表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力なしの冒険者、15年の時を経て最強になる~相棒と娘を連れて、弟子達と昔の仲間に会いに行く~  作者: おとら@9シリーズ商業化


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/42

偽善でいい

……自分に腹がたつ。


このタイミングでくることぐらい、少し考えたらわかることだ。


サクヤが貴重なことも、あの子の髪が珍しいことも。


それを誰かが狙うということを。


だが、反省は後だ……まずは、こいつらを片付ける。


「サクヤ、良くやったな」


「ククーン」


サクヤの尻尾は垂れ下がり、顔もしょんぼりしていた。

どうやら、アルルに怪我を負わせたことを気にしている様子。

俺は先程の爆発音と、周りの状況を見て何となく察する。


「おそらく、氷と炎がぶつかって爆発したか」


「アオーン……」


「原理はわからないが、冷たい物に熱いモノがぶつかると、爆発を起こすことがあるとか。サクヤは、それを知らないから無理もない。今後、覚えておくことだな」


「アォン!」


サクヤが頷いたので、頭をひと撫でして前に出る。

交代するようにサクヤがアルルの元に行くのを確認し……倒れ込んでいる相手を睨みつける。

おそらく、暴風で吹き飛んだのだろう。


「おい、うちの子に何の用だ?」


「そ、そいつから手を出したんだ!」


「うちの子が、そんなことをするわけがないだろうが……だが、もしそうなら然るべき場所に来てもらおうか。言っておくが、俺は一向に構わないぞ?」


問いかけると、男達の顔に焦りが浮かぶ。

どうやら、叩いて埃が出るのはあちらの方みたいだな。


「だ、旦那! どうしますか?」


「くっ……ここまで来てひけるか! 魔法部隊、奴に魔法をあびせろ! そいつは魔法が使えない筈だ!」


「そうでしたな! 石級冒険者程度が消えても誰も気にしない!」


「なるほど、冒険者ギルドにいた奴から聞いたのか……まあ、いい」


仙気を高め、拳に集める。

そのまま待っていると、準備ができたらしい。

火の玉が一斉に襲いかかってくる。


「これで消し炭に……」


「セァ!」


俺は素手で、その火の玉をかき消す。

何処にも飛ばすことなく、弾けさせた形で。

それを見た男達は、呆気にとられていた。


「……はっ?」


「だ、旦那……素手で魔法を消しちまいました」


「ま、まぐれだ! 火属性は破壊に優れた属性、それを傷一つなく消すなど不可能だ! もう一回放て! 何のために高い金を払っていると思う!」


先ほどより、多くの火の玉が襲いかかる。

あれを全部打ち消すのは面倒だな。


「何度やっても同じだ——仙気解放」


次の瞬間、俺に火の玉が直撃していく。


「ははっ! 食らったぞ!」


「へへっ、ざまあみろ!」


……少し覚悟はしたが、この程度か。

以前の俺だったら、これで消し炭になっていたな。


「お、お父さん!」


「アォン」


「へっ? お父さんなら大丈夫? で、でも……」


「アルル、俺なら問題ない」


両手を打ちはらい、無事を示すために煙を吹き飛ばす。


「お父さん!」


「ば、ばかな! 直撃したはず!」


「この程度なら問題ない」


さて、蹴散らすだけなら簡単だ。

そろそろ気づいてもいいと思うが……。

その時、タタタッと足音が聞こえてくる。


「こっちです! 爆発音が!」


「わかった! ……お前たち、何をしている!?」


それは、俺が望んでいたものだった。

おそらく、市民が警備員を呼んでくれたのだ。

警備員は俺と奴らを交互に見て……あちら側に近づく。


「君達、少し来てもらおうか?」


「……うるせぇ」


その瞬間、俺は動き出していた。


「ん? 言い訳なら後で聞こう」


「うるせぇって言ってんだよ! ……なに!?」


警備員に突き出したナイフを《《腹で受け止める》》。

しかしナイフは俺に刺さることなく、ナイフの方が折れた。


「これで殴る理由ができたな——ふんっ!」


「ぐはっ!?」


腹に一撃入れると、旦那と呼ばれる男は蹲る。

それを見て、他の男達が逃げようとし始めた。


「さて、警備員さん」


「な、なんでしょう? いや、それよりもお腹は……」


「これくらい平気ですよ。こいつら、全員ぶっ飛ばしていいですかね?」


「え、ええ!」


「よかった……もう、我慢の限界だった。お前ら、俺の可愛い娘達を襲ったことを後悔させてやる」


俺は逃さぬように脚に気をまとい、連中より先回りして路地通路を塞ぐ。

そして、先頭の男に一撃を入れる。


「ゴフッ……!」


「逃すわけがないだろうが」


「じゃ、邪魔すんな!」


「沈んでろ」


そのまま通路に来ようとする男達に、拳を叩き込んで沈めていく。

残ったのは、奴隷商人という男だけだ。


「なっ!? 速い!? あの距離を一瞬で詰めるだと!? 風魔法の使い手だったのか!?」


「いや、お前の言う通り俺は魔法は使えん。だから、縮地と仙気を応用した高速移動をしたのさ」


縮地、それは『仙術によって地脈を縮め、距離を短くすること』と言われている技だ。

一瞬に移動することから、地脈から地脈に瞬間移動したように見えることからついたとか。

正確には仙気を使い初速で最高速度に到達し、人の目に映らない速さで移動しただけだ。


「仙気……? 何だ、それは」


「別に貴様にそこまで説明する義理はない。さて、うちの娘を囮に使って逃げたらしいな?」


折角襲ってきたんだ、後顧の憂いはなくしておこう。

その方が、アルルも安心するだろう。


「そ、そうだ! あれは元々俺たちが買ったんだ! それを取り返してなにが悪い!」


「ならば、正式に俺に言えば良かった。何故、わざわざ俺がいないときに襲った?」


「そ、それは……」


「そもそも奴隷は非合法だ。まあ、あの子は俺の娘だ。言われても返す気など毛頭ないが」


「……くそがァァァァ! この偽善者が!」


「偽善者でなにが悪い!」


殴りかかってきた相手の手を合わせ顔面にカウンターを放つ。


「ぐはっ!」


「俺は別に偽善者でいい」


俺は師匠に拾われて救われた。

あの人にとっては何の得もないのに。

それが偽善であろうと、俺が救われたのは事実だ。

すると、タイミング良く他の警備員達もやってくる。

俺はその場を彼らに任せ、アルルの元に行く。


「大丈夫か?」


「ご、ごめんなさい! わたしのせいで……」


「前も言ったろ、別に謝ることはない。そういう時は、ありがとうって言うんだ」


「……あ、ありがと……お父さん、わたしを助けてくれて……ァァァァ!」


すると、アルルが堰を切ったように泣き出す。


俺は頭を優しく撫で、アルルを強く抱きしめる。


君はここに居てもいいと、その痛んだ心に刻むために。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ