決意
夜明け頃、俺は宿の部屋のベランダに出る。
そこからは朝日が昇って見え、身体は朝の冷たい空気を感じる。
昨夜は久々に仙気も使わず、ただひたすらに酒に溺れた。
この二日酔いの頭痛が、昨日の出来事の証だと思うから。
「……そうか、俺は役立たずではなかったのだな」
もちろん、薄々は気づいていた……いや、そう思うことで自分を守っていた。
もし本当に役立たずだと捨てられたら、その痛みに耐えられないと思ったから。
「しかし、そうではなかった。それところが、俺が弱いばかりに皆を悲しませてしまった」
俺が秘境から出れないとはいえ、無事を知らせる方法はいくらでもあった。
それこそ、出て行った弟子達に手紙だけでも渡せば良い。
それをしなかったのは、俺の弱さ故だ。
「……今からでも間に合うだろうか?」
出来るなら、他の仲間達にも会いたい。
謝罪をして、許されるならドランのように酒を交わしたい。
それが無理でも、どんな罵声でも浴びせていいから一目見て話がしたい。
そしてまた、友として友誼を結びたい。
「そのためには、色々とやらねばならないことが多い」
まずは銅級冒険者に上がり、国境を越えられるようにならねばならない。
無限ではないので、路銭の確保なども必要か。
カエデとカイル、ドランにも話を通さなくてはいかん。
そんなことを考えていると、寝ぼけたアルルがやってくる。
「お父さん……ベランダに出てどうしたの?」
「いや、少し涼んでいただけさ。すまんな、起こしてしまったか?」
「ううん、目が開いたらお父さんいなかったから……」
「そうか、そいつはすまなかったな」
彼らを探すとなると危険が多い。
ギルマスが情報を持ってないということは、何処か僻地にいるかもしれない。
下手すると大陸から出ていたり、ここから遠くにいるかもしれない。
そんなところに、アルルやサクヤを連れて行く……カエデとカイルに、二人を預けるべきだろうか?
「お父さん……」
「ん?」
アルルが、俺の服の端を掴んで不安そうに見上げてくる。
「ど、どっかいっちゃ……やだよぉ」
「すまん、不安にさせてしまったか。そうだな……少し遠くに行く必要があるかもしれない。アルルは、ついていきたいか?」
「わたし、ついていきたい!」
「ここなら安全だし、カエデやカイトもいるが……前も言ったが、もうここには戻ってこないかもしれない」
「お父さんと一緒! カエデお姉ちゃんやカイトお兄ちゃんもいるけど……お父さんと一緒がいい!」
そう言い、ぎゅっとしがみついてくる。
この子を拾った時とは状況が違う。
自我が芽生えて色々な知り合いが増えても尚、俺についていきたいというなら止めるのはダメだろう。
「わかった、なら一緒に行こう。アルルがいてくれると、俺も嬉しいしな」
「ほんと!? ……わたし、邪魔じゃない?」
「ああ、今のはアルルの意思を確かめただけさ」
すると、俺の尻が何かで叩かれる。
振り返ると、サクヤがムスッとした表情で座っていた。
「おいおい、何をむすっとしてる?」
「グルルー」
「サクヤちゃんが、自分を勝手に置いて行くなって……お父さんについて行くって」
「そうか、お前もついてきたいのか……仕方ないなぁ」
やれやれ、まだまだ親離れはできないらしい。
俺がわざとらしくニヤニヤすると、サクヤが歯をむき出した。
「アォン!」
「甘いな!」
「グルッ!?」
飛びかかってきたサクヤを部屋の中に放り投げる。
そのままベッドに行き、取っ組み合いを始めた。
「ハハッ! これではまだ独り立ちはさせられないか!」
「グルルッ……!」
「えへへ、サクヤちゃん嬉しそう」
そして一頻り遊ぶと、サクヤが俺の背中に寄りかかる。
そして、尻尾を俺の太ももにペチペチしてきた。
「ハフハフ……グルルッ」
「はいはい、悪かったよ。お前もついてくてくれたら嬉しいさ」
「アォン」
「えへへ……サクヤちゃん、それでいいって」
「では、予定通り三人で行くとするか」
最初はただ師匠の遺言通りに旅をし、サクヤを育てるつもりだった。
だが、 今は違う。
アルルを責任持って育て、仲間達に会うためにも冒険者ランクを上げていく。
そして、失った夢を叶えよう——白銀級冒険者になるという夢を。




