天使の涙~フラメンコ
真が、メシア教会の牧師になる為、メシア教会の牧師学校に行って、4年。
この夏に、卒業した。
これで、カワチ教会の、正式な牧師になった、真。
このように、天上の母上が、道を示したのだが、牧師のサリバンも、ホッとしている。
真のママ。マキママに、ヒロシパパ。姉の、エミ。そして、エリカが、一番喜んでいる。
エリカ。天使のエリカ。
3000年前に、天上の父親、母上の命に、よって、天使になった。
そして、真にあってから、羽根(翼)が、4枚になった。
その、エリカが、真から、離れない。
教会にいると、真にいつも会うことができる、いつも遊べると、喜んでいる。
今日は、満月。
教会の庭で、バーベキューパーティーをしている。
エリカの仲間の天使達が、何人も来て、野菜に、フルーツ、野菜ジュースや、ワインを飲みながら、楽しんでいる。
教会をよく知る人達が、バーベキューに、カレーに、と、作っては、楽しんでいる。
家で作った、寿司や、サンドイッチが、行きよいよく売れる。
子供達は、お兄さん、お姉さん達が、作った、たこ焼きを、サンドイッチを、食べながら、ジュースで、コーラで、口をさましている。
キャンプファイヤーのように燃え上がっている、炎の前で、天使達が、何人も、踊っている。
手拍子に、唄に、合わせて。天使のマリーが、踊りの中から出て、ワインを飲んでいる。
(楽しい。)
「うまいな!」
という、女の人。
(そう?いつものことよ。)
と、話をする、天使のジェシカ。
エリカが、踊りの輪から、抜け出した。
ご機嫌でいる。
(楽しい。久しぶりだね。)
エリカが言う。
「フラメンコ。」エミ姉が、友達と行っている、教室。
天使達の前で、踊ったことが、きっかけで、話が、盛り上がった。
(エミ姉の、見て、踊りたくなったの。)
笑いながら、話をする、エリカ達。
エリカは、真に、銀のネックレスを、両腕に巻いてもらっている。
左足首には、銀の鈴のついた脚輪が、はまっている。
フラメンコを踊っている、天使達。
その中に、ミサが、ミユキが、女の人達が、真似して、踊っている。
天使達は、代わりがわり、唄に、手拍子を、している。
何人も、ステージに、上がっては、踊り、降りていった。
ステージと言っても、薪の前に、ベニヤ板を何枚も置いただけのもの。
フラメンコを踊る人達。それを見て、飲む、食べる人々。
天使達が、女の人達が、ステージから、降りては、話をしている。
ワインを、ジュースを飲んで、フルーツを、天使達が食べている。
菜食主義者たちの天使達。
男達が、女の人達が、焼けた肉を、食べては、また、肉を、網に置いた。
天使のエリカと、天使のヘルガが、天使のマリーが、話の中に、入っている。
女の人達が、聞いている。
(エリカ。踊りなさいよ。)
と言う、マリー達。
天使の、エリカコールが、鳴った。
(もう、仕方ないね。)
笑いながら、エリカは、カスタネットを、親指に付けた。
エリカが、真にキスをして、ステージに、飛んで行った。
(すごいのよ。エリカは。)
マリーが、真に言った。天使達は、唄を、手拍子を、しない。
真が、信者の人々が、静寂の空間を、感じている。エリカ、唄を歌っている。
エリカに付けた、銀のネックレスが、ゆっくりと音をたてている。
流れる砂のように? 風が、さざ波をたてているみたいに? 水が鳴いているみたいに? ステージに、エリカが、ひとり、立っている。
唄を歌っている、エリカ。
天使達は、エリカを見ている。
炎の灯りで、エリカを見る事ができない。
羽根が、燃えているようだ。
エリカの持っている、カスタネットが、リズムをとっている。
腕の動きに合わせて、ネックレスが、鳴いている。立ったいる、エリカ。
腕が、カスタネットが、動いている。
タップシューズが、音をあげた。鈴が鳴いた。
エリカの長い黒髪が、舞っている。さざ波のように、ゆっくりな動きで、そして、踊りの激しく、荒々しく、動く、エリカ。
誰も、手拍子をしない。
天使達は、ため息が出ている。みんなが、エリカを、見ている。
エリカは、真だけを、見ている。
羽根が、炎で、輝いている。羽根を広げて、踊る、エリカ。
高く、高く、あげた腕が、身体が、崩れた。
驚いた、人々。
天使達は、止まった。そして、拍手を送る、天使。
「すごいな!」
「綺麗ね。エリカ。」
ミサも、呟いた。
エリカが、ステージから、降りた。
代わりに、何人もの、天使が、ステージに。
(本当!あの子。よく遊びに行っていたから。)
マリー姉さんが、真に言った。
「そうなんだ。」
ミサは、誰と? いつ? 聞きたかったが、真が、口を開かない。
エリカが、真に抱きついた。
ステージには、多くの天使達が、人達が、踊っている。
「すごいよ。エリカ。」
キスを交わす、エリカと真。
(ありがとう。)
真のワインが、薄くなっていく。
真とエリカ。
踊っている、天使や、人々を見ながら、座った。
(熱い)
言う、エリカ。
(エミ姉の見て、思い出したの。)
笑う、エリカ。
エミ姉が、友達が、教室の人達が、踊っている。
(恋の唄を。)
口ずさんだ、エリカ。
マキママが、聞いている。
(時の流れの中、消えた恋唄を。恋人を。)
エリカ。両膝をイスにのせていう。
(よく、見ていた。)
踊りをやめて、刻の話を聞いている、人々。
深刻の暗闇の中、炎を囲んで、人々が集まり、料理をして、食べて、飲んで、遊んでいた。
(私も、私達も、その炎の中、人々と話をしていたの。)
天使の誰かが、言った。
エリカが、続ける。
炎の中、踊る、人々。
(昔、村から町に、町から都市に、国を越えて、移動して、生活する人々が、多くいたの。)
(国が亡くなり、国を捨てた、人々の集まり。)
(足を下ろすことのできない人々。)
(そんな人々を、土地を持つ人達は、差別して、迫害していった。)
エリカが、ワインを飲んだ。
(そうよ。)
ヘルガ姉さんが、フラメンコを、炎を見つめながら、言った。
(人間は、上を向かない。)
(下を見て、動くの。)
「えっ?! どう言うこと?」
ミサが、聞いた。
ミサを見て、話をする、ヘルガ姉さん。
(私達は苦しい。生きていくのが。)
(でも、奴らを見ろ。)
(土地を持たずに動いて、生きる者達を。)
(子供達に、言った人々が、どれだけいたことか?)
(人が、食べ物を。言っているのに、ドアを閉めて、息を殺す人々が。)
「ひどい!」
言った、人。
(そう、ひどい話ね。)
(でも、土地を持つ人達も、土地に縛られて、作った作物を、国王を、教会に取り上げられて、生きていけないのよ。)
(私の通った村は、食べ物がなくて、死んでいた村。)
(そうよ。ただひとり、赤ん坊を見つけたの。)
マリー姉さんは。
「その子は?」
いつの間にか、みんなは、踊りをやめて、天使達のところに。
(なにも、何物できなかった。)
(子守唄を歌ってあげるだけ。)
(命が、身体から出てくるまで。)
(唄を歌っていた。)
「そんな?!」
誰かが。
(食べる物がないのよ。)
(イモひとつ。麦、ひとつ。)
(村を出ていく時、持っていった…。)
(私達は、何百年と、見てきた。)
(都市を、多くの街を、たくさんの村を……。)
(数え切れない人達を。)
(旅人を…。)
(出会った。)
天使達が、話をしている。
(暗黒の闇の中、火が、火だけが、暖かかった。)
(火は、炎。)
(人の心の火。命の炎。)
(人々のやらない仕事を、して、それを忘れる為の、火。)
(土地持つ人達は、火を見て、闇に住むものを呼ぶ、炎だと。)
エリカが言った。
(炎は、命の火。生きる喜びの火。)
(恋の火。愛の炎。)
エリカ。真の手を握って、炎の方に。
後ろから、ミサ。マキママ。そして、多くの人が。炎に唄を聞かせる、エリカ。
チリチリ。リンリン。
燃える、炎。
火の子を撒き散らして、はぜる。
(あの時も、こんな感じだった。)
(唄を、踊って、遊んでいた。)
マリー姉さんが、エリカの肩に手をのせて。
(そう。恋花、咲かして。)
(娘が、仲間たちと、恋の話を咲かしていたの。)
(こわがりで、好きな人に言えなくて。)
(仲間たちが、背中を押しても、動けないの。)
(女の子たち、唄で、押したのよ。)
(みんなで踊るからって。)
(でも、その娘さんが、ひとりで踊ったの。)
(踊って、舞って、伝えたの。)
エリカが。
(恋の唄よ。)
(愛の舞。人々は、黙っている。遠い昔に、想いを寄せて。)
(今は、フラメンコ。って、呼ばれているけど。)
「教室もあるけど。」「そうなんだ。知らない男と、知らない女の愛の踊りなんだ。」エミ姉が。「じゃ、教室での踊りは?」
(多くの人が、多くの人々が、恋を、悲しみを、喜びを、怒りを、そして、愛を伝える為に、唄を歌い、踊り。)
(幾千、幾万の人々が、考え、多くの人が踊って変わった、踊り。)
(ひとりで、舞い踊る世界だもの。)
(愛する人に、人々に伝えたいと、想いを、多くの人々が、考えて、踊って、人々に伝わった踊り。)
(人々が、疲れを忘れて仲間と踊る生まれた祭り)
ヘルガ姉さんが、話を。
(好きな男の人に、話もできない娘さんが、背伸びして伝えた愛の舞。)
(旅する人々が、唄った、恋の伝説。)
エリカが、真に身体を預けた。
(遠い昔の、愛の物語。)
言う、エリカ。
炎が舞う。天使達の話を聴く、人々。
(そうよ。フラメンコは、盆踊り。)
(カワチ音頭)
言って、笑う、エリカ。
夢を見ていた人々が、現実に起こされた。
(人の喜び、楽しみから生まれた踊り。)
(人々が輪になって踊る祭り。)
(ひとりで踊る、心の舞。)
(さかのぼれば、ひとつよ。)
(人を好きになって、言葉で伝えられない想いを、風に乗せた恋の唄。)
(愛の舞。)
(名もない男と女が、紡いだ、恋唄のひとつ。)
(時に流れて。流れて……。)
月を見る、エリカ。
天使達が、歌う。天使が、舞う。
真似する、子供達。
「いいな。」
見て、エリカに言う、真。
真の手を、身体に巻きつけて、言う、エリカ。
(そう。みんな、はじめは、大人の真似をして、踊るの。)
(踊る勇気。仲間に入る、勇気よ。)
(誰かが、押してくれたのよ。)
「そうだな。みんな、踊っている。」
(そうよ。フラメンコなんて、名前付けたので、難しく考えているけど。)
(人が作った、愛の踊り。)
(スペインの盆踊り。カワチ音頭。)
(旅する人々が、辛い一日を忘れる為に舞った踊り。)
炎を見て言う、エリカ。
(真。踊ろう! 私の真似して。)
エリカが広場で、真の手をつかんで。空には、名もない男と女が、舞った時のように、星が輝いている。