救いを求める手
視界に何も映らない、ただただ真っ白な空間。
見渡す限り、いや、その限りさえ曖昧な白で埋め尽くされた世界の中ただ一人、美しい女性が居た。
ややタイトな白いドレスを身に纏う彼女は、周囲の色に溶け込み今にも消え入ってしまいそうである。
だが、腰まで伸びる鮮やかな黄金色の髪が、この白一色の世界のにおいて彼女が存在している事を示す輝きを放っていた。
女性は地に膝をつき、胸の前で指を組んだまま、瞳を閉じてじっと佇んだまま動かない。
その姿は、教会で神に祈りを捧げる敬虔な信徒の様であった。
どれだけの間そうしていたのだろうか?
微動だにしないその様子は、繰り返し映し出されるホログラフ映像とさえ思える。
しかしある時、それまでずっと閉ざしていた瞼がピクリと動いた。
ゆっくりと開かれた双眸に宿るは髪と同じ鮮やかな黄金色。
瞳の奥に揺れて輝きは決して虚像の物ではなく、まごうことなき生の光を放っていた。
彼女は何もない空間を見つめながら、その口を開く。
「やっと・・・やっと、見つけた!お願い、間に合って!耐えて!私の命!」
彼女は視線の先に向かって手を伸ばす。
気の遠くなるような時の果て、ついに見つけたその『望み』に救いを求めて。