表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

暇人本棚

信じてる

作者: 灯月樹青

あなたなら、待ちますか?

「待ってて」

そういって彼は去った。

「いつか戻ってくる」

そういって彼はいなくなった。

もう何年も待ち続けてる。

友達に言ったら、

「それって待ちぼうけじゃん!」

そう言われたけど、

それでも探すことなく私は待った。

彼の言葉を信じて。

ただ、待ち続けた。

手紙を――。

電話を――。

連絡を――。

彼自身を――!

でも…、

どんなに待っても、

電話の前で祈っても、

郵便受けの後ろで拝んでも、

彼からの連絡は何もなかった。



月日はゆっくり流れた。

彼と出会ってからはじめての、

彼のいない誕生日、クリスマス、初詣。

どれも我慢できた。

「戻ってくる」

って約束したから。

でも…、

いつからだろう。

待つことが出来なくなったのは。

いつからだろう。

待つということが苦しくなったのは。

いつからだろう。

「それって…振られたんじゃない?」

何年も聞き流すことが出来た友達の言葉が、

胸を指すようになったのは――。

いつからだろう。

「そんな奴のこと忘れて新しい恋しなよ!」

そういう友達の言葉に光を見るようになったのは――。

いつからだろう。

新しい恋をしてみようと思ったのは――。

でもそんな時、

必ず彼の顔が浮かぶ。

約束どおり帰ってきた彼が、

ショックを受けている姿が…。

(待ってて…っていったのに…)

そういいたそうに、

私を見つめる彼の顔が――。

そこでどうしてもまた思いとどまる。

「もうすぐだよ」

「もうすぐ彼は帰ってくる」

そう、自分に言い聞かせて――。

何の連絡もない彼を、

ただただ待っていた。

待つごとに疑う気持ちは生まれたけど、

彼の言葉だから、

好きな人の言葉だから、

信じることが出来た。



そう。


     ――あの時までは――…。




その日私はなんとなく、

彼とよく行った波止場へと歩を進めた。

今考えればあれは、

――予感――

だったのかもしれない。

よく夕日を見ていたその波止場に着いたとき、

私はもしかしたら幸せだったのかもしれない。

だって、

彼の姿を見たのだから。

偶然か、

必然か、

神様の悪戯か。

そこには彼がいた。

ずっと、何の連絡もなかった彼が――。

――見知らぬ女の人と共に――。



彼はびっくりしたんだろう。

私の顔を人目見て、後は瞳を合わせようとはしなかった。

そのことで、目の前のことが現実だと知った。

夢ではないのだと。

その時、私の中で何かが弾けて消えた。

「あぁ、そうだったんだ」

気づいたら口にしていた。

頭も感情もすんなりと、本当にすんなりと目の前の現実を受け入れた。

それと同時に湧き上がる、怒り。

女の人が憎いとは思わなかった。

感情の矛先は、信頼を裏切った彼にのみ向かった。

女の人の方はなんだかわからないのだろう。

きょとんとしていた。

「結局友達の言ってた通り、ただの待ちぼうけだったんだ」

言葉に毒があることには気づいたが、言い直そうとは思わなかった。

瞳はまだ私と瞳を合わせようとしない彼を刺すように見ていた。

「あんた何年?何年で乗り換えたの?人を待たせといて」

声音は静かだった。

何年も付き合っていた彼には、私がとても怒っていることに気づいているだろう。

感情を表にだす私が本当に怒った時にのみ、それがフッと切れることを知っているのだから。

「――ロクデナシ――」

私は呟くようにそういうと、踵を返した。

きっとこの場所にはもう来ないだろう。

彼と初めて会ったこの場所には…。

思い出がたくさんあるこの場所には…。

今になって涙が溢れる。

彼を疑う自分を戒めていた自分が許せなかった。

平気であの場所にいた彼が許せなかった。



後々振り返ってみると、私は彼を5年半もの間待ち続けていた。



私は今、恋をしている。

あんな男のことを引きずるなんて許せないから。

彼を思っていた時間は忘れようと思う。

あんな時間はなかったんだ、そう自分に言い聞かせた。

けれどどうしても、なかったことには出来ない部分があることも知っている。

あの男の裏切りから、どうしても信じられない。今の彼を信じることが出来ない。

いくら好きになっても――。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] もうちょっと長いストーリーを考えてみてわどぉでしょぉか??とても同感できる物語でしたよ♪
2008/02/06 20:06 マドリーヌ
[一言] 結局言いたい事は?全然何が伝えたいかわからない。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ