3.自己顕示欲よりも寝たいです
シンシアは逃げていた村人たちを呼び戻して、アツく私の活躍を語り散らかしていた。
「このナナちゃんがドラゴンを蹴散らしてこの村を救ったんです! 彼女はまさしく、我がナザイ村の英雄——勇者なのです!」
私はその光景を隣でぼうっと眺めていた。
別に私をここまで上げてくれるのは嬉しい。
会社では誰も褒めてくれなかったし認めてもくれなかったから、自己顕示欲ほとても満たされる。
だけど……早く寝たい。
私はいつまで、この大勢に見られながら立っていれば良いのだろうか。
「うおおおお! ありがとうナナ様〜!!」
「ありがてえ……ありがてえ……!!」
「あのドラゴンの首を村の看板にしようぜ!!」
村人たちのバイブスが更に高まってくる。
場が温まってきたのはいいけれど、さすがにドラゴンの首を村の看板にするのは物騒すぎないだろうか。
うう……ダメだ。眠たすぎてふらふらしてきた。
別に耐えられないわけじゃないけど、普段こんな動いたりしないから体が悲鳴を上げている。
「ナナちゃん大丈夫? かなり眠そうだけど……」
シンシアが心配そうに顔を覗き込んでくる。
いつもなら大丈夫ですと言って仕事に戻るところだけど、もう私は社会人じゃないんだ。
立派な十歳。子どもなのである。
少しくらいわがままを言ってもいいだろう。
「眠い……」
シンシアはこくりと頷いて、私を抱きかかえる。
そして、村人たちに「以上!」と言ってどこかへ歩き出した。
ああ……久々に誰かに抱っこされてる。
いつぶりだろう……それこそ幼稚園とかそれくらいだろうな。
「ワタシの家で申し訳ないけど……いいかな?」
優しい声音に私は頷く。
少しの間シンシアの腕でうとうとしていると、シンシアの家に着いた。
パタパタと早歩きで進み、ふかふかのベッドの上にゆっくりと下ろしてくれた。
「気にせずゆっくり休んでね」
シンシアの声を聞いて、私はぐっと体を伸ばす。
な、なんてふかふかなベッドなんだ。
ベッドの上で寝たのって何ヶ月ぶりだろう。
家に帰れても、大抵玄関か廊下で寝てたしな。
はあ〜……私を異世界に転生させた神に感謝を。
おやすみ世界!
◆
——ゴン! ゴン!
ぐっすり眠っていると、突如として睡眠を遮るような音が聞こえてくる。
私は顔をしかめながら起き上がり、ぶつぶつと呪詛を吐く。
「まだ少ししか寝てないまだ少ししか寝てないまだ少ししか寝てない」
はあと大きく息を吐き、立ち上がろうとすると目の前にウィンドウが表示された。
————
四時間の睡眠を確認
『睡眠強化』を発動します
合計睡眠時間は5時間です。
それに伴い身体強化+70
新規魔法 《フレイム》を付与しました
————
「たった四時間しか寝られてない……はあ……」
それに新規魔法ってなんだろう。
あれかな……この魔法が使えるようになりました的なやつかな。
というかこのスキル、睡眠時間が分かるからなにげに便利だけどちょっとうざいな……。
寝不足の体に現実を突きつけてくるのは負荷が強い。
それよりも。
「シンシア、この音はなに……?」
ふと隣を見ると、シンシアが慌てた様子で装備を身につけていたので聞いてみた。
「また魔物が出たみたいなんだ! この村は定期的に魔物が湧いてね……ワタシが守っているんだけど……ごめんね起こしちゃって」
シンシアが申し訳なさそうにしながら、立てかけていた剣を手に取る。
多分魔物を倒しに行くんだろう。
よし、ここは私も一緒に行こう。
一人でやるよりも二人でやった方が早く倒せそうだし。
「私も行く。魔物……絶対に許さない」
「本当!? すごくありがたいよ!」
嬉しそうにするシンシア。
喜んでくれて私も嬉しいよ。
それよりも……私の睡眠を邪魔するやつは絶対に許さない。
絶対に○す(可能な限り優しい言葉)
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