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破滅世界の死神と。  作者: 真束
本編
9/20

episode7 七番目の救世主

 Messiahは実際に救済を行う全6部隊を、いくつもの裏方機関が支えることで形成を保っている。

 1部隊につき十数もの小隊が存在し、そんな隊員たちをまとめ、率いる『部隊長』はMessiahの中で特別な存在だ。

 人の生死に関わり、救済を掲げている以上、隊員のレベルを「強い」「弱い」で表現することはできない。軍事的なニュアンスを持つからだ。

 これらに配慮して、Messiahでは各隊員の救済行動を、建造物破壊の少なさ、周囲の避難誘導の的確さ、感染者の身体損傷の少なさなどの幾つもの細かい観点から評価するようになっている。

 それらの項目の全てにおいて高評価を誇る隊長は、全Messiah隊員の憧れの的であり、国民の希望の象徴。街を歩けば歓声が上がるほどである。



 そしてなんと、轟音さんに連れられた部屋にいたのが、そんな国の最たる救世主が一人、橘刹那第三部隊長だったのであった。


 橘隊長は驚いて固まる僕に困ったように笑って声をかけた。

「すまないけれど、君の名前を教えてもらっても良いだろうか」

 緊張と、少しの警戒。

 それらを悟られないように僕は答える。

「月ヶ峰陽斗と言います。…………えっと、覚醒者です。これも話すべきですよね。僕の能力については……」

「待ってくれ。その先はまだ言わなくて良い」


 突然話を遮られたことに困惑した。

 僕が覚醒者であることがこれから話す内容に関わるのであれば、ここは力の詳細について話しておかなければならないはずだが…。

「力の内容についてはこちらでは個人情報と同じように取り扱っているんだ。だから君には俺の説明を聞いた上で、決断してほしい。もし君が俺たちに力を明かすのならば、それは君の意思が固まった時だ」 

「………分かりました」


 力の内容は個人情報。

 ということはまさか、Messiahでも覚醒者の存在は黙認されているのか。

 てっきり感染者と同じように救済対象なのかと思っていた。

 もしかして、李鶴さんがさっき十六夜さんの能力を明かさないよう注意したのも、それほど力の内容が大切だから…?


「ああ、それと。俺は覚醒者ではない。普通に人間だ。しかしながら、この計画について責任者の任を受けているから、こうして君に話をしにきている」

 計画………。

 おそらくその計画が、Messiahが覚醒者を集めようとする理由につながっているのだろう。

 そんなことを考えていると、橘隊長が話を進めはじめた。

「ところで、月ヶ峰は感染者に対してMessiahが行なっている『救済』についてどう思う?」

「どうって………………特になんとも思わないですよ。僕らが生まれるずっと前からの常識だし、感染者にとっての最善手であることに変わりはないです。ただ、正直覚醒者である僕からしたら…………毎日救世主に怯えていた時期があるくらいには、生きづらいシステムですね」

「…………そうか。月ヶ峰がそう思うのも無理はないな。俺たちMessiaは覚醒者ではないが、中には現状の救済に疑問を持つ者もいる。感染者を生きたまま救えたら良いのにと何度思ったかわからない」

 確かにそれはそうだ。

 感染者を殺さずに救う方法さえあれば、僕もMessiahを避けずに生きられる。

 まあ、周りからの視線が痛いので力を明かすことはできないけど。

 でも、それがどうしたというのだろうか。


「あの、話が見えないんですが………」

「突然のことだった。俺たちの希望は本当に突然現れた。轟音たちに…………覚醒者に出会ったんだよ。………月ヶ峰、これを見てくれるか?」

 僕の言葉を半ば遮るように橘隊長は言った。

 そうして差し出されたのは極秘と書かれたいかにも大切そうな封筒だ。



 えっと………なになに。


  

 どうやらこれにはMessiahの今後の計画の一部が示されているようだ。

 しかし、その内容は僕の知る救世主の活動と大きく違っていた。


数行読んだところで、『覚醒者』という文字を見つけた僕は、そのまま食いつくように続きを追いかける。

やがて、信じられない内容の文章を見つけ、確かめるために何度も何度も読み返した。

その様子を見た橘隊長が、そっと口を開く。


「数百年という長い間、俺たちはこのウイルスが引き起こす『不可思議』に悩まされてきた。普通であるが故に、平凡である限り、俺たちはかつての天才が作ったそれを越えられない。でも、覚醒者の存在により、その状況は変わった」


顔を上げると、いつのまにか橘隊長の後ろに轟音さん、李鶴さん、十六夜さんが移動していて、一度全員と視線が合う。



「その書類にある通り、我々は、Messiahは…………………………秘密裏部隊として、覚醒者の隊員のみで構成された『第零部隊』を作ろうと思っている」



 第零部隊。

 それは、常に国民から希望の象徴として扱われる救世主、彼らとっての新たな光。


 


「俺たちが求めているのは、不可思議に不可思議で対抗する……七番目の救世主たちだ」







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