第9話 僕の異世界での新しい家族(6)
サラちゃんが僕に不満を漏らしてくるけれど、僕はシルフィーによって異世界日本から召喚された入り婿であり、《《主夫》》だから。主婦のように口煩いのは仕方がない。
だってこの大家族仕様の異世界ファンタジーの家の家事を一身に引き受け、こなしているのは奥さま達ではなく……。この神殿にメイドや男性の使用人が居ない様子を見ればわかると思うけれど。
僕は王さまのはずなのに家の家事を一人で全部こなしているのだ。
だから~と言うか? それってどう見ても可笑しいじゃない? 僕が産まれた日本では考えられないことだからね。
僕は首を傾げ、アイカさん達に尋ねた。
「アイカさん、何で王さまの僕が家の家事をしないといけない訳? 僕が産まれ育った日本では一応は家事と呼ばれる物は女性がするものだと、男女間の間で暗黙のルールで決まっているし。他国や宗教によっては男尊女卑思想が強く、女性に権限などない国だってあるんだよ……」
と僕がアイカさんに説明をしたところで、
「それが何?」と。
「健太はわらわ達に、そんなに尽くすのが嫌な訳?」
僕はアイカさんに憤怒され、睨まれつつ尋ねられた。
「えぇ~と、あのねぇ~」
僕はアイカさんに何て答えたらいいだろう? と。自分の頭の中で色々と思案……。お妃さまへの対処方を考えていれば。
「健太~! オーク種族は男尊女卑思想ではなく、女尊男卑思想……」
と言われて。
「オークの男達は狩もしない、朝からお酒ばかり飲んで、皆で雑談をしているだけ……。逆に女達は狩もするし、戦もする。そして夜伽の相手も女達が頑張るし、赤子が産まれれば授乳だって女がする……。だから戦がない時は基本、何の役も立たない男達が家事と子育てをするの……。わかった、健太? 理解ができた?」
僕は自身の目を細め、鋭く睨まれながらアイカさんから、この集落の政を聞かされた。
「う、うん、わかったよ。アイカさん……」と。
「僕頑張るから」、「好い旦那さまになるから……」
僕は真っ青な顔で、自分の頬を引き攣らせ、ヒクヒクと笑いながら、アイカさんへと了承した。
だから僕の異世界冒険譚はお妃さま達からのゆかいなハーレム王生活ではなく、夫と言う名の奴隷生活から始まり。
僕は家族の中で朝一番に起きて朝食の用意……。
そして朝の弱いお妃さま達を起こして回る、モーニング生活だから。
僕も偶には不満を漏らすこともあるから。
「じゃ~、みんな~、自分で起きろよ! 僕はもう起こさないから夕刻まで寝ていればいいだろう?」
僕は口煩い主婦達に不満を漏らした。
「ああ~、健ちゃんがまた逆切れした~!」
まあ、いつも僕の異世界冒険譚の朝……。一日の始まりはこの通りで、御后さま達と口論……。口喧嘩が始まるから。
「僕は別に怒ってなどいません! 只僕に毎朝起こされるのが煩い! 嫌だと思うのならば! 二度と起こしませんから。みなさま、そのおつもりで……」
僕は礼儀正しくサラちゃんへと告げてやった。