1.限界社畜な私、最強幼女に転生しました
「う……やっと家に着いた……」
私、四宮奈々の人生は常に睡眠不足と共にあった。
学生時代は親に言われるがまま睡眠を惜しんで勉強し、いざ勉強から解放されて就職してもドブラックで終電で帰ってくる毎日。
なんなら終電すら逃して、「それなら会社でお仕事をして夜を明かそうね」という上司からのお達しで会社に残って残業している。
正直言って勘弁してほしい。
もう睡眠負債が溜まりまくって、常に目の下にはクマができている。
そして今日。私は珍しく定時退社ができて、ふらふらと自宅の扉を開けた瞬間——倒れるように意識を失った。
◆
「ぐ〜ぐ〜……んん……んあ?」
さっむ……あれ、私こんな寒いところで寝てたっけ。
そんなことを思いながら、眠い目を擦ってゆっくりと目を開ける。
「え……? どこ、ここ?」
家で寝ていたはずなのに私は切り株の上で寝ていて、目の前には知らない景色が広がっていた。
恐らく村……だろうか。
ファンタジー風の家屋が建ち並び、ところどころには出店のようなものがある。
私が寝ていた場所は多分、村の広場にある切り株……もとい椅子か何かといったところだろう。
しかし、村のはずなんだけど人々の姿はなかった。
ただ……そんなことよりも。
私はゆっくりと自分の手のひらを見る。
「私の手ぇちっさ! 体も小さい気がするし……まさか、もしかしてこれ異世界転生ってやつじゃない!?」
この展開は最近広告の漫画で死ぬほど見てきた。
間違いなく、私は幼女の姿になって異世界に転生している。
そして、私はふと考える。
これ……もしかしなくても、仕事行かなくてもいいってことだよね?
ということは——もういくら寝たって誰も文句は言わないことってことだよね!!
「よっしゃー! これで今まで溜まりに溜まった睡眠負債を解消できる! 盛り上がってきたー!」
拳をぎゅっと握りしめ、天高くに突き上げる。
その勢いのまま切り株の上で再度寝っ転がり、私は爆睡を決めることにした。
切り株だから寝心地は悪い。
だが、睡眠負債が溜まりまくった限界社畜を舐めるな。
どんな場所でも寝るスキルを持っている私にとっては、この程度どうってことはない。
意識を沈め、いざ夢の世界へ行こうとした刹那のことだった。
「嘘……!? まだ人がいたなんて!!」
突然、焦ったような声音の女性の声が聞こえてきた。
薄く目を開けると、目の前には金色の髪を持つ剣士のような格好をした人がいた。
慌ただしく私の肩を掴んできて、無理矢理立ち上がらせようとする。
「早く逃げて! もう魔物はすぐ近くまで来てるんだよ!?」
「ま、魔物……?」
私は眉をひそめながら、ゆっくりと立ち上がる。
同時に女性剣士は手を引いて走ろうとするが、パッと立ち止まった。
「嘘……もうここまで……」
女性剣士の視線の先には、トカゲのような巨大な魔物の姿があった。
なんだあれ。漫画でよく出てくる魔物だと思うけど、いざ目の前で見ると名前が出てこない。
だが、そんなことはどうだっていい。
「せっかく寝られそうだったのに……なんだあいつ……」
私は女性剣士の手を離し、トカゲの前に立つ。
正直魔物とかよくわからないし、自分よりも大きくて強そうではある。
だけど、こいつを倒さなきゃ私は寝ることができない。
「絶対潰す……」
そう言った瞬間、目の前にウィンドウが表示される。
————
一時間の睡眠を確認
転生特典『睡眠強化』が発動します
それに伴い身体強化+50を付与しました
————
よく分からない文章を見て、私は眉をひそめる。
いやいや、一時間の睡眠を確認ってなんですか?
あの短時間の睡眠じゃあ何も満足できないんですけど。
ともあれ。
転生特典ってことは、これが私の能力なのだろう。
異世界ものの漫画でよくある展開だ。
「よし、お前殺すからなトカゲ」
私はトカゲを指さして、思い切り睨めつける。
「君……! ちょっと!?」
女性剣士が私の肩を掴んでくるが、どうにか振り払う。
いくら止めたって無駄だ。
こいつを倒さないと、私は寝ることができないのだから。
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