7.属性盛り過ぎだろ……
私は気が重くなりながらも、シンシアとともに村長宅までやってきていた。
さすがは村の長ということもあって、立派な家に住んでいるようである。
とはいえ、この村で一番偉い人か……。
なんだか仕事のことを思い出してしまって、少し頭が痛くなってきた。
私の上司みたいにヤバい人じゃないといいな……。
「こんにちは〜! シンシアです〜!」
シンシアが村長宅の扉をノックする。
少しの静寂とともに、奥からパタパタと走ってくる音が聞こえてきた。
私はごくりと唾を飲み込み、少しばかり緊張してしまっていたのだが。
「おお〜シンシアではないか! おっはなのじゃ〜!」
突如として中から現れた、私よりも数歳上であろう少女の姿に困惑してしまう。
まあ冷静に考えて、村長さんの娘か誰かなのだろう。
「おはようございます村長さん!」
「んん……?」
シンシアの言葉に困惑する私。
今この子に村長っていわなかった?
いやいや。どんなに見たって十五とか十六の女の子にしかみえませんが?
そんなことを思っていると、シンシアも私が困惑しているのに気がついたのか説明をしてくれる。
「そりゃびっくりするよね。この方がナザイ村の村長さんだよ」
シンシアが紹介すると、村長さんがふふふと鼻を鳴らして胸を張る。
「そうじゃ! 妾がナザイ村の村長——ルイル様なのじゃ!」
なんてことを言いながら、決めポーズを取るルイル様。
ええ……村長でありノジャロリとか属性盛り過ぎだろ……。
「ちなみに妾は人間じゃないぞ。妖狐じゃ」
瞬間、ぽんと言う音と共にルイル様の頭とお尻に狐の耳と尻尾が現れる。
ええ……村長であり妖狐でありノジャロリとか属性盛り過ぎだろ……。
しかし、妖狐なんて本当にいるんだな。
さすがは異世界。とてもファンタジーだ。
「私はナナです。よろしくお願いいたします」
一応礼儀正しく自己紹介をしてみた。
どんな人であれ、やはり第一印象は大事だからね。
すると、ルイル様はニコニコしながら私の頭を撫でてくる。
「おお〜! 礼儀正しくて偉いの〜! こんなに偉いのに、しかもめちゃくちゃ強いとかヤバイの〜!」
ルイル様は満足そうにしながら、今度は両手で私の頭を撫でてくる。
もう私の髪はボサボサである。
「昨日は本当に助かったぞ! おかげで村は助かったし、何より観光資源も手に入ったしな!」
「観光資源……?」
私が困惑すると、ルイル様はふふんと笑う。
「そうじゃ! お主が倒したドラゴンの首を村の門に飾ってみたのじゃ! きっと外からもその首目的でこの村に来るぞ〜!」
ええ……本当にあのドラゴンの首を飾っているんだ……。
あまりにも物騒だし治安悪いな。
「ところでお主たち、今日はどうしたんじゃ?」
ルイル様が首を傾げると、シンシアが事情を話した。
すると、ルイル様は自信ありげに頷く。
「それなら魔導書なんてどうじゃ? いいのたくさんあるぞ!」
「魔導書か〜! 十歳の子が読めるものじゃないけど……ワンチャンいけるかな?」
そう言って、シンシアが私を見てくる。
これ……多分無理と言っても読まされるな……。