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5.なんでこいつこんなに偉そうなん?

 その後、私たちは夜も遅いからともう一度家に戻って睡眠を取ることにした。

 

 そう、睡眠である。


 これを私は待っていたわけで、きっと一難を乗り越えた先に爆睡をかますのはさぞかし気持ちの良いことだろう。


 とはいえ……結局私はシンシアと一緒にこのナザイ村を守る手伝いをすることになりそうだった。


 まあ家とかお金とか、何も持っていないからとてもありがたいんだけどね。


「……外から素振りの音がする」


 私は顔をしかめながら、ベッドから起き上がる。


 ちらりと窓を見ると、まだ外は薄暗い。


 その流れで時計を見ると、時刻は朝の四時を指し示していた。


 ————

 五時間の睡眠を確認

 『睡眠強化』を発動します


 合計睡眠時間は10時間です。

 それに伴い身体強化+100

 新規パッシブスキル 《運上昇》を付与しました

 ————


 私は恒例のウィンドウを見て、大きく息を吐く。


「だから五時間の睡眠ってなんだよ……!! そんな微量の睡眠時間で今までの睡眠負債が解消されるわけないだろ!! 二十四時間くらい寝かせろ!!」


 私は思い切りウィンドウに拳を放つ。


 しかしウィンドウに実体はないようで、簡単にすり抜けてしまった。


 はぁ〜……というか、パッシブスキルってなんですか。


 私にも分かるように説明してくれません? 常識ないですよ?


 ————

 あなたのレベルに合わせて簡単に説明します。

 パッシブスキルとは

 自分から発動しなくても、裏で常に発動している能力のことです

 ————


 急に私の思考を感じ取って、ウィンドウに新たな文字が表示される。


 ひとまずその説明を聞いて納得した。


 だけど。


「なんでこいつこんなに上からなん? 喧嘩売ってんのか?」


 私がイライラしているのを察したのか、ウィンドウはすぐに消滅してしまった。


 言うだけ言って消えていきやがったこいつ。


 まあいいや。


 私はため息を吐いて、外から聞こえる素振りの音の正体を確かめに行くことにした。


 大方想定はできているが、きっとシンシアだろう。


 外への扉を開くと、シンシアが汗だくで剣を何度も振るっている。


 近くまで近づいてみるが、かなり集中しているのか気がつかれない。


「おはよう、シンシア」


「おおっ!? おはようナナちゃん!」


 突如現れた私に驚いたのか、シンシアは剣を落としそうになりながらこちらに振り向く。


 そして、申し訳なさそうにしながら頭をかいた。


「もしかして起こしちゃった?」


「バリバリに起こされた」


「バ、バリ?」


 一瞬困惑といった表情を浮かべるシンシア。


 私はその様子を見てくすりと笑う。


「でも熱心だね。こんな朝早くから素振りだなんて」


 私がシンシアを褒めると、彼女は恥ずかしそうにしながら笑う。


「村を守るために強くならなきゃいけないからさ。目指せAランク冒険者〜! ……なんて」


 シンシアは悲しそうに嘆息した。


「実はAランク昇格試験に三年連続落ちてて……頑張ってるつもりなんだけどな……」


 つまりあれだろうか。資格試験に三年連続落ちていますといったところだろう。


 気持ちはすごく分かる。


 同期が一発で資格試験に合格していく中、自分だけが落ちてしまった……なんて状況……考えるだけでも恐ろしい。


「シンシアならなんとかなるよ。私も応援する」


 この励ましに意味はないとは思っているが、しかしシンシアの頑張りは立派なものだと思った。


 だから、せめてもの応援だ。


 と言っても、十歳の私に言われても困るだけだろうけれど。


 しかし、シンシアは私の言葉を聞いて目を輝かせる。


「ナナちゃん……! ワタシとっても嬉しい!」


 そう言って、私に抱きついてくる。


 あはは……まさかここまで喜ばれるとは。


 なんて思っていると、シンシアは私のことを見てうんうんと頷く。


「そうだ! ナナちゃんも一緒に特訓に付き合ってよ!」


「……え?」


 嫌な言葉が聞こえて来て、私の表情筋が死ぬ。


 特訓……? 嫌なんですけど……?


 私、寝たいです。


「最強のナナちゃんがいればワタシ、もっと強くなれる気がするし! それに……」


 そう言って、シンシアがにやりと笑う。


「ナナちゃんにはワタシ以上の素質を感じて、色々と試したくなっちゃったし!」


 期待の眼差しを向けてくるシンシアを見て、私はあははと乾いた笑みを浮かべる。


 私、寝たいです。


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