20.ギャンブル
作戦ならある。
我ながらかなり格好つけたものである。
しかしながら、生憎と作戦らしい作戦はない。
ただ、一つの賭けであった。
シンシアの素質に賭けた単純な考えである。
「シンシア! 私の言うように動いて!」
「え!? う、うん!」
オーガの弱点部位は本を読んだ時に学んである。
それは首筋。
その部分だけは皮膚が薄く、どんな個体でも致命傷は避けられないらしい。
あとはそこに導くだけ——私の運を持って!
「真っ直ぐ!」
「分かった!」
シンシアが駆け抜けていく。
だが、そんなのすぐにオーガが攻撃を仕掛けてくるだろう。
だからオーガが動くよりも先に指示を送る。
もちろん、でまかせであり適当であり運頼りでしかないが。
「一歩右、そのあとはジャンプ!」
シンシアが指示通りに動く。
オーガが殴ってくるが、それを軽く右に移動して回避。
更に殴ってくるが、それはジャンプして回避。
「す、すごい……! 全部避けられてる……!」
シンシアがパッと嬉しそうに笑いながらも、オーガを見据えて剣を構える。
「なんとなく……なんとなく私も分かってきた……! オーガの動きが!」
刹那、私が言うよりも先にシンシアが動く。
一瞬私は焦るが、しかしシンシアが感覚を掴むのは想定の範囲。
なんならそれを狙っていた。
あくまでこれはシンシアを強くするための戦いなのだから。
「シンシア! オーガの弱点は首だよ! そこを思い切り叩いて!」
「ありがとうナナちゃん!」
オーガが連続して攻撃を放ってくるが、シンシアは軽く回避しながら距離を詰めていく。
そして……シンシアはオーガの目下まで迫った。
「もらった!」
シンシアが叫び、地面を蹴って飛躍してオーガの首に向かって剣を振るう。
刹那、オーガは悲鳴をあげることなく首を切り落とされて絶命した。
シンシアは地面に着地し、倒れたオーガを見据える。
「た、倒せた……ワタシでも倒せた! やったよナナちゃん!」
その後、感極まったのか私に抱きついて大喜びしていた。
「さすがだよシンシア。想像以上の結果」
「全部ナナちゃんの作戦のおかげだよ! 本当にありがとう!」
「ははは……」
まあ、私の作戦はほとんど運任せのギャンブルだったんだけどね。
でももし本当のことを言ったら怒られそうだから黙っていよう。
と、投稿……!お待たせいたしました!!




