2話 ジョブ開放
「ん……ここは?」
目を開けるとそこは見知らぬ天井だった。
新品であろう肌触りのよいシーツの感触に意識を委ねようと考えたが今の状況について考える。
確か俺たちは変なゲームをプレイしようとしたら始めようとした瞬間謎の光に包まれ意識を失った。
もしかしてあの光で気を失わせた後誰かが俺たちを誘拐しここへ連れて来たのか?いや、俺たちがあのゲームをプレイするとは限らないしその線はないか。
「とりあえず起きるか」
起きて左右隣にベットが置いてありそこには初めて会うが見覚えがある2人がいた。
「えっともしかして2人は大輝と拓海か?」
「そういうお前は結城?」
その2人は先程ユートピアというゲームで2人が作ってたキャラクターそのものだった。とすると俺の姿も変わってるのか?
辺りを見回してみるとここは1つの個室というより寝室のようで3人用のベットの他に生活用品も見受けられる。その時窓ガラスにうっすら映る自分の姿を見て自分の姿も変わってるのを確認した。
「もしかしてだけどさ、ここってゲームの中なのか?」
その問いに2人は困惑した表情を見せた。いや、俺だって自分で言ってナニイッテンダコイツ、って状態だよ!?ゲームの中に入っちゃうってフィクションの世界でしかあり得ないし。
「あり得ないけどそれしか考えられないね…」
「だよなぁ…」
「いやまて、実は夢オチかもしれないぞ!俺はゲームの中って方がいいがな!」
「んじゃ確かめてみる?」
「ん?どうやってだ?」
そういうと拓海は大輝の方は歩き出し、
「えい!」
「いってぇ!!?」
大輝の背中に向かって思いっきり平手打ちを叩き込んだ。
「夢じゃないみたいだね。」
「い、痛い。これが痛みか…」
初めて攻撃を受けた敵キャラみたいな事言ってんな。
いつものノリで拓海は叩いてるけどここでは2人の肉体は差があまり無いのか普段より痛みを感じてるのか。
「夢じゃない事は分かったがこれからどうすりゃいいんだ。チュートリアル無いならせめて説明書読ませろよ。」
「あっても読まないんだけどな!」
3人とも説明書読まないタイプの人間である。大体やってみたらどんなゲームか分かるからな。ただ時々説明書に細かい設定や操作キャラの技名とか書いてあるとこ見るのがとても楽しい。まぁこれはどうでもいいか。
「とりあえず部屋を散策してみようよ。」
「それもそうだな。」
ベットから立ち上がろうとした時枕元に一冊の本があることに気がついた。2人にも枕元に本があるかどうか促し2人の枕元にも同じ本があったようだ。
タイトルは、冒険の書。
とりあえずページを開いてみるとそこには
ようこそ ユートピアへ
この本は この世界の事について最低限の情報が記されています。 大事に扱いましょう。
「なるほど、これが説明書の変わりってことか。」
この世界では貴方たちは自由に生活していくことが出来ます。 最初に決めたジョブで冒険していくこともよし、冒険ではなく普通の村人として生活していくのもよし、商人として経済を回していくのもよし、好きなように生活していってくれて構いません。
これは貴方達の物語です。
「こんなの冒険一択だよな。」
「だね。」「だな。」
せっかくゲームの中に入ってまで村人やるのはあり得ない。商人は俺達では無理だろう、破産して終わりだ。
「えーっととりあえず冒険者になるには神殿に行きジョブを解放してからギルドに向かう感じか」
「そうみたいだね。」
この世界で冒険者になるには神殿へ行きそこでジョブを解放しないといけないらしく、解放しないといくら戦っても能力は上がらずただの村人とほぼ変わらないらしい。
ジョブを解放する事はその人間の潜在能力を解放するらしくその時にその人にあったジョブを役職として与えられるらしい。
「んじゃ早速神殿に行ってみるか」
「いや、もうちょっとこの周辺がどんなとこか見て回ってから行こうよ。まだこの家がどんな家かも分からない状態だし。」
「それもそうだな。んじゃ3人でこの家に何があるか調べよう。流石に地図や金が無いとかはあり得ないだろうしな。」
で探索しようとベットから立ち上がりまずこの部屋を散策しようとおもったが先程から大輝の様子が変だ。何か落ち込んでいる気がする。
「おーい、大輝どうした。具合でも悪いのか?」
「も、もしかしてさっき思いっきり背中叩いたの痛かった? だ、大丈夫?」
ムードメーカーがこの調子だとこっちも調子が狂う。
「いや、具合とか悪くはないんだが、ただ……」
「「ただ?」」
「女キャラにすればよかった…」
なんだそりゃ
「はー、何それ。心配して損しちゃった。そんな事で悩んでたなんて。」
「そうだぞ大輝、仮にお前が女キャラだったら友人の俺達からしたらどういう気持ちになると思う?」
正直友人の女体化というより見た目が美女でも中身が友人だとどう接していいか分からなくなる
「それに大輝、俺達は冒険者になる。そしたらパーティに女性の方が来るかもしれない。楽しみだろ?」
「それもそうだな!」
本当こいつ単純だな。下半身と脳が直結していやがる。拓海は流石に呆れてるようだ。まあ思春期真っ盛りの高校生なら仕方ないか。俺もだが
「大輝も立ち直った事だし行動に移そう。日が暮れちまう」
「全くだよ。心配させて。」
「すまんすまん笑 さぁ、野郎ども!さっさと行動しな!40秒以内にな!」
部屋一杯に背中の皮膚を叩く音が広がった。
叩いてる本人もちょっと痛そうだ。
「ここが神殿か」
あの後部屋を散策した後地図とこの世界の通貨を見つけ一通り準備し神殿へ向かった所だ。
俺達の拠点というより先程いた場所は街から少し離れたとこにある一軒家であった。
俺達がいた場所には地名はなかったがこの神殿のある街、ユートピア。恐らくこの世界の中心となる街だろう。
付近にも一応色んな街があるが今のところ行く予定もないので割愛する
「うへぇー緊張してきた。」
「け、結構人多いね…」
神殿は街の中心に近い事もあってか中々人通りがおおい。中にはこれから俺たちと同じように冒険者になる人もいるだろう。
「んじゃそろそろ入るか。」
「うん、みんな分かってるよね?」
「おう、分かってるぞ。ハオウさん笑」
「うるせぇ、お前も人のこと言えないだろ。ルシファーさん笑」
「てめぇ…」
最初、ゲームの中に入ってる事を認識していなかった為普通に自分達の名前を呼んでいたが、キャラクリした時に全員名前をつけており、大輝がルシファー、俺が覇王、あまりにも恥ずかしい為ハオウと表記する。お互いふざけて名前をつけたのが仇となった。
「まあまあ2人とも落ち着いて、みんな恥ずかしいのは一緒さ」
この1人冷静なのは拓海、ゲーム内では たくみん。
何ともまぁ無難な名前だ。
「こんなことになるんだったらもうちょっとマシな名前にするんだったな…ルシファー…」
「そうだな…ハオウ…」
「ふふっ」
このまま名前の事を後悔してたら恐らく俺は一生先へは進めない。やってしまった事だからと踏ん切りをつけ俺は神殿の中へ入る。続いて他の2人も中へ入る。
「「「お邪魔しまーす。」」」
「ようこそ、フーリスク神殿へ。冒険者の希望の方ですか?」
出迎へてくれた人物は、まるでお人形さんみたいで綺麗な金髪の少女であった。
「あ、はい。そ、そうでひゅ。」
「ふふっ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。」
正直想像していたのは髭の生えた初老の男性だと思っており不意打ちを食らった。ましてやこんな可愛い女性だとは。後ろでは「めっちゃ可愛くね?」と1人興奮しており片方がそれを宥めてる。
「私の名前はディーネと申します。気軽にディーネちゃんって呼んでね!」
「あ、はい」
「ウォォオ!ディーネちゃん!!!」
「うるさい!!」
後ろでガッっと何かを叩いた音が聞こえる。本当懲りねぇな。
「あ、あの自分達のは具体的には何をすればいいんですか?」
「あ、それでしたら1人ずつ私の前に立ってジッとしてもらってるだけで大丈夫ですよ。」
「あのー、あまり手持ちのお金が無いんですが…」
「それなら出世払いって事で構いませんよ!」
よかった、今の手持ちの金額じゃほぼ一文無しになってしまうとこだった。
「んじゃ俺からお願いしようかな。よろしくねディーネちゃん!」
「はい、こちらこそよろしくお願いしますねルシファーさん。」
どうやらこの世界では現実ではあり得ない名前でも普通の名前として認識されるようだ。現に笑いを堪えてるのは俺と拓海だけだ。
「ではこれから解放の儀を開始します。ジッとしてて下さいね。」
ディーネさんは目を閉じ両手を大輝に掲げ何か唱え始めた。すると周囲から蛍火のような光が大輝の元へ集まっていき体の中へ入っていった後周囲に弾けた。
等の本人は突然の出来事に狼狽えていたが。
「これで解放の儀を終了致します。お疲れさまでした。」
「な、なんか体の中から力が溢れてるように感じるぞ。俺今金髪になったりしてないか?」
どこの戦闘民族だよ
「そしたらジョブの方を確認いたしますね。えーっとどれどれってソーサラーじゃないですか!?」
ディーネさんが叫んだあと周囲から視線が集まり少し騒がしくなったような気がした。
「ソーサラーって凄いんですか?」
「凄いも何も魔法職での中ではトップと言われててかなり珍しいジョブですよ。」
ソーサラー 魔法職
確認されている魔法職の中で一番火力が高く、攻撃範囲も他職に比べてかなり範囲が広く他のステータスも平均より高い。
攻撃 B
魔力 S
防御 C
敏捷 B
幸運 C
「まじすか!すまねぇなお前ら!」
珍しく凄いジョブと言われてよっぽど嬉しかったのか上機嫌のようだ。
「ふーん、じゃあ次は僕が行ってくるよ」
そう言い拓海はディーネさんの前に立つ。
「次はたくみんさんですね。では解放の儀を始めます。」
「よろしくお願いします。」
拓海はキャラクリの時パラディンを選んでたはずだからパラディンになるのは確定だろう。問題はそれがこの世界ですごいかどうかだ。俺のジョブは遊び人だから2人とも凄いと俺の立つ瀬がない。
「これで解放の儀を終了致します。お疲れさまでした。」
「お疲れさまでした。」
「では早速たくみんさんのジョブを確認しますね。えっとーってパラディン!?」
先程から集まってた一部の人達から感嘆の声が上がった。この流れはやばい。
「パラディンってどんなジョブなんですか?」
「パラディンは剣士職の中で最強の防御力を秘めていると言われててソーサラーと同じくらい珍しいジョブですよ。今日だけでましてや連続でこんな凄いこと起きるなんて奇跡ですよ!」
パラディン 剣士職
剣士職最高の防御力を持っており神のご加護が付いているともいわれている。周囲の攻撃や敵意を惹きつける力を持っている為守護神とも言われている
攻撃 A
魔法 D
防御 S
敏捷 B
幸運 B
「その名に恥じぬよう努力して行きたいと思います。」
そう唱え拓海はディーネさんに向かって一礼する。
周囲の観衆からは歓声や拍手が起きている。
「そしたら最後にハオウさんよろしくお願いします。」
やばい、周囲の観衆は明らかに期待に満ちた目をしておりこの2人の連れなら凄いジョブかもしれないと思われている。一方2人はこの俺の結末を想像してか笑いを堪えるのに必死なようだ。こんな事ならキャラクリの時に強そうな職選んどくべきだった
いや、待てまだ遊び人が弱いと決まった訳ではない。パラディンやソーサラーに比べて遊び人というジョブはどんなジョブなのか想像がつかない。逆に考えれば想像がつかない分想像がつかないほど秘めたる力を持ってるかもしれない。いや、きっとそうだ。名前はふざけてるがこういうジョブが最終的には強くなるはずだ。俺の長年の感を信じるぜ!
俺は自信満々にディーネさんの前に立つ。
「前のお2人のジョブが凄かったのでハオウさんも実は凄いジョブかもしれませんね!」
「それはとても楽しみですね。」
「ふっ ふっ」
後ろで笑いを堪えきれないのか変な呼吸音を発してる奴がいる。後で覚えてろよ。
「それでは解放の儀を始めます。」
周囲から光が集まっていく。俺はそれを眺めながら凄い職であることを祈る。
光が俺の中に入った時、体の中から凄い力が溢れるような感覚を感じる。これは来たか!僕ちゃん大勝利!
「これで解放の儀を終了致します。早速ジョブを確認いたしますね。」
今も体から溢れんばかりの力を感じる。頭の中には勝利という二文字で一杯になっている
「えっとハオウさんのジョブは………………あ、遊び人です…」
周囲からは落胆の声が上がり中には目頭に手を当て頭を振ってる人も。おうお前ら、失礼すぎだぞ。
「遊び人ってどんなジョブなんですか?」
「えっとその……珍しいジョブです…」
「あ、その能力とかは…」
遊び人 特殊職
一部ステータスはほぼ最低値で村人とほぼ変わらない。バッドステータス多種あるため冒険者としてやっていくのは厳しいだろう。相手を魅了する力があるが知性を持たないモンスターには何の役に立たないであろう。
攻撃 E
魔法E
防御E
敏捷B
幸運A
「じ、実は凄い潜在能力を持ってたりしませんか?」
「うーん、私はそういったのは聞いたことありませんね…」
知ってた。素早いのと運がいいくらいしか使えるとこないじゃん。魅了する力あるらしいけど俺に相手をメロメロにする度胸も自信もない。
「あの、えっと、頼れるお仲間さんがいらっしゃるようなので な、何とかなると思います!」
「そうだぞ!俺たちがいるから安心しな!」
「そうそう、これは縛りプレイだと思って頑張ろうよ」
折角こんな世界に来たんなら俺も少しは無双したかったよ。何でこんな所で縛りプレイしてんの、ドMかよ。こんな事になるなら、あの時ゲーム始める前に後悔しませんか?って聞かれた時にキャラクリし治すべきだった。後悔しかねぇよ。
「ではコチラは3人の紹介状です。コチラをギルドの方に渡して頂けたら大丈夫です。」
そう言ってディーネさんは3つの封筒を渡して来た。
「それでは皆さんこれから苦労や困難などあると思います。それでも協力し合い助け合っていきましょう。私は皆様の武運と幸運をお祈りします。」
「「「ありがとうございます」」」
これで俺たちも一応冒険者になったのか。俺は遊び人ってジョブだが調べた所この世界でもゲームみたいにレベルのような概念があり敵と戦えば経験を重ねていけばその分ステータスも上がっていくらしい。
なら俺が最強の遊び人になってやる。ハズレジョブって概念を俺が壊してやる。
「とりあえず今日いきなり冒険ってのもあれだしどっかで飯か食材でも買って明日からにしないか?」
「それもそうだね。日も傾いてきてるしまずこの街を回ってみたいしね。」
「俺飯は肉系が食いたい。てかこれから3人で生活していくって考えたらすんげぇワクワクしねぇ?」
確かにこれから3人で冒険したり今後の事を考えると楽しみだ。これがマシなジョブだったらもっと楽しめただろうに。
俺たち3人は今後の予定や今晩の飯の事などを談笑しながら街の商店街のような所の人混みの中に溶け込んでいく。
3人の食のこだわり
結城 好きなものは最後に残す派
拓海 好き嫌いせず出されたものは出来る限り残さず食べる
大輝 食事は肉と米があれば後は何もいらない