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魔力なしの冒険者、15年の時を経て最強になる~相棒と娘を連れて、弟子達と昔の仲間に会いに行く~  作者: おとら@9シリーズ商業化


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仙気

昼飯を食べてなかったので、手頃な店に入りそこで取ることにした。


俺は甘辛肉丼を頼み、サクヤは骨つき肉、アルルは肉丼を頼んだ。


すでにランチタイムは過ぎていたので、すぐに料理がやってくる。


「さて、まずは食べるとするか」


「わぁ……お肉いっぱい!」


「ハフハフ……!」


二人は待ちきれないのか、そわそわする。

それを見てると、なんだか微笑ましい。


「はいはい、では……いただきます」


「いただきます!」


「アォン!」


二人が食べるのを確認し、俺も肉丼を口に放り込む。

その瞬間、口いっぱいに幸せが広がった。

何故なら、久々の白米だったからだ。


「うめぇ……甘辛のタレに、米と肉がよく合う」


「お、おいちい……うぅー!」


「おいおい、勢いよく食べ過ぎだ。ほら、水を飲みなさい」


コクコクと頷き、俺が手渡した水を急いで飲む。


「……ぷぁ〜、あ、危なかったです」


「クク……誰もとらないから、ゆっくり食べるといい」


「わ、笑われちゃった……うんっ!」


俺もかきこみたいのを我慢して、ゆっくり食べることにする。

子供というのは、大人の真似をするものだからな。

……サクヤの食べ方がアレなのは、種族的に仕方ないと思おう。

決して、俺の教育のせいではない。

すると、俺の心の声が聞こえたのか、サクヤが見上げてくる。


「アォン?」


「いや、呼んでないから。大丈夫、好きに食べろ」


「グルル!」


口いっぱいを汚しながら、サクヤが骨つき肉にかぶりつく。

やれやれ、後で拭いてやらないと。


「お父さん! わ、わたしも、口周り汚れちゃった!」


「おっ、ほんとだな。さっきまで綺麗に食べてたのに」


「あっ、えっと、その……」


「まあ、いい。ほら、口を閉じて」


備え付きの紙を使い、口の周りを綺麗にしてあげる。


「えへへ……お父さんみたい」


「いや、お父さんだが?」


「そ、そうでした……」


「ほら、続きを食べなさい」


大部、警戒心は取れたかな。


この子が、なんの気兼ねもなく笑えたらいい。


そんなことを思いつつ、再び肉丼を食べるアルルを俺は優しく見守るのだった。






食事を終えたら、そのままその店で休憩を取る。


幸い客も少ないし喫茶店でもあるので、のんびりするにはもってこいだ。


なので、予定通りにアルルに文字を教えることにした。


「この依頼はゴブリン退治だな」


「この文字がゴブリン……あの緑の?」


「ああ、そうだ。ゴブリンを三匹倒せって書いてあるな」


俺は一から十の文字を書き、それをアルルに見せる。

一個一個単語を覚えていき、名称と数字さえわかれば後は繋げて読むことができる。

……これも、昔の仲間が教えてくれたっけ。

あいつは優しくて綺麗で、俺の憧れでもあった。

……今頃、結婚でもしているだろうな。


「えっと、これが一で、これが二……お父さん?」


「……うん? すまんすまん」


「教えるの大変?」


「いや、そんなことないぞ。よし、続きをやろう」


いかんいかん、今はこっちに集中だ。

俺とて頭がいいわけではないのだから。

その後、一時間が経過する。


「クワァ……」


「あっ、サクヤちゃん眠そう」


「んじゃ、この辺りにしとくか」


大体の必要な単語は紙に書いて渡してある。

後は反復練習と、文字に慣れていけばいい。

幸い言葉はしっかりしてるし、そんなに難しくはないだろう。


「お父さん、ありがと……あの、その……」


「おう、また明日やろうな」


「……うんっ!」


すると、満面の笑顔を見せる。

良かった、無理矢理にでも字を覚えておいて。

あいつに『いつか使うことになったらどうするの?』って覚えされられたな。

会計を済ませ店を出たら、予定通りに依頼をしに行く。


「お父さん、何からするの?」


「あぁ、下水道掃除だ。人が使った生活水が行き着くところだな」


「……下水道」


「そっか、わからないかもな」


下水道は大きな街とかにしかなく、村とかは井戸水を使っていたはず。

俺はわかりやすいように、アルルに説明する。

それぞれの家や建物には水を通す管があり、そこから下水道に流れて行くことを。


「えっと、みんなが使った汚れた水が集まるところ?」


「まあ、そういう感じだ」


「グルルー……」


サクヤが、あからさまに嫌そうな顔をする。

鼻が俺たちよりも効くので、仕方ない部分もあるな。

地図に従い、ひと気のない場所にやってくる。

近くの階段を降りると、その入り口から臭いが漂ってきた。


「あちゃー……これは、サクヤには厳しいかもしれない」


「ククーン……」


「サクヤちゃん、鼻が曲がりそうだって」


「だよなぁ……仕方ない、ここは俺一人で行くとしよう」


サクヤを一人にはできないし、当然だがアルルもだ。

そうなると、俺が一人で行くしかない。


「お、お父さん、大丈夫?」


「ああ、すぐに帰ってくるさ。サクヤ、アルルのことを頼んだぞ?」


「アォン!」


俺は二人に見送られ、下水道への道を歩いていく。

《《魔石》》という魔法を込められる道具を使い、光魔法のライトを発生させる。

魔石は特殊な鉱山から取れる鉱石で、なかなか市場には出回らない。

ただし師匠が山ほど持っていたので、俺はそれなりに持っていた。


「いや、本当に師匠様様ってやつだ。魔法が使えない俺は、これがないと不便で仕方ない」


さて、下水道の掃除は実は初めてだ。

石級の仕事だが、《《魔法が使えないとこなせない依頼だったから》》。

魔法が使えない俺は、いつも置いていかれた。


「だが、今の俺なら……出たか」


「プニプニ」


「プニー」


指定害獣の一つ、青い透明な液体が固まった生き物……スライムだ。

こいつらは汚い物を好み、下水道やゴミ箱の近くで発生する。

それによって下水が詰まり、臭いが上まで来てるってわけだ。

ちなみに撲滅は無理なので、定期的に減らすしかない。


「こいつらは物理攻撃をすり抜け、魔法なら瞬殺というアンバランスな魔獣。つまりは、俺の天敵とも言える相手だが……」


「フニ!」


襲いかかってくるスライムに対し、俺は拳を繰り出す!


「プニプニ……」


「まあ、そうなるわな」


俺の手はスライムの中へと入り、食われた形になる。

体長一メートルを超えるスライムは、そのまま俺を飲み込もうと前進してきた。

俺は慌てずに、丹田を意識し気を高める。

そして拳にまとい、その気を解放する。


「解放——仙気発勁!」


「プニッ!?」


内側から気が弾け、スライムが粉々になった。

そのまま再生することなく、ただの液体になる。

そして残ったのは、核と言われるスライムの討伐証拠だ。

それを魔法袋に入れたら、深呼吸をする。


「ふぅ……一つ、トラウマを克服したな」


初めて出会った時は、情けなく仲間達に助けられたっけな。

……俺は、今の今までそんなことも忘れていたのか。


「くそっ、我ながら女々しい奴だ。こんなんじゃ、師匠に笑われてしまう」


「フニ!」


「プニー!」


「さあ、かかってこい」


俺は仙気でもって、スライム達を駆逐していく。

大分数を減らしたので、下水道の奥へといってみる。


「……よし、詰まってないな。とりあえず依頼は10体以上だったし、そろそろ戻るとしよう」


その時、俺の耳に何かが聞こえた。


聞き間違いでなければ、それは臨戦態勢に入ったサクヤの鳴き声だった。


俺は踵を返して、急いで出口へと向かうのだった。


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