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サルの計略

 富樫と名乗るその人物は、誰かに語りたくてたまらない様子だった。もしかすると、あまりの落ち着きぶりにそう感じない人もあるだろうが、私には彼自身の散らかった心を整理したがっているように見えた。私はお節介から、彼の話を聞いてやることにしたのだ。最初に言っておくと、奇妙な話だ。

離陸してしばらくすると彼は口を開いた。

「そこまで言うなら」がっしりとした体格に見合わない小動物のような声だ。彼は窓の景色を眺めていた。

「笑い話と思って聞き流してほしいんすけど」彼は誰に語るともなしに語り始めた。



「ごきげんよう、人間諸君。」

サルとクマが腕を組んで宙に浮いている。ちょうど目線の高さが合うところで静止した。三人は各々の武器を構えた。

「今すぐそのイヌから離れろ。殺されるぞ。」

三人は困惑した。これから殺し合いをする相手から忠告を受けたのだ。殺される?護衛対象に?

三人の様子を見ながら、サルは浮きながら肘枕をして寝ころんだ。クマはあぐらをかいた。自室でくつろいでいるかのようだ。

「その反応も無理からぬこと。」「時間があれば説明してやれるんだがな。」

背後から線香の香りと、疑いようのない殺気。

抜刀する時間も、振り返る時間もない。本能的に身体が動いた。居合の構えから腰を捻り、鞘の刺突を叩き込む。

必殺の手応えを感じると同時に、視界が闇に包まれた。



 今日の太田さんの話は一味違った。突拍子もない話に変わりはないが、なんというか、自身の体験談のようなリアリティと迫真性があった。

「マスターよぉ、ここからが不思議なんだが」

さっきから太田さんは坂道から転げ落ちるように喋りっぱなしだ。私はいつも通り聞いていた。

「俺たちはさっきまで舐め腐った態度のサルとクマに対峙していたんだが、突然、瞬きくらいの暗転があってよ、気づいたら」

そこで話を区切ると、太田さんはグラスに残ったカクテルを仰ぎ飲み、炭酸水を注文した。話の小道具として使うようだ。

「俺たちと対峙してたんだよ。」タンブラーを掴むと、空のグラスの周りをぐるっと半周させた。

「はあ、」理解に苦しみつつ、私はそれとなく空のグラスを下げた。

「正確には」

「死体になった俺たちと。」



「イヌ相手に相打ちかぁ!」

クマの大きな背中。

「あれをかわしただけのことはあります。」

サルの真っ赤な尻。

「…え」

助かったようだ。それ以外はなにひとつ理解できなかった。目の前の死体――脇腹や肩、首など、致命的な部位がばっくりとかじられていた――は次第に色を失い、塵と消えた。

「彼らを捨て駒として使うとは。人間は見る目がありませんね。」

「捨て…?」

サルは寝ころんだまま、首を回してこちらを見た。

「死にたくなかったら協力しなさい。」

イヌはため息をついた。

「君たち、さっきのは手違いだ。すまない。今すぐここを去れば危害は加えない」

「任務は完了したんだ。」

最後までお読みいただきありがとうございました。本作は3話で終わらせる予定だったのですが、終わらせることができませんでした。ということで、登場人物たちには話数外労働をしてもらいます。次回予告をどうぞ。

「まあ、名前貰ったし。今回から後日談&回想形式になったからな。なあ?」「生存は確定っすかね。とりあえず。生きて登場さえ出来れば、文句はないっすね。もちろん、書き方には色々言いたいことありますけど。」「時系列を無暗に前後させるのは読者に優しくない。」「うん。確かに。あれ、そういえばお前まだ」「…」「まさか…」

はい。ありがとうございました。次回もお楽しみに!

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