17.私は天才
こうして、私たちは早速オーガの巣があるであろう洞窟まで向かうことにした。
徒歩一時間、往復も含めると計二時間かかると考えると……まあ色々と思い出してしまう。
実家から大学までの通学が大体それくらいかかっていた。
本当は大学から近い場所に住みたかったけど、親が許してくれなかったんだよな。
「村を出るのなんて久々だなぁ〜」
森の中を歩きながら、ふとシンシアが呟く。
「やっぱりあまり出ないんだ」
「うん、出るとしても冒険者ランクの昇格任務を受ける時くらいだしね」
なるほどね。
まあ確かに昇格任務はさすがに村を出ないとやれないだろうから納得である。
とはいえ、村を滅多に出ないだなんて窮屈そうで少し同情してしまうが。
なんて思っていると、シンシアが突然立ち止まる。
険しい表情で周囲を見ながら、剣を引き抜いた。
「ナナちゃん。近くに魔物の気配がする」
「すごいねシンシア。魔物の気配だなんて、私何も感じないのに」
そんなことを言いながらも、私も私で警戒を始める。
——ガサッ!
草陰が揺れたかと思えば、目の前にゴブリンが五体現れた。
ゴブリンなんて初めて見た。
やっぱりファンタジー的な異世界には出てくるものなんだな〜。
「ここはワタシがやる!」
そう言って、シンシアがゴブリンに向かって突っ込む。
さすがは村を守っていることもあって、手慣れた手つきでゴブリンを倒していく。
一体、二体、三体。
軽やかな剣さばきで倒す姿は少しばかり見蕩れてしまうところがある。
よし……ここは私もやってみよう。
私は手のひらをゴブリンに向けて、ぼそりと呟く。
「《サンダー》」
刹那、魔法陣とともに放たれた雷は一瞬にして残りのゴブリンを殲滅した。
「ええ!? 今、《サンダー》を使った!?」
驚いた様子のシンシアが駆け寄ってきて、私の肩を揺らす。
「え? うん、どうしたの?」
このサンダーは寝てたから自動的に覚えることができた魔法だから、別に驚くようなものでもないと思うんだけど……。
「《サンダー》ってね、普通は魔法使いとして何年も勉強しないと覚えられない魔法なんだよ!?」
……そうなんだ。
やっぱりあれかな。私の転生特典的なものがやっぱりすごいってことなんだろう。
ただ転生特典の説明なんて現地の人にはできないし、ここは適当に言い訳をしよう。
「ふふん。睡眠学習で覚えられました」
「な、なるほど……やっぱりナナちゃんは天才なんだね」
「そういうこと」
とりあえず私は天才ってことにしました。
とても偉くなった気がして満足です。
今日も皆様の応援のおかげで更新することができました。ギリギリになってしまいましたが、楽しんでいただけたら幸いです。