第↑↑↑幕
第↑↑↑幕
兄モナーリスの死に臨み、立ち尽くす妹イザベラ、それを取り囲むガーランド、イズメルダ、キューピットの三名。
第↑↑↑幕
↓草村美鈴
イ 我が兄者ながら、なんと憐れな死に様、
ザ 恥ずかしいことこの上ない!
ベ それにしても恋のキューピットよ、
ラ 天上の存在とはいえ、我が身内を手に
掛けるなんて、許されまじ。
一体どういうわけだ?
↓キューピットッ勾玉
ク ぴちょんぴちょん。
ピ う~ん、恋の矢というもの、下手をすると
ッ 凶器に等しいからね。
ト それが半端な恋ならば、試しに打つような
乙 代物じゃないよ。
女 つまりが考えが浅かった人間の末路だよ。
ぴちょんぴちょん。
イ くっ、結局は兄者の一人相撲じゃないさ。
ザ 戦う以外は浅はかな人間なのよね。
ベ まあ、出来損ないなのはずっと前から
ラ 知っていたから。それより。
キューピット、アタチは真剣よ。
命だって惜しくわないワケよっ。
さあ、ガーランド様とアタチを射抜いて
ちょうだいな。
↓重金属眼多流
ガ 待ちなさい、お嬢さん。
ー 知っていますとも、あなたのわたしへの
ラ 一途な愛は、ずっと前から変わらず
ン 捧げてくれていることを。
ド しかし、イザベラさん、あなたはやはり
愚鈍な兄の妹だ、ひとつ大事なことを
見落としている。
恋の矢は、一方通行に見えて実は、
双方に跨った意志の矢に過ぎません。
あなたのわたしへの愛は確実な愛情でも、
わたしが一方的にあなたを拒んでしまう
ことくらい察しがついておられる筈。
あなたほどに一途な愛の矢を伸ばしになる
お嬢さんはこの世界においてもひと握りと
断言できましょう。
しかし恋愛の矢は、結局はそれだけでは
成り立たないのです。
わたしは通過してあなたへと届いた矢を、
全力で毒矢へと変えてしまいましょう。
それほどまでに、わたしのイズメルダへの
愛情は、絶対的なものなのです。
諦めなさい、そして、その一途な想いを、
いつか、別の相手へと成就させるのです。
イ …ううっくんくんうわ~んうわ~ん…
ザ 好きなのに~、こんなに、死ぬほど愛して
ベ いるのに~~。
ラ ああ…ガーランド様、あなたをアタチの
ものにしてはいけないの??
ガ ええ。わたしとて我が命、のみならず、
ー 我が人生の全てを、この、美しい女性へと
ラ 捧げます。反対に、この素晴らしい女性も
ン わたしに全てを捧げる誓いを立ててくれて
ド いるのです。それは本当に幸せで、本当に
苦しいことです。
↓藤本多英
イ ええ…とても苦しいですわ…
ズ でもね、こんなに幸せな気持ちも
メ この苦しみ抜きにしては、味わうことは
ル できないでしょう。わたくしはもう、
ダ 受け止めております。死をも見据えた、
ガーランド様からの、愛の便りを…
イ …アタチは敗れたようね…
ザ しょうがないわ。まだまだ未熟だったと
ベ いうわけね。アタチはいまは敗けたわ、
ラ でも、きっと将来、あなたがたに敗けない
素晴らしい愛を手に入れるのです。
ガ 聡明なお嬢さんだ。素晴らしい引き際。
ー これは、精一杯命懸けで愛した者で
ラ なければ、たどり着けない境地なのでは
ン ないか。全力で命懸けで、愛することを
ド 我が命と重ね続けた私だからこそ、
強く実感できようぞ。
さあ、キューピットよ、このお嬢さんを
国へとお送りしなさい。
クピット乙女 ぴちょんぴちょん。
ぴちょんぴちょん。
イザベラ、クピット乙女、退場。
ガーランド さあ、行きましょう。
イザベラ ええ、どこまでも。
ガーランド(重金属眼多流)
…ティオト国の優れた兵士。
イズメルダ(藤本多英)
…かつてのガラン村の美女
クピット乙女(キューピットッ勾玉)
…キューピット
イザベラ(草村美鈴)
…モナーリスの妹。美少女。