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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

一人語り

いつか必ず貴方を愛する

作者: 青葉めいこ

 お久しぶりです。皆様。


 そんなにいっせいに、わあわあ言われても理解できませんわ。


 順番に、お願いいたしますわね。


 なぜ、祖国を裏切った、ですか? 


 王太子、いえ、()王太子ですわね。


 はあ、こんな状況になっても、どうしてわたくしがこんな行動に出たのか、まるで理解していないのね。


 王太子として、また将来の夫して、この国の民であり、将来妻となる(わたくし)に最低限の気遣いはすべきだったでしょうに。


 少なくとも、わたくしは、そうしていましたわよ。


 国王の子供は、あなたしかおらず、その上、王太子としての容姿も能力も申し分なかった。


 けれど、母親が王妃ではなく元娼婦の妾妃というだけで、貴族の大半は、あなたを王太子、次代の国王として認めなかった。


 だから、筆頭公爵家の嫡女(ちゃくじょ)、しかも、今は亡きわたくしの母が元王女、国王の妹という、この王国の女性で最も高い地位と高貴な出自のわたくしを婚約者としてあてがった。


 王命で無理矢理決められた婚約でも、夫婦に、家族になるのだからと、最初は、あなたと仲良くしようと努力しましたわよ。


 けれど、あなたは、出会った時から、わたくしに不遜な態度でしたわね。


 いいのは出自だけで、容姿も能力も、いまいちな女だと、見下していましたわね。


 まあ、それは事実ですが、いちいち異母妹と比較されるのは、正直、うんざりしました。


 確かに、異母妹(あの子)は、わたくしよりもずっと美しく、何をやらせても、わたくしより優れていた。わたくしが血のにじむような努力をして成し遂げた事を、あの子は呼吸するように簡単にやってしまう。


 あの子は外見も能力も優れた、わたくしと父を同じくする筆頭公爵家の娘。けれど、あなたと同じく母親が元娼婦であるために、王太子(あなた)の益にはならないと、母が元王女の筆頭公爵家の嫡女のわたくしが、あなたの婚約者になってしまった。


 あなたは異母妹が好きだった。本当は、わたくしではなく異母妹と結婚したかった。


 その上、あなたが欲しくてたまらなかった高貴な出自を持つわたくしを妬んでいた。


 その鬱憤と嫉妬を、わたくしの容姿や能力をあげつらう事で、晴らそうとしていたのでしょう?


 何とも器の小さい男ですこと。


 あら、怒りました?


 この程度で?


 わたくしは、ずっと、あなたの理不尽な言いがかりに耐えていたのに。


 勉強は好きじゃない。はっきり言って大嫌いだった。でも、血税で生きている貴族の娘だから、将来王太子妃、王妃になるのだからと、学園での勉強も、王太子妃教育も手を抜いた事は一度もない。……残念ながら、能力不足で結果は伴わなかったけれど。


 婚約者である王太子(あなた)だけじゃない。


 家族や将来義理の両親となる元国王夫妻、学園の教師や王太子妃教育をする王宮の教師、筆頭公爵家の嫡女で王太子の婚約者だったわたくしを取り巻く貴族令息や令嬢達。


 誰一人として、わたくしを一人の人間として見てくれなかった。


 ただ、わたくしの能力不足を指摘して、この国の女性の中で最高の教育を受けているのに、こんな事もできないんですかとか、もっと努力してくださいとか、きわめつけは、貴女(あなた)の異母妹であれば、これくらい簡単にできるのに、とかね。


 この国の人間は、ただわたくしに完璧(理不尽)を強いるだけで、誰一人寄り添ってくれない。


 そんな国や人達を捨てたいと思うのは、当然でしょう?


 だから、国家機密を帝国に売ったのか?


 ええ、その通りですわ。元王太子。


 王太子妃教育で知った国家機密を、この国に留学に来ていた帝国の第三皇子殿下に売り渡しました。


 それを使って、第三皇子殿下は、この国をあっという間に制圧しましたわね。


 まあたとえ、わたくしが国家機密を売り渡さなくても、数年後には、こうなっていたでしょうけれど。


 帝国を始め我が国よりもずっと国力が上の諸外国に囲まれているというのに、その諸外国の要人相手であっても、国王も王妃も王太子(あなた)も尊大な態度なんですもの。あれでは、近い将来確実に、世界からはじき出されますわ。


 そう言って、自分の罪をなかった事にするつもりか、ですか?


 いいえ。祖国を売った事をなかった事にするつもりはありません。


 わたくしが何もしなくても、こうなっていたでしょうけれど、わたくしがそれを速めてしまったのも、また確かですから。


 自分の罪から逃れるつもりはありません。


 だから、生涯懸けて、この国に身を捧げます。


 新たなるこの国の国王となる第三皇子殿下の妻、新たなるこの国の王妃として。


 わたくしが皆様が集められた謁見の間に来たのは、あなた達の処刑を見届けるためです。


 なぜ、自分達が処刑されなければいけないんだと驚かれていますが、そっちのほうが驚きですわ。


 どうして、この国の王族や高位貴族であるあなが達が生きていられると思うのですか?


 この国は帝国の属国になったのだと示すために、王族や王族に近い高位貴族が処刑されるのは当たり前じゃないですか。そんな事は、歴史が常に証明しているのに。


 だったら、帝国の監視の下、今まで通り、我々王族や高位貴族が国を統治すればいいだけだろう。そのほうが国も混乱しないのだから?


 はあ、本当に、何も分かっていませんのね。


 あなた達の傲慢さや尊大さこそが、国を危うくしていたというのに。


 わたくしに対してだけじゃない。諸外国の要人に対してすら、尊大で傲慢な態度で接していた。そのせいで、我が国は世界から孤立しかけているのですよ。


 そんな国にとって害となる者達など排除するのは当然でしょう?


 安心してください。


 あなた達がいなくなっても、国を憂いていた有能な平民や下位貴族がいるし、帝国からも有能な方々を回してもらいますから。


 あなた達がいなくなっても何の支障もありません。


 むしろ、よくなるくらいかしら?





 本当に、わたくしが生きていていいのでしょうか?


 第三皇子殿下、いえ、もうこの国の国王陛下ですわね。


 王家に連なる筆頭公爵家の娘で王太子の婚約者。そんなわたくしが国を売ったのですもの。


 死ぬ覚悟をしていたのに。


 そんなわたくしに、国王陛下は、死ぬ覚悟があるのなら、生きて、生涯この国のために尽くせ、自分の妻、王妃となり、自分や国を支えろと仰いましたね。


 公爵令嬢として、王太子の婚約者として、能力不足だと言われ続けたわたくしが、この国の役に立てる事など何もないのに。そう言ったわたくしの言葉を否定してくださいましたね。


 確かに、公爵令嬢として、王太子の婚約者として、能力不足だったかもしれない。けれど、君を始めとする国を憂いていた下位貴族や外交官達の何気ない気遣いが諸外国の要人達を感心させ、この国は、かろうじて存続できていたのだと。


 自分もまた、どれだけ婚約者(王太子)を始めとする周囲の人間に蔑まれても、公爵令嬢としての義務や責任から逃げようとしなかった姿に心奪われたのだと。


 そう言ってくださいましたね。


 家族も婚約者も、誰一人として、わたくしを見てくれなかった。


 貴方だけが、わたくしを見てくれた。


 それが素直に嬉しいのです。

 

 今はまだ、わたくしは、わたくしが売ったこの国に尽くす事だけしか考えられない。


 けれど、いつか必ず貴方を愛する。


 その日まで待っていてください。


 わたくしの夫となる国王陛下。











 



 


 


 


 




読んでくださり、ありがとうございました!

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