第66話 あれから(2)
でも僕はそんな穏やか、緩やか、家族円満な日々の中でも。
アイツが僕の口から言ってもらえれば安堵する台詞を。
僕は以前のようにはアイカの耳元で囁かなくなった。
そう、アイカがいるからと言った。
自分の筆頭奥さま、ヒロインさまがいるから。
君を置き、捨て、この集落を出ていくわけがないだろう、から。
家族を捨て、この集落を出ていく訳はないだろう、に。
僕はあの日、あの時から、台詞が変わってしまったのと。
僕からアイカを妻として求め、愛さなくなってしまった。
そう僕は元々自分が一夫多妻の、ハーレム王になることを快く思っていなかった。
だから僕が毎日自ら望んで求めるのはアイカばかりだった。
それがあの日から無くなった。
まあ、当たり前のことだとは思うけれど。
僕的にはやはり納得ができない訳だから。
僕のことをウォンやその他の男達からほとんど庇う事もしないかったのに他人のことは……。
まあ、婿養子の僕から見れば赤の他人になる。
アイカの身内、一族の異性達を庇う。
特に元彼氏、婚約者のウォンの件に関しては、集落の者達の目があろうとも。
プライドの高いアイツが泣きながら地面に這いつくばり。
平に、平にと、エリエやプラウム、サラ、ウルハに、ウォンの助命嘆願──命乞いをしたらしいと。
僕は洗濯の最中に主夫の人達から。
『男王は可哀想に』と。
その他にも僕のことを同情し、励ます言葉を彼等はくれながら教えてくれた。




