ!

アメリは唾を飲み込み、普通の会話を投げかけた。


「本当にいたなんて--」

「妹君の言葉を信じるのではないのか?」


縮れた銀髪の中に少し赤髪が混じる様なアメリには表現できない色をし、長さは腰近くまであった。


これまた不思議なことに、髪は風を一切受けていない。


「ねえ、天使様、お名前、お名前は?私ね、ハレカ!」


その男は宙空に浮いていた足環をフワリと浮かびあげ、素足のままの足を地面に下ろした。


足環は元の位置にもどった。


「ハレカ殿か、我はこの森から生まれた命である。名はない」


男は天使だと断言することはなく目下の幼女に視線を合わせている。


「えっ、じゃあハレカがつけてあげる!」

「だ、ダメよハレカ!村で名を付けるというのは服従の証よ!その男を、村の掟で縛り付けることになるわ!まして、神様をなんて!」


「神ではない。まだ生まれて間もない。そんな高等な神ではない」


声色が平坦だったからだろう、ハレカは足元にまとわりついて彼をゆする。


「ね、ね、どーしてお姉様にはそんな怖い顔するの?」

「むしろなぜ見える?我はそれが疑問でならぬ」

「え?どういうこと」


目を逸らしていても注がれている視線が刺さってくるのが肌でわかる。


薄手のワンピースの袖から覗く腕が震えているのは隠しきれまい。


「答えぬか。よい、では明日もう一度聞こう」


ハレカの頭を撫で、男は飛びたつ。

「待って!いっちゃやだよ!」

「安心しろ、ハレカ殿。そなたは我に何より先に名乗り、先導した。そなたの明日の為、我はまた来る」


足環を元に戻し、男は翼をはためかせる。

ハレカは追いかけるようにアメリに背中を向けて、上を向いて話した。


「お姉様がちゃんとお返事したら、大丈夫?」

「約束は違えぬ。明日だ。良いな」

「うん、絶対ね、天使様!」

「ならば名も授かろう」


アメリの曇りがちな表情をわかってなのか、男の言葉は突き刺さる様に明瞭であった。



男が太陽に吸い込まれるように消えた後でアメリは大きなため息をついた。


「ねえ、お姉様!結界の中に戻った時、天使様も一緒に行こって言おうよ」

「何言ってるのハレカ……」

「だってパパと、ママもおじさんもおばさんも、キザス兄様もみんな、"せんそう"してるんでしょ?」


「言わないで……」

「だったら、天使様に来てもらおうよ」

「来させて、どうするつもり」


天使は人間に干渉しないと村の伝承にあることを忘れたのかとアメリは少し強くハレカを叱った。


けれど、ハレカはそれがわからないのか、首を傾げた。


「えー!ダメなのー!?いいじゃん、ハレカ、天使様が来てくれたら嬉しいもん!」


珍しくジタバタするハレカにイラつきながらアメリは妹の手をとった。


「あの男が本当に天使だとして、私たちのことを助けてなんてくれないのよ!」


「なんで?助けてくれなかったらいちゃいけないの?だったらキサズ兄様もダメになっちゃうよ」


姿を消した婚約者と似た顔立ちの男だと、ハレカも気づいたのだとアメリは全身を強張らせた。


「ねえ、なんで?いてくれるだけでいいもん。みんなと一緒にいたい!」


ハレカは攻撃の魔法を知らない、使うことのできないお荷物だ。

だが、「せんそう」が何かを意味するのかも知らないのだ。


結界の外は「村の未来の果て」だった。

巨木の年輪がアメリにそう教えた。

場所を移動することなく、時間を移動してしまったのだ。


戦争は既に終結、緑が栄えている。

エメラルドの国が勝利を収め、文明は絶たれたのだろう。


そんな遠くの未来に飛ばされたも同然、アメリは改めて肩を落とした。

「みんな、生きてなんてないわ…」


日暮れが世界を包んで行く。

太陽が沈み、月が昇って緑が呼吸をし始める時間だ。


アメリは、あの男が「明日」と表現したことを不思議に思っていた。


決断できないまま、食事を終えたハレカがうとうとし始めたのを見計らって火を消した。


婚約者だったキサズは、島では珍しい混血児で、花や草木を枯らす力を持っていた。


恐らく、両親のいずれかはエメラルドの国の生まれである。

忌み嫌われたか、殺すのをためらったか、アメリ達の父曰く、「空から落ちてきた」のだった。


鳥の巣のように森の木を枯らして巻き込み、それをクッションにして、大きく、とすんと静かな音で空から落ちてきた。


先程の男に、消えた彼を重ねずにはいられなかった。

彼は羽根を携えた男とは違い、細々とした身体をしていた。


生まれ持った力のせいで畑や草原に近づけないが、慎ましく穏やかな彼にアメリは惹かれていった。


しかし戦争が始まるや否や、彼は自らの力を活かさなければ、と泣きながら育った村を後にしたのだった。


「この森も風が強く吹かないのね……」

森を枯らす男がここにはいないと心を深く抉りながら、アメリも眠りについた。



穏やかな朝が来た。

泉で顔を洗って、衣服を着替えた。


魔法で蓄積した「記憶」で、服を精製した。

その様子を、羽根を生やした男がじっと見下ろしている。


アメリはハレカに民族衣装のベストを着せながらその声を聞いていた。


「お姉様のお着替えは?」

「私はいいわ、力を使うと疲れるの」


思い出したようにハレカはごめんね、と口にした後で、じゃあ……と指を迷わせた。

「お姉様のお着替えは明日で、天使様は、明後日ね」


「…天使様も、着替えるのですか?」

「ハレカ殿が決めたならそうだ」


ハレカは、彼に向かってにこにこしている。


「アメリと言ったな。明日は来た。

我は約束を果たしに来た。お前も紡げ」


衣装ならば明日、と譲ろうとしたが、男は首を横に振った。


「衣装は明後日だ。ハレカ殿が決めた。それよりもお前も早く紡ぐように」

言っている意味が突然抽象的になった。

何を言っているのか理解できずアメリは困惑した。


「簡単なことだ。明日を言の葉で紡げば、

思い描いたお前の未来は明日となる」


「どういう、こと」

男が今度は首を傾げた。

「お前こそが、未来を決めるのだ」


全てを失ったアメリには、その言葉は断罪に聞こえた。


なくなったものを忘れろ、

今を受け入れよ、と婉曲して反響した。


「ハレカ殿が導きを齎している。

自らの意思で、世界を構築せよ」

「そんな、馬鹿げたこと」


「馬鹿げたこと?魔法、神、空、全て在ると受け入れておきながら何故望まない。魔法使いならば容易かろう」


アメリはハレカから少し離れ、男に向き合った。


「あなたが天使?ならば伺います、なぜあなたはキサズ様と似ているのですか?」


「ハレカ殿をお前が信じたからだ」


矢継ぎ早に質問するが、男は怯まない。

「衣服が欲しいのならば今差し上げます」

「今はいらぬ、もう決まったことだ。明後日に賜る」


噛み合わない。

何故、妹に敬称をつけるのか、何故意志を曲げないのか……


「明後日なんて…….来るはずがないわ!

来たって、何の希望もない!でも、

生きていかなければならないの、

この子に…わざわざ不幸なんか

教えたくないの!いなくなった人の

名前なんか言わせないで!!」


男は頷き、後ろに手を組んだ。

攻撃の姿勢からは程遠い。


「合点した。ハレカ殿と共にいながら、

お前に、"ハレカ殿と同じく明日"は来ていなかったのか」


アメリが叫んで息を切らしていると、

男の左手がすっとアメリの唾き(つばき)をふっと拭った。


左の瞳から溢れた涙は男の指を掠めて地面へと落ちた。


「妹を信じながら"明日が来ること"を、

受け入れなかった。

だのに、いなくなったことは信じている。

我が見えたのも、我がお前の恋しき者の

姿に似ているのもそのせいだ」


森の木のざわめきが聞こえた。


「ハレカ殿はいわば言の葉の神だ」

男が何を言っているのか理解できない。

妹が神?この無邪気な子が?

父と母を同じくするこの子が?


アメリの混乱を知ってか知らずか、

ハレカは男の足元に縋り付いていた。


「どうしてそんなことするの、ハレカ……」

「お日様みたいにあったかいのに、影は冷たいからハレカが立っててあっためてあげるの」


ハレカは姉と出かけるとき、

冷え性の姉の手をそう言って、

繋いだまま離さない。

だから、迷子になったこともなかった。


「手を繋いでいるから、迷子にならない…と

私とこの子が信じていたから、

迷子にならなかった……とでも?!」


「信じる者がいなくて救われる者はいない。

ハレカ殿にとってお前は「信じる者」だ、

ハレカ殿の幸福をお前が信じれば、

必ず成就する。故に我はこうして現れた」


ハレカは自分で未来を決める、アメリにはそう聞こえた。


馬鹿げていると先程問いただした自分が、より感情に油を注いだ。


「そ、そんなの、都合のいい奇跡じゃない!」


「滑稽だ。この森は"遠い未来"という、

都合の良い"捻れた世界"なのだろう?

その中で、"確かに存在する妹"の願う、

幸福な奇跡ごときを信じる姉の、

何がおかしい」


目の前が真っ暗になった。

ハレカを護るそういって離れることを

譲らなかった自分こそが、

妹を信じるのを滑稽と蔑まれたようで。


アメリは泣き叫んだが、

いつもなら声をかけてくれるハレカが、

じっと見つめたままで、何もしてくれない。


男は、すっと森の空気を吸い込み続けた。


「信じる者が想像した世界は、

必ず創造される。

故に我はハレカ殿に見える。

信じる者と願う者が違えたところで、

この森の摂理は変わらないのだろう」


正しく現れるかはわからない、

ただ、何がしか現れる、と男はまた曖昧模糊なことを繰り返したが、妹の微笑みが降り注がれている。


キッと睨んだアメリは歯を食いしばった。

「"天使"がいるのなら願ってみよ」


男にも、アメリにも。


「ここは未来の世界よ!?

過去に戻るなんて出来ないのよ!

仮に戻ったって、争いは続いているわ!」


ハレカの右耳を少し覆うように、

男は無骨な指を近づけて話す。


まるで、「幸せな未来の世界の者には聴き流させる」かのように、アメリには見えた。


「ならばここは、"お前の信じた未来"だ。

ハレカ殿の言の葉と合う言の葉を

お前が紡げば、結界の中のターコイズと

いう島へ戻れるかも知れぬ」


膝からアメリは崩れ落ちた。


ただ信じるだけ……そんな馬鹿げたことで、妹を救えるなら、父や母、恋人が死んでいない、そんな都合のいいことがおこせるのなら………


「人は、奏でることはしても、

聴く者がいなければ、それは海の藻屑と

同じで消えてしまう。私語(ささめごと)

聞き返さねば、ただの呟き(つぶやき)で

森に吸い込まれてしまう」


ハレカを見つめる瞳が冷ややかになっていて、

アメリは恐怖を感じた。


だが、ハレカは男の足元に擦り寄った。


「天使様、よくわかんないけど、

みんなに会えるんだよね。

また結界の中に戻ったらもうずっと、

みんな一緒なんだよね?」


羽根がバサリと音を立てた瞬間に、

アメリは涙を拭って叫んだ。


「"争いなんて、ない……"」

視線だけが森の中で動いた。


「いいえ、終わった、さっき終わったの!

キサズ様はハレカと手を繋いでいなかったから、

どこかの落とし穴に落ちたんだわ!

草木がクッションだから、下まで落ちちゃったのよ!

浮遊出来る魔法を得たら外に出たいって

言ってたもの!浮かんでくるわ!」


やけくそな、子供じみた即興の物語。

吐き捨てるようにアメリは普段穏やかな声を荒げていた。


男の髪が風に僅かに流れた気がした。


「村の周りに谷みたいな大きな穴を掘られたのよ!

何十年も何十年もかけて!知らずに生きて、

……私が争いなんて終わらないって言ったから、

魔法のせいで、私ととキサズ様が婚約しない、

ありえない未来にきちゃったの!!

みんな、無事!森の中で、バラバラに暮らしていて!

明日、……明日、あなたの導きで巡りあうのよ!」


何てみすぼらしいのだろう。

何て浅はかなのだろう。


こんな大人になって、現実を受け入れないで逃げて、妹1人の幸せを願えないで、何が、姉か。


妹が可愛い、この子だけには幸せになってほしい。

戦のない世界へ連れて行きたい。


そのとき、アメリはようやく気がついた。

結界を足早に出るその時、

「妹と争いや戦いのない世界へ行けたら」と悲しく思ったことを。


「だって、天使様が、何でも叶えてくれるんだもの、ね……そうなんだよね、ハレカ?」


泣きながらアメリは尋ねた。

あの時の涙が落ちたのが戦のある世界なら、

今、この涙が落ちる世界は……違うはず。


「うん!ハレカね、ずっとそう思ってたの!天使様が来てくれたら、きっとすぐだって!明日みんなに会えるんだって!

だから、天使様が本当に来てくれて、

ほんとに、本当に嬉しかったの!」

「私もよ、……ハレカ」


妹を抱きしめると温かかった。

アメリも男の足元にすがるような形になった。


「あ……お姉様泣いてる」

ハレカは小さな手でアメリの涙を拭いながら、

ためらいがちに尋ねた。


「お姉様、天使様にお名前つけていい?」


アメリは静かに小さく頷いた。

「今ならばアメリの明日はやってくる、授かろう」


アメリは「何てお呼びしたい?」と村の掟よりも妹を選んだ。


「天使様のお名前はね、

うんとね、……じゃあね、ツバサ!」


「承知した。以後そう名乗る」


青空に最初と同じように、

バサッと白い羽根が映えていた。


たった今、太陽を背に生誕したかのように見えた。


「ね、早くみんなのところに行こう」

「ハレカ殿、残念だが、アメリが望んだ。

我の衣装も明日だ」

「あ、そっかぁ…じゃあ明日ね!ツバサ様」


その夜、結界を確かに潜った音がした。

眠っている間に時が流れた。

その時が、2人を確かに運んだのは「明日」だった。

明日を、迎えた。


朝、森は小さくなって、

すぐ近くにテントが見えた。

村から見える渓谷の近くだった。

キョロキョロしていると大きな声がした。


「アメリちゃんか!?」

「叔父様!」

取り繕いの隠せない狩猟服を着た、父によく似た姿は確かに父の弟のラケルだった。


「ああ!ハレカちゃんも!ああ、よかった、兄さんにいい報告だ!」


生きているはずがない、嘘だ、と思いかけて、アメリは言葉を飲み込んだ。


「結界の外へ出て、もう帰って来ないと思った……!ああ、よかった、本当によかった!!

キサズが森を枯らしてくれて、

軍隊は土に飲み込まれていったんだよ!」


叔父はまくしたてるように現実を語った。



結界から出てから18日が過ぎていた。


父と母をはじめとする親族も各々(おのおの)傷は負っているものの、命に別状はない。


特に父は火薬を詰め損ねた不発弾が着弾したのを見て、危険を顧みずそれを魔法で持ち出し敵地の足元で爆破したのだという。


「叔父様……あの、キサズ様は」

叔父は曇った顔をした。

「手を尽くしたがダメでね」

一瞬、全身が固まった。



絶望の予感を追いやる。

一瞬が、先程からの一瞬が何万年にも思い返せる。


「両足を失ってしまった」

歩けなくなったことにため息をついていた。

「生きて、いるの……?」


「ああ、だが、起き上がることができない。

まだ昏睡したままで……このままでは草木も土も何もかも腐らせて…」


アメリはハッと気がついた。

キサズの未来を谷底へ落ちたと言った。

それが本当に起きたなら戻ってくるために、


浮遊魔法が使えるはずなのだ。


浮遊魔法が使えれば、

少なくとも体と足の裏から、

草木が枯れたりすることはなくなる。

寧ろ(むしろ)彼には、

生きやすい世界なのではないだろうか。


アメリは彼の笑顔を思い出してそう信じた。



「ツバサ様、明日キサズ兄様に、

飛ぶ魔法教えてあげれる?

そしたらキサズ様とお散歩行けるし!」

「それならキサズ様は魔法使いだから、

もう明日起きられるわ………」



「あの傷の様子じゃ明日ってわけには…。

まぁ森一つ枯らしたくらいだから生命力も吸い取っててくれれば幸運なんだがね」


叔父は笑顔の2人の様子に首を傾げながら、そのキサズに似た天使を伺っていた。


「しかし、二人ともどうして無傷で戻ってこられたんだい?」


森という自然の中で傷一つ負わないのは不可能に近い。


争いも苦しみもない世界に、飛ばされたから、

こうして帰ってこられたのだと、言われなければ見落としていた。


「この周りの国は同盟を結んだよ。長かった……

ようやく戦争のない世界になるんだよ。

そんなときに天使まで連れて帰って来るなんて……まるで奇跡を見ているようだよ」

「争いのない、明日を迎えるんですね」

「アメリちゃん、ハレカちゃん、おかえり」


叔父に案内され、

避難している陣営へと向かうことになった。



ハレカが姉の手を取り走り出す。

ツバサはそれを遠くなるまで、

じっと眺めていた。


「ツバサ様ー!こっちだよー」

口許をあげたツバサは、

裸足で地面を蹴った。

アメリとハレカを追いかけて。


-----この物語はここで終わる。

信じる者は救われるからだ。


最後までパッと浮かんだストーリーでした。

声を掛けて頂き作成したお話です。


アメリとハレカの名前は雨と晴れからです。


キサズは萌す"キザス"からで、ラケルは……咄嗟に出てきてしまいました。



稚拙な文章ですが、お読みくださいましてありがとうございました。



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[良い点] 残された世界線が気になるところ。 [気になる点] ドライなので大丈夫ですの意味。 [一言] 面白かったです。
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