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冬の終わり、春の扉 ~少し早めの卒業式~

作者:星野サダメ
最終エピソード掲載日:2026/03/31
二月の終わり、立春を過ぎてもなお、世界は鋭い冬の残り香に支配されていた。高校二年生の健人は、自室の凍てつくような空気の中で目を覚ます。第一志望の高校に不合格となり、滑り止めの学校へ入学して以来、彼の心は死んだも同然だった。追い打ちをかけたのは教師からの理不尽な叱責である。「社会のゴミになる」と尊厳を傷つけられたあの日、彼の中で何かが切れ、不登校の末に三月末での中退を決意した。
意を決して数ヶ月ぶりに袖を通した制服は、驚くほど冷たく、今の自分の歪んだ輪郭には酷く窮屈に感じられた。今日、彼が登校するのは、一つ上の先輩たちの卒業式に際し、世話になった人々に最後の手向けをするためだ。疲弊した母に決意を告げ、逃げ場のない罪悪感を背負ったまま、彼は駅へと向かう。
閑散とした電車に揺られ、自身の挫折を反芻していた健人の前に、かつて軽音楽部で慕っていた美香子先輩が現れる。真っ直ぐな瞳に見つめられ、彼は中退の事実と、高卒認定を受けて未来をやり直す覚悟を吐露した。
健人に対し、先輩は対等な人間として静かな慈しみを向ける。
それは冷たい北風の中に確かな春を感じる、健人にとっての「卒業式」の始まりであった。
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