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異世界行ったら厨二病?  作者: 皐月
現代編:勇士と厨二は紙一重
2/2

1.厨二病と服装検査

暖かな陽射しが一面に降り注ぐ季節。薄紅に色付いていた遠くの山も落ち着きを取り戻し、木々の間を涼しい風が吹き抜けるようになった。そして図上には、抜けんばかりに真っ青な空。

かつて「漆黒の騎士」と呼ばれた俺には、些か不似合いな程爽やかな空気であるが、決して嫌いではない。

そんな景色の中を俺は歩いていた。群衆(せいとたち)には目もくれず、校門(ゲート)を一人潜る。ここから潜入調査が始まる。俺は改めて気を引き締めた。


俺の名前は戸澤拓巳(とざわたくみ)。とある世界で漆黒の騎士としての使命を果たし、この世界に転生した。現在は、ごく普通の人間を演じている。

理由は単純明快だ。俺のこの力は強大すぎるため、数多の人生(いのち)を狂わせてしまう可能性があるからだ。

ディーン・ベッグ時代がそうであった。俺は「漆黒の騎士」と呼ばれ、敵からも味方からも畏怖されてきた。此度も同様の(カルマ)を抱えてしまったようで、俺の周囲には誰も寄り付かない。もう慣れっこだが。

幸か不幸か、この町には争いが少ない。そのため生まれて変わって十七年間、俺の能力の出番はなかった。しかし事が起こってからでは遅い。

そこで俺が考えたのは、一般人に紛れて密かに調査(パトロール)し、悪が尻尾を出したところで一掃するという作戦だ。俺がこの平和な生活に甘んじているのは、決して前世の望みのためだけではないのだ。


……おっと、今日は何やら不穏な空気を感じる。

予想通りだ。校門を少し過ぎた所に、腕組みをした鎧姿(ジャージ)の大男と、軍服(せいふく)を着こなした少し小柄な少年が鎮座している。大男の方は、竹刀(エクスカリバー)を所持しているようだ。


久しぶりの刺客(アサシン)か。

俺の口許に、自然と笑みが浮かぶのを感じた。上等だ。久々に漆黒の騎士らしいことができる。

しかし油断は禁物だ。慎重に、しかし確実に歩みを進める。


「止まれ」

大男の方が低い声で呟いた。やはり俺の客らしい。ゆっくりと振り返ると、相手は今まで体育の教師に扮していた人物だった。このような危険人物を野放しにしていたとは、漆黒の騎士の腕も鈍ったものだ。

「何か御用か」

あくまでも丁寧な返事を心掛ける。彼らの最期の瞬間まで本心を悟られてはならない。

「生徒会法第24条、頭髪制服検査の項。眼帯は眼病を患った時に、白のみを許可する。大谷先生、これは校則違反です。」

隣で控えていた小柄な少年が、手元の冊子に何やら走り書きをしながら大男に報告している。彼らは如何様な計略を企てているのか。


俺が訝しんでいると、不意に大男の手が此方へ伸びてきた。咄嗟に身を庇うも、目にも止まらぬ早業で左目を封印していた眼帯を奪われた。

「な、何を……」

「二年三組、戸澤拓巳。マイナス一点。以後、お洒落目的の眼帯の着用は止めるように。これは没収する」

大男と少年が立ち去っていく。俺は何も出来ぬまま、その場に立ち尽くすのみであった。

拓巳が元魔術師にも拘らず、「漆黒の騎士」と呼ばれていた理由は一応用意しています……。

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