第↑↑幕
第↑↑幕
涙の大河を目指すガーランドとイズメルダ、そして道すがら出会ったキューピットという三名に、ガーランドの恋敵モナーリスが合流する。
第↑↑幕
↓草村やんえ
モ おうこれはこれは、かの美しき黒豹と
ナ それに群がるハイエナではありませんか。
ー このモナーリスを差し置いて、
リ 国を捨てての逃亡劇とはあまりに
ス 勝手千万ではありませんか。
↓重金属眼多流
ガ 果たして何の用だ、敵国の兵どおし、
ー こんな道すがらでつまらん会話をしている
ラ ほど、この世の中も暇ではないはずだが。
ン それともよほどの重要があってのことか?
ド 大事になる前にそなたのねぐらへと
直ぐ様帰ることをお勧めしよう。
モ はて。惚けるにも程がある。
ナ 見え透いたものだ。
ー 私は立派な用があって来た。
リ それこそ、国のひとつやふたつより
ス 重要であるからな。
↓キューピットッ勾玉
ク ぴちょんぴちょん。
ピ ならば命すら惜しくないというわけかい?
ッ そこの恋敵はそう申しました。
ト あなたの想いを聞かせてくれよ。
乙 ぴちょんぴちょん。
女 ぴちょんぴちょん。
モ ほほう、口だけは大層なこった。
ナ 無論、命を賭してまで奪いにかかる価値が、
ー 姫、そなたにはあるでしょう。
リ しかしそれは、国と国とのぶつかり合い、
ス 命と生活を賭けた男どおしの勝負事にこそ、
極まってしかるべき。
そんな色恋の困難ごときに、命を賭すなんて
馬鹿らしい、姫、無意味な色恋への執着は
捨て、いずれの国の王、私の后となって
いただきたい。
↓藤本多英
イ まあ、なんて野蛮な。確かにあなたは容姿
ズ は端正、人間的にも素晴らしい部分を
メ 持っておられることだけは確か。
ル しかし、それは所詮、僅かな部分、でしか
ダ ありません。やはり今の文言ではっきり
しました、わたくしが命を捧げて愛するのは、
ガーランド様、たったひとつでございますわ。
ク ぴちょんぴちょん。
ピ 決まりだね、やはりこの娘の心を
ッ 射止めるのは、このお方の恋の矢ですね。
ド ぴちょんぴちょん。
乙 ぴちょんぴちょん。
女
モ ふん、すぐにわかるはずさ。
ナ ひとつお手合せと行きたいところだね。
ー そこにいるキューピットよ、彼女を射抜いた
リ 矢を、私にも通してはくれんかね?
ス そうすれば千年の恋も一瞬にして醒めようぞ。
なあに、どれだけ美しかろうが、所詮は女だ。
私の手にする生活と権力を味わえば、
ひとたびでもう中毒しては抜けられなく
なるんだから。せっかく高貴な身なりで
お生まれになった、こんなやからと、命を
賭した恋のゲームに興じるのはもうよして、
早く現実へと戻りなさいな。
考えてもみるがいい、あなたはガランの血を
引く女。ティオトの血がひとたび交われば、
互いに毒づきあってひとたまりもないんだ。
あの、世界の果てにあるという、涙の大河を
目指す以外に結ばれることは決してない。
イ ええ、そのかわり貞操だけは堅くってよ。
ズ 確かに我が血は呪われた血統ですわ。
メ でも、あなたがいまおっしゃったとおり。
ル わたくし共は、涙の大河を目指している
ダ のですからね、何の問題もありませんわ。
モ はははは。とんだ道化もあったもんだ。
ナ 私がほんの冗談で口にしたあの幻想の
ー 場所に、行こうとでもいうのか。
リ やはり馬鹿げたキチガイ野郎だ。
ス こんな詐欺師のことは忘れて、
早く私のもとへとお出でくださいな、
きっと幸せが待っているでしょう。
イズメルダ ……
イザベラ登場
モ おう我が妹よ、どうしたのだ。
ナ こんな危険な場所にまで顔をだすとは、
ー 律儀な娘に育ったものだ。
リ こんなに逞しいというのに、それでも
ス 兄のことが心配で着いてくるとはな…
↓草村美鈴
イ 兄者の心配なんて無用!
ザ 簡単に死なないほど無骨なうえに、
ベ そもそもアタチにとってみれば、
ラ いついかなる時に死んでもらっても
構わないからなあ…
モナーリス ちょっ…
ク ぴちょんぴちょん。
ピ それではさっそく矢を射る時間だよ。
ッ これは言わずと知れた世界にも有名、
ト 世界中の色恋の出発地、キューピット
乙 の放つ恋の矢だ。先程彼がいったとおり
女 に、まずはイズメルダを射止め、その
矢先がモナーリスを射止めるよ。
それで、ぼくが放った恋の矢が、ふたり
を見事に通過していったら、恋は成就
するからね。そうなれば僕がまた新たに
矢を放たないかぎりは、生涯恋の矢の
効能は、その心に刺さって離れることは
ないからね。
ガーランド イズメルダ…
イ ええガーランド、心配はありません。
ズ わたくしのあなたへの愛は本物です。
メ そんな偽りの恋の矢など、刺さった
ル ところで刺さりはしないものです。
ダ さあ、キューピット、射ちなさい、
わたくしは逃げも隠れもいたしませんわ。
クピット乙女 きゅー…
えーい!
矢が放たれた。
矢ははじめにイズメルダの心臓を射抜き…
それからモナーリスの心臓を捉える!
モ はははははは。
ナ これで姫は私のものだ。
ー さあ近こう寄るがいい、姫、王の后とて
リ 寵愛してあげようぞ…
ス …うっ。
モナーリスの心臓に刺さった矢は、通過して抜けることはなかった。
それはつまり、恋の成就の失敗であり、同時にキューピットの放つ矢の攻撃を、現実の矢と同じく肉体に同じ効果を受けることであった。
モナーリスはキューピットの矢に、果てた。
イザベラ あ、兄者!
ガーランド・イズメルダ ……
ガーランド(重金属眼多流)
…ティオト国の優れた兵士。
イズメルダ(藤本多英)
…かつてのガラン村の美女
クピット乙女(キューピットッ勾玉)
…キューピット
モナーリス(草村やんえ)
…ガラン区を統治するイゴメッダ国の兵長
イザベラ(草村美鈴)
…モナーリスの妹。美少女。