7話 少女-4
「ペローーーッ!!」
背にしていた扉が木っ端微塵に弾け飛ぶ。
そこには先程まで遊んでいた少女、ヴィネの姿が。ただ何で何故かずぶ濡れで全裸なんだ
「へぶっ!」
こちらを見つけるや否や腹部に飛び込んでくる。
受け止めれるはずもなく床に倒れる。
俺に襲いかかろうとしてた魔王のペット達はこの子を見た瞬間部屋の隅っこの方に逃げ去って行き借りてきた猫のように大人しくなっている。
「生きててよかった〜……ペロ〜」
俺が生きてて嬉しかったのか抱きついて腹部に顔を擦り付けている。
小動物みたいで可愛いがいかんせん魔物といえど見た目は人間の女の子に近い
いくらロリが対象外といえど目のやり場に困る。
目線を別のとこに晒した時、破壊されたドアの前に立っている魔王と目があった。
コメカミには青筋が立っており床に散らばった扉の破片がカタカタ震えている。やばい抹消されちゃう。
俺はヴィネを引き剥がそうとするがビクともしない。一旦離れよっかと提案するも「やーだ」の一点張り。
「ヴィネや、すまないがそこの人間と話があるからちょっとだけお父さんに貸してくれないかな?」
中々離さなかったものの最後は渋々離してくれた。
「付いて来い、人間よ。」
言われるがまま俺は魔王さんの後ろをついて行く。てかマジでやべぇよ魔王激おこでしょこれ。
最愛の娘が全裸で見ず知らずの男に抱きついてたんだよ?そりゃ全国のパパさんブチギレでしょ。
しかも遊び人やぞ?7ページ分ぐらい拳のラッシュされてもおかしくないレベルだぞ?
死刑台に向かう死刑者の如く魔王について行き1つの部屋に入る。魔王が椅子に座り、「座れ」と言われ俺は床に座る。
「いくつか問いただしたい事があるがその前に、入って来い。」
それと同時に俺の背後に1人の悪魔が現れる。真っ白な顔とは裏腹に大きく開かれた眼は赤く充血している。
「そいつは他人が嘘をついてるか見分けれる、この意味が分かるな?」
嘘ついてもバレるし、嘘ついたら多分消されちゃいますねこれ。俺は無言で頷く
「よし、ならば1つ目の質問だ。何故貴様は死んだはずなのに蘇生術を受けずに生き返っておる?」
あ、そっち?てっきり娘さんの事かと思ったよ。
ただ何で生き返ってるかと聞かれると……
「正直な所何で自分が生き返ってるのか分からないですね…」
魔王は後ろの悪魔を一瞥する。悪魔は無言で頷く。
「見当もつかないのか?」
「多分ですけど、自分がーーーーーーー からだと思いますって あれ!?」
ゲームの中に入ったと伝えようとしたが肝心な部分が声に出ない。空気だけが抜けるように
「なるほど、では字は書けるか?」
筆を渡され書こうとするが肝心な部分だけは字が書けない、というより写らない。
「概ね理解した。そして1つ問うぞ、貴様をその状態にした主、もしくは貴様自身は私に敵対するものか?」
一気に空気が重くなった気がした。正直な所恐らく自分達からしたら魔王は倒さないいけない存在だろう。このゲームをクリアする条件としたらの話。ただ
「あくまで魔王という存在は自分達冒険者からしたら倒さないといけない存在です、けど俺は今いる仲間と仲良く暮らしてるの生活に満足してますし、自分がこの状態になったのも何か理由があると思いますけど魔王を倒す為だけじゃ無いと思います」
俺は思った事をそのまま魔王にぶつけた。後で心変わりして魔王を倒すという目標になるかもしれないがそれは最後の最後だろう。このゲームクリアするという事はもしかしたら向こうの世界、いや現実に戻るという事だろう。
正直現実世界の方はどうなってるか気になるが今はこっちが楽しいし2人が言及しない限りこのままでいいと思ってる。
魔王はこちらジッとを見つめた後頷き
「嘘偽りはないようだな。この質問は終わりだ。」
ふぃー助かった。理不尽に痛めつけられるかと思ったが案外話の通じる人でよかったよかった。
「さて、本題に入ろうか。」
ん?
「先程の件についてだ。何故我が娘が裸で貴様と抱き合ってたのだ。」
あ!!?!?!
「いや、違うんです!あれは事故なんです!俺が食べら「いや、分かっておる。貴様が食べられそうになってた事も、娘が先程まで風呂に入っていてそのまま貴様に会いに行った事も。」
「ただ何故あそこまで貴様に興味を示している。正直に言え、何をした。遺言なら聞かぬぞ。」
さっきの質問の時とは違い明らかに殺意に満ち溢れている。
「早く言わぬか。後10秒以内に言わぬと無条件で貴様を殺す、生き返った後も殺す。」
あかん、マジだ。魔王マジだ。
「わ、分かりません!ただ2人で仲良くゲームしてただけです!」
「おい!本当にこやつは嘘をついておらぬのか!?」
悪魔は俺が嘘をついてない為魔王の返事にしどろもどろしながら答える
「なるほど、分かった。」
よかった、理解してくれた
「貴様が悪魔さえも見破れぬ程の術使いだとはな。お前の前じゃ嘘を見抜く力も無意味という事だな。よってココで消す。」
何も理解してなかった!!
「待って、待って下さい!そんな術何かを使えないし第一俺のジョブじゃ魔法さえ使えないんですって!」
「なら何なんだ、言え!」
「戦士で「嘘でございます、魔王様」
ちくしょうダメだった!嘘を見抜くの本当みたいだな。
俺は意を決して言う。
「遊び人です」
「死ねイィ!!!」
魔王は椅子に掛けられていた剣に手を伸ばし俺に斬りかかる。絶命は確実だろう、多分俺レベルなら2〜30人は一気に殺せるレベル
生き返った後もまたこの一撃を喰らう事を考えたら流石に病んでしまうかもしれない。その時は考える事をやめよう。
走馬灯を見ながら覚悟を決め刃を受けようとしたがその刃は届くことはなかった。
ヴィネが俺の前に立っていた。
「何やってるのパパ」
その声音は今までとは違い恐ろしくこの子が魔王の娘だった事を理解する。
魔王の方は少し狼狽えてるようで
「引くのだヴィネよ。その者はお主に術をかけておる。それを解く為にもこやつを殺さねばならぬ。」
「なら何で私が殺してしまった時にその術は解けないの?」
魔王は押し黙る
「外でこっそり話聞いてたけど、嘘を見抜く力を防ぐ力を持ってるのに何でさっき戦士と嘘ついたのはすぐバレたの?」
そういやそうじゃん。俺も忘れてた
「仮に術をかけられてるとしても普通はこの人よりもその裏の奴を疑うべきじゃないの?まあ私はそんな奴いないと思うし。」
ぬぅ、と唸る魔王
「パパは私の事を大事にしてくれるのは嬉しいけどそのせいで周りが見えなくなるのは駄目だと思う。それに」
ヴィネは振り向きこちらをみた後
「私が拾ってくるオモチャ達や従者の人達は私が遊んでも本気で遊んでくれなかったりみんなどこか遠慮していた。私が強いせいで怖がらせたり魔王の娘だから失礼の無い様に対応されたり。
けどこの人間は違った。私との遊びにも全力で遊んでくれて本当の意味で遊び相手になってくれた。それがとても嬉しかった。」
そんな事で
「たったそんな事でと思われるかもしれない。それでも私はとっても楽しかった。だからこの気持ちを否定するような事はいくらパパでも許さない。」
少女の力強い主張に魔王は剣を収める。てかこの子今までの言動とのギャップが凄すぎない?
「先程までの術をかけられている可能性は捨てたわけではないが少し視野が狭くなっていたようだ。立場上謝る事はしないが、貴様には悪い事をしたな。」
魔王は一瞥し、踵を返し部屋を出て行く。従者の悪魔もいつのまにか居なくなっていた。
ヴィネ 魔王の娘 二本の角が特徴 見た目と中身もまだまだお子様でワガママである。魔王の教育方針的には本人の自由に生きさせるという方針だが単に娘に甘いだけで歪んで育ったとも言える
魔王 文字通り魔物達の王。普段のカリスマや知性、戦闘力は凄まじいが娘が絡むとちょっと頭が悪くなる