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私と妖精の物語  作者:
1/18

妖精との出会い

GW最終日

ほのぼの現代風(平成)ファンタジーです。妖精が出るので。

今日は複数回更新予定です。

短編ではありませんが短めのお話にする予定です。

 時は平成。

 私は日本の田舎に住む20歳のデジタルではなくアナログの少女漫画家の女。

 高野鈴子。


 この時代と年齢でまだアナログなのは何故かって?

 機械が苦手なのだ。

 壊れても自分で修理できないものは苦手。


 祖父母が亡くなってその田舎にある、そこそこ広い二階建ての家をただ同然で貰えた。


 近所ではゴスロリを着る都会から来た変な女だと思われてると思うけど、気にしない。


 ちなみに部屋が余ってるから下宿のようなこともしてる。


 同居人はあまり売れてない小説書きの女性。

 名前は中島ひなた。

 たまに家賃が払えないというので、その時は体で払ってもらってる。


 もちろんアナログ原稿のアシスタントであり、いかがわしいことではない。


 そんなアナログ人間の私ではあるが、まさかのこの夏、奇跡の体験をする。


 その年の夏は、記録的な猛暑であり、

 その暑さが見せた幻かと思ったら、ガチだった。

 平成の日本の田舎で妖精を見た。


 私は日傘をさして、田舎の農道を歩き、駄菓子屋へアイスとラムネを買って帰る所だった。

 せっかくゴスロリを着てるのに、クーラーボックスは不釣り合いだ。

 でもアイスを買ったので仕方ない。


 ミーンミーンとセミの大合唱に、コロボックルみたいに大きな葉っぱの傘を持ち、葉っぱ色のワンピースを着た、見た目は愛らしい幼女の小人。

 ━━が、道に倒れてる。



「小さい……小人?」


 私の小さなつぶやきが聴こえたらしい、小人は瀕死のていで私を見上げた。


『に、ニンゲン……。私が見えるんですね、た、助けて欲しいのですぅ、私は無害な妖精ですぅ』

「妖怪!?」

『よ、う、せ、い! フェアリーですぅ、そんなオドロオドロした存在でもないし、墓場で運動会もしませんよぅ』


「でも、黄色と黒のちゃんちゃんこの少年は人間の味方をしてくれるありがたい存在だったような」


『私も元気になれば人間の役に立つことができます、あなたの部屋にはクーラー、エアコンなどはありますか?』

「ありますけど」

『どうか、あなたの涼しい部屋に連れていってください、そのうち恩を返しますので』

「マジで?」


『はい! さあご覧ください、そこの田んぼを。ザリガニが茹で上がって死ぬ暑さですよ。どうか慈悲を施してください』


 確かに田んぼには暑さで茹で上がったらしいザリガニが死んでる。



 私は仕方ないなと思いつつクーラーボックスにアイスとラムネと水筒があるから、ひとまずアイス食べる?と、訊いてみた。


『あ、ありがとうニンゲンのお嬢さん、助かります』


 水筒の蓋にアイスの先っぽを入れて渡したけど、アイスは凄い速さで溶けるから妖精も必死で食べた。

 私も残りを食べた。


 それから何故か触れる妖精を抱えて自宅へと急いだ。めいっばいの早足である。

 そして思い出した……同居人の存在を。


「ねぇ、私の家には下宿人がいるけど、大丈夫そう?」

『私のことは純粋な心を持つものにしか見えないはずなので大丈夫のはずですぅ』


 わあ!

 私って今、妖精にピュア認定された!!


「わぁ~〜」

『二十歳過ぎてゴスロリ着てる成人女性は、伊達ではなかったですぅ』

「今私、ディスられた?」


 この妖精、日陰に置いて行こうかな?

 そのへんの川っぺりとか。



『いいえ、褒めました! 褒めましたよ! あなたには確かにピュアな波動を感じますぅ!』


 ピュアな波動とは何かな。


 まあ、こちとら少女漫画家だし、メルヘンな感じの作品も描いているから、多少はそんな要素もあるかもしれないけど。


 * * *

 そうこうしてる間に帰宅した。


「あ、お家ついたよ」

『おお、クーラーッ、エアコンッ』


妖精は私の腕の中から家の2階の窓に向かって手を伸ばす。


「妖精なのによくそんな文明の利器が分かるわね」


『長く水の中で寝て過ごしてましたが、たまに起きてはニンゲンの生活を見たりしてたのでぇ』

「あなた、どのくらい生きてるの?」


『人がちょんまげ結って刀を振り回してる時代にはもういました』

「そ、そんな時代から……」


 鍵を開けて家に入り、階段を登って2階にある自室に入った。

 ここはクーラーつけっぱのまま外に行ったから、入った瞬間ひんやりした冷気が肌に触れる。


『あぁ~、冷房サイコー』


 変な妖精……。


「ねえ、あなた水中で眠れるなら水の中にいれば涼しかったんじゃない?」

『あのザリガニの無惨な姿を見たでしょう? おちおち寝てもいられなかったですぅ』

「そう言えばそうだった」


 私は洗面器に水を入れて、食事時などに使うテーブルの上にタオルを添えて置いた。


『これに入ってもいいと?』


 妖精は洗面器を指指さして訊いた。


「そうですけど」

『あー、涼しい、やはりあなたは心の清い部分があります』


「ふーん、じゃあ私はシャワー浴びてくるから、しばらく涼んでていいですよ」

『はい、ありがたいですぅ』


 私は残りのアイスを冷蔵庫に入れ、シャワーを浴びた。


 風呂上がり、キャミワンピを着て部屋に戻ったら、妖精はもう洗面器から出て、タオルにくるまっていた。


「まだいた、ほんとにいたわ」

『な、夏の間は何卒! 何か役に立てます!』

「その小ささで」



 妖精はふと、私の机の上を凝視した。


『あれ、あちらの机の上にあるのは漫画原稿では?』

「漫画家ですから」


『しかも今どき紙! デジタルではなくアナログ!』

「うっさいな。機械は苦手なの」

『スクリーントーン代もかかるでしょうに、しかもこんな田舎でよくアナログを』


 この妖精、スクリーントーンまで知ってるとは。

 伊達にサムライの時代から存在してないわね。

 ちなみにスクリーントーンとは、影や色をつけたい箇所にヘラなどで圧着して貼る、シールのようなものだ。

 


「トーンは通販もあるし、何なら都会に住む弟がトーン送ってくれることもあるし」


『なんてよくできた弟……っ』

「……あなた、消しゴムかけくらいできるの?」

『頑張りますぅ。でもデジタルなら下描きレイヤーの非表示で一発ですよ?』


 こ、こいつデジタルの漫画のことまで知ってる。


「それだと〜、他所の人間のデジアシに頼んであなたの出番はなくなるけど?」


『頑張りますぅ、コロポックルの名にかけてっ』


 こうして、変な妖精と私の奇妙な同居生活がはじまった。


 てゆーか、やはりコロポックルなのか〜〜。











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― 新着の感想 ―
[一言] 出遅れた~ >二十歳過ぎてゴスロリ着てる成人女性は、伊達ではなかったですぅ このセリフを読んだ瞬間、南側に向けた黒い鉄板で磔にしてデカい虫眼鏡で集光の刑を思い付いた私はピュアでは無いよう…
[一言] おぉ~新作です。 ギャグ満載?!のあのゲ〇〇ですかな?あの漫画は、初期のはチョー不気味で、見られませんでした(苦笑)ほんと、あの手は苦手で、、
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