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魔力なしの冒険者、15年の時を経て最強になる~相棒と娘を連れて、弟子達と昔の仲間に会いに行く~  作者: おとら@9シリーズ商業化


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弟子の成長

 翌日の朝、朝ご飯を食べ終わり、俺は三階の広場にてサクヤとアルルと遊んでいた。


 この宿には従魔用スペースがあるとは聞いていたが、中々にいい場所だ。


 三階が一つの部屋となり、広い空間で遊ぶことができる。


「アルル、ボールを投げてごらん」


「うん! サクヤちゃん、いくよー!」


「アォン!」


 アルルが投げたボールにサクヤが飛びつく。

 追いかける用のボールだが、その身体能力によりサクヤはキャッチしてしまう。


「いや、多分……それは追いかけて取ってくるやつだろ」


「グルッ?」


「ふぇ?」


 二人が不思議そうに、俺に視線を向ける。

 どうやら、特に気にしてないらしい。


「いや、お前達が楽しいならいいんだ」


「アォン!」


「もう一回? うん! わかった!」


 俺はそれを眺めつつ、優雅にコーヒーを飲む。

 すると、階段を誰かが物凄い勢いで上がってくる。


「にいちゃん!」


「どうした? こんな朝っぱらから」


「オレと戦ってくれ!」


 俺が返事をしようとすると、後ろからカエデがやってきて……カイトの頭を叩く。


「朝からうるさいのよ」


「いてぇよ!?」


「まずは主語を言いなさいよ。兄さん、昨日の夜に買い物をしたことを話したの。そしたら、すぐに宿に行こうとしたから朝まで待ちなさいって」


 ……それは英断だったな。

 夜に来られたらアルルを起こしてしまう。

 カエデは相変わらずしっかり者のようだ。


「ふむふむ。それで、カイトはどうした?」


「カエデばっかりずるいぜ! というわけで、オレにも稽古をつけてくれ!」


「いや、昨日は買い物をしたのだが」


 すると。カエデがため息をつく。


「はぁ……こいつ、兄さんに構って欲しいのよ」


「なっ!? ち、違うし!」


「違うのか?」


 理解したので、俺も少し楽しくなってきた。

 なるほど、大きくなったが可愛いところがあるな。


「にいちゃん……笑いを堪えてるのバレてるからな?」


「おっと、しまった。悪かった、お詫びに稽古はつけてやるから」


「ほんとか!? やったぜ! 先に冒険者ギルドの鍛錬場に行ってる!」


 そう言い、嬉しそうに階段を下りて行った。


「兄さん、アルル、サクヤ、騒がしくてごめんね」


「いや、いいさ」


「わたしは楽しいよ!」


「アォン!」


「ふふ、ありがと。それじゃ、あいつが不貞腐れる前に行こ」


 その後、四人でカイトが待つ冒険者ギルドに向かう。

 中に入ると、カエデに視線が集まった。


「お、おい、カエデだぜ。そろそろ、銅級に上がるって話だ」

「さっきはカイトもいたな。何やら、息を巻いていたけど」

「というか、あのおっさんは誰だ?」

「珍しい魔獣を連れてやがる」


 ……ほう、二人は既に名のある冒険者のようだ。

 それに、ランクアップも近いとみなされるほどの。


「カエデ、有名人だな」


「や、やめてよ、兄さん。それに、有名なのは……」


「兄貴! こっちこっち!」


 ギルドの右端にある扉の前にカイトがいて、手招きをしていた。


「も、もう、目立ってちゃって」


「迷惑にならないように、さっさと行こうか」


 そして中に入ると、そこは広い空間になっていた。

 あちこちで鍛錬をしている者達が目に入る。

 カイルが場所を取っていたようなので、そちらに向かう。

 カエデにアルルとサクヤを任せ、俺はカイトと対峙する。


「へへっ、一年ぶりかな」


「ああ、そうだな。どれだけ成長したのか、見せてもらおう」


「この日のために頑張ってきたんだ!」


 そう言い、構えを取った。

 その立ち姿だけで、成長したのかわかる。

 以前よりは隙がなくなっていた。


「いつでもいいぞ」


「それじゃ——いくぜ!」


 獣人特有の身体能力でもって、一気に間合いを詰めてくる。

 右の拳が繰り出されるのを、右手でいなすように弾く。


「うおっ!?」


「甘い、まだ腰に力が入ってない。腕ではなく、体全体を使って拳を繰り出せ」


「お、おすっ!」


 再び拳が繰り出され、先程より威力が上がる。

 だが、まだまだ鍛錬が必要だろう。


「どうした? 俺の防御を崩してみろ」


「ウ、ウォォォォ!」


 連続して拳が繰り出されるが、その全てを片手でいなしていく。

 そして空いてる手の方で、隙だらけの腹に拳に叩き込んだ。


「ゴフッ!?」


「防御も甘い」


「く、くそっ……全然当たらねえ!」


 カイトは犬獣人で、はっきり言えば獣人族の中では弱いと言われる部類だ。

 獅子族のような力もないし、狼族のような俊敏さもない。

 犬族は獣人界では迫害の対象で、カイトもそうだったらしい。


「……もう終わりか?」


「ま、まだまだァァァァ!」


「その意気だ」


 再び、連続攻撃を繰り出す。

 同じように、片手でいなしていく。


「もっと早く!」


「くぅぅ……!」


「お前の武器は速さだ! 力が足りないなら手数で補え! 攻撃する隙がないほどに!」


「ア……ァァァァ!」


 徐々に速さが増していき、片手でいなすのが難しくなってくる。

 そして……その拳が、俺の顔を掠めた。


「やっ」


「気を抜くな」


「ゴハッ!?」


 腹に一撃を入れると、カイトが地面を転がっていく。

 さて、以前ならこれで起き上がれなかったが。

 すると、カイトがふらふらしながらも立ち上がる。


「ま、まだまだ……」


「いや、よく立ち上がった。そして、よくぞ当てた……カイト、強くなったな」


「に、にいちゃん……へへっ、当たり前だろ」


 弟子の成長というのは嬉しいものだ。


 俺も負けてはいられないな。



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