表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

第↑↑↑↑↑幕

第↑↑↑↑↑幕

登場人物


グ・サラーラ(浪藤吉藤吉浪)

…世界の果てにあるとされる涙の大河に佇む大男。


ローナス(西岡加奈子)

…涙の大河の向こう岸で、グ・サラーラと互いに呼び合う絶世の美女。

(再び勾玉登場、口上)


涙の大河の内部、

数多の生命の嘆きの声を受け入れて、

刻みつけゆく激流の稜線。

その破壊的情景は、

反して麗しい音響の洪水としてなぜか機能した。

そこに沈黙はない。

出会いに纏わる無限の悲喜ひきこもごも々の

湧出や消滅、それらのいちいちには深い、

感情の記憶が轟いていた。

慈しみ、麗しの纏わり着いて、

可憐に佇む絶世の美女と。

激しい、孤独と格闘を纏いて、

沈思に臨む逞しき王と。


第↑↑↑↑↑幕


涙の大河の内部。

絶世の美女、ローナス、激流を覗き込んで、意識は遠い中空へと浮かんでいた。


↓西岡加奈子

ロ 生命の存在の成れの果てを見ているようです。ー 灌がれしこの永遠の舞台劇が、

ナ それは美しさを凶暴に顕すほどに

ス 恐怖の残像が音を立て増幅される、

  すべては死のヴィジョンに晒されて。

  ああ…グ・サラーラ…向こう岸に

  佇んでいらっしゃるのですね。

  

少し間を置いて。

涙の大河が激しく音響している。


ZAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNNN


ロ この光の渦をじっと見守っている。

ー この中に、たっぷりとした陰影が

ナ このワタクシを待っている。

ス それは死の光、絶望の期待感。

  ああ、銀河をどれだけ見下ろしても

  あなたへの愛を超えるものはなかった。

  グ・サラーラ…そしてワタクシを包んだ

  あなたの愛だけがたったひとつの光だった。


無音。

ローナス、頭を垂れる。

沈黙…沈思。

もう一度だけこうべを上げた。


ロ 激しさとは穏やかさに似ていた。

ー 嫌悪感からはやりきれぬほどの愛着が生まれた。

ナ いつもそうだった、特別な関係は、

ス ただの安逸とはとても違っている。

  このずっと激しい大河を見下ろしながら、

  いつ晴れ渡るのかもしれないこの心のカオスに、

  いつの日かむしろ永遠の絶望を、

  永遠の故郷のように考えてしまったの。

  ああ、ローナ・グ・ラーラ。

  涙の大河よ。

  いざ、ワタクシをお流しくださいませんか…

  いざ、永遠の別離を、途方もない場所へと

  遷してくださいませんか。

  それができるのならば、ワタクシは

  どこにでもゆきましょう。

  グ・サラーラ…そしてワタクシを包んだ

  あなたの愛だけがたったひとつの光だった。


再び激しいノイズ…


ZAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA……


涙の大河の内部、向こう岸。

逞しき王、グ・サラーラ、激流の轟音はまったく耳に入ることはなく、意識は己の宇宙を這って、無の境地を彷徨っていた。


↓浪藤吉藤吉浪

グ 一切が通過していく。

・ この宇宙、いつどこにでも

サ 永遠という中心地点は踊っていて、

ラ 俺に挑みかかってくるのを、

ー 冷たく交わしているだけで実は

ラ 精一杯だった。

  感情が谺する、それは宇宙の轟音と共鳴し、

  個と宇宙はいつでも連動していることを知る。

  運命はわざとらしく音を立てるから、

  取り合わずにいることは殊更でもない。


ZAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA……


グ …ふん、聞きなれた音響だぜ。

・ 涙は枯れることがない、宇宙は湿った情景だ。

サ 我が身に宿るにが汁のように、

ラ 胸を深く抉るものがある。

ー それを後生忘れずにいようとだけ、

ラ たったそれだけを、もう意味は抜け落ちたが、

  心で繰り返し、忘れたことなんて一度もない。

  サラサラとした肌触りだなんて、

  宇宙を流れる巨大な大河にはいつも

  感触しているんだ。そう思えば、存在することへ

  えも言われぬ勇気だけが群を抜いて勃興していく。

  感触…

  それが存在の全てなんだ。

  涙の大河はいつまで続くやら…

  向こう岸にはアイツが待っている、そう。

  絶世の美女、ローナスの幻影が。


激音!

グ・サラーラ、こうべを上げる。

動体視力。

激流を下る、永遠の精神の双生児を見逃すことだけは無かった。


グ・サラーラ、涙の大河の激流へと飛び込んで、華麗に泳ぎ、その精神をわけあった分身の肉体を、探り当て救い上げた。


グ・サラーラ ローナ…


ローナス グ・ラーラ…


グ 死は訪れるのだろうか…

・ この宇宙に咲いた絶世の美しの花は。

サ 我が手に収まったそのたおやかな身体、

ラ 華奢な体躯と滑らかな皮膚の連なり。

ー ああ、俺は宇宙に降り立ったというのか。

ラ 精神は溢れゆく。

  ようやく逢えた、死の今際…

  それでも死にゆくこの美女を、

  ひと目収めたということが、 

  この宇宙における最大の歓喜として

  喚起されていく…

  ああ俺は、もういつ死んだっていい。

  永劫。

  何度も繰り返された舞台演劇を

  ずっと見下ろして、それでも飽きもせず、

  いつでも付き合って暮らしていた。

  開放の時が来た。

  しかし、そう、長くはなかったもんだ。

  宇宙の断絶を見守って、しかしやっと、

  宇宙の悲しみは今宵埋められたのだという。

  ああ、向こう岸には未だに美女の待ち姿。

  それでも俺は、やはり自分自身に向けて、

  ひとつ助けの小さな笹舟だけを

  送り続けていく……


ローナス、眼を開ける。


ローナス ああ、会えたのですね、

     グ・サラーラ。


グ・サラーラ、眼を閉じる。


グ・サラーラ 向こう岸へはまだ遠い。

       行こうか、ローナス。

(一同退場)

カーテンコールでは、拍手が鳴り止まなかった。

象徴的であるが、幻想の耽美を見事に表現していたからであろう。

特に、主演の重金属眼多流と藤本多英。

そしてやはり、圧倒的な存在感で観客をさらった浪藤吉藤吉浪と西岡加奈子には拍手喝采であった。

そして脇をしっかりと固めたキューピットッ勾玉、草村やんえ、美鈴姉妹は、笑顔満面でいた。

こうして、意外や意外、私立賀正高校パソコン部の演劇担当チームは、大成功のうちにその幕を閉じることとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ