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転生魔王とこじらせ喪女聖女はかく語りき  作者: 蔵前
その二 完全に腐ってやがる(魔王談)
9/15

聖女に突撃せし

夜更新なのに昼間な話です。

 翌日の私は朝一番に南の塔の聖女を突撃した。

 彼女には予知能力が備わっていると聞いている。

 しかし彼女に自分の予知夢の裏付けを頼んでみれば、私が見た予知夢なんか一切見えないと私は彼女に笑い飛ばされただけであった。


「あなたの頭にこそ霜焼けが出来たんじゃない?聖女の能力もない数合わせは余計な事をしないで大人しくしてなさいよ」


「はああ?聖女というネームバリューだけで当たりもしない占い屋の癖に!!」


「出ていけ!!氷の棺桶女が!!」


 追い出された私は西の塔に行き、遠見が出来る彼女の魔法に縋った。

 けれども、彼女の遠見では魔王の軍勢など二十キロ先でも見えないという事だ。


「半径で二十キロ?え?直径二十キロの円?魔王軍なのよ!!せめて半径百キロぐらいの円内を見なければ意味が無いでしょう!!」


 思わず言った言葉によって、私は西の塔からも叩き出された。

 西の聖女の魔法限界は、直径二十キロ程度も実はなかったらしい。

 そこで東の塔に走ったが、そこでは門前払いだった。


 南の聖女と西の聖女の使いの方が私の足よりも速く、さらに言えば、自分を一番に訪ねなかったとヘソを曲げたようなのだ。


「何よ!!皆して!!私達が死ぬだけなら私達の力不足であり怠慢だったその咎で済むけど、罪のない人達にそれをおっかぶせたらいけないでしょう!!」


 東塔の門扉の前で地団太を踏む私に、東の聖女からの返答があるはずもない。

 私は抑えられない衝動のまま門扉の脇の塀を蹴り上げ、門兵に咎められる前に踵を返して自分の住まいである北塔へと走った。

 私はやらねばならない。


 何を、となるが、私が物を凍らせる力があるならば、私にできる罠を砦を囲むように施せるだけ施すべきなのだ。


 私は北塔に戻るや塔の資料庫を漁り、幾つかの地図を手に入れた。

 ガリビキアそのものの見取り図。

 ガリビキア周辺地図。

 そして、ガリビキア砦だけでなく他国と地形も書き込まれた世界地図。


 それら戦利品を全て開いてベッドに乗せ、自分もベッドに転がった。

 聖女として崇められているからか、私のベッドは大きく幅がある。

 子供が大きな絵を描く時に床に転がるようにして、私はベッドに転がり魔王の軍勢に対抗する策を描こうとしているのだ。


「ええっと、私には霜柱を巨大にした落とし穴ぐらいしか出来ないけど、どこに仕掛けたら有効なのかな。ってゆうか、能力的に出来そうだけど、水を凍らす能力でそんなのしたことないから不安だな」


「俺が不安を解消してやるよ。足りないとこは埋めてやる」


 私は声を失った。

 ついでに自分の体を自分で動かす自由も。

 私が突然の声に驚いたその瞬間に、急に出現した大きな体によって私はベッドにうつ伏せで押しつぶされていた、という状態になったのである。


「ほら。俺の休憩時間は短いんだ。股を開け」


「な、ななな、何を言っているの。そして、何をしているの?あなたはそう言う事を私としたくないし、そういう行為自体が嫌だった人じゃ無いの?」


「――俺が?確かにしたくもない相手からの性的アピールは、ぶち殺したくなるねぇ。だがね、可愛い奴は別だよ。こうやって硬直するお前は可愛いねえ」


「ひゃあ!」


 左耳の裏側を舐めるなんて!!

 背中にエシュメルの体重を感じている今としては、私はどっきどきのぞわぞわ体験である。


 いやだ!!

 ……エシュメルの行為が嫌、どころか、もっとを期待し始めた自分が嫌。


 私の脳裏に浮かぶのは、BL本で受けがこんな風に攻めに圧し掛かられている状態という、良いなって思ったエロシーンの数々、なのだもの。


 背中に感じる筋肉質で温かな体が、パズルのピースみたいに私に嵌っている。

 いえいえ、まだ、凸部は嵌っていないわよ。

 って、何考えてるの、私は!!


 下半身がなんかきゅっとしてしまい、私は思いっ切り両足を閉じた。


「……固くなって。ほら、怖いだろ。早く俺の腕から逃げ出さないと、もっと色々してしまうぞ」


 私は左耳に左手を当てた。

 エシュメルの囁きが怖いどころか、左耳をくすぐるエシュメルの吐息の刺激に耐えられなくなったからだ。

 なんだか体がびくびくしちゃうのよ、それで腰の辺りがざわざわするの。


「ひゃっ」


 うなじにキスをされた!!

 私を追い詰める彼は含み笑いを私に聞かせながら私の上でゆっくりと動き、今度は私の右耳に唇を近づけてきた。


 キス?

 舐める?


「わんっ」

「きゃあ!」


 驚いた私が仰向けになろうと体を転がすのと、エシュメルが自分の体を持ち上げたのは同時だった。

 エシュメルは仰向けになった私の檻になった。

 彼の体で押しつぶされてはいないけれど、私は彼という存在から逃げられない。


 私は私を捕らえ、私を獲物として見下ろす魔王を見返した。

 青い瞳はきらりと輝いたが、それはきっと彼の優越感によるものだろう。


「ま、魔王軍の進撃を阻止しようとしてるから、それの阻止?」


「おや。そんな事をしてたのか?」


「あ」


 世界が割れた様な気がした。

 男の人の大笑いの声って、部屋どころか世界を響かせるのね。

 それでもって、世界を壊せる笑いを放つ男は、自分こそ壊れたようにして私の上に落ちて来た。

 でも、私は彼の全体重を受けなかった。


 ちゃんと私が潰れないように、いえ、私の体に彼の体がぶつかる寸前に、彼は腕立て伏せの体制となって自分の体を自分の腕で支えたのである。


 だから、私がびっくりしただけだ。


「その顔!!」


 彼はさらに大笑いを弾けさせ、きゃあ、今度こそ私の上に落ちてきた。

 でもってあなたが顔を埋めたそこは、私の胸という小山がある場所よ。


「ちょ、ちょっと、エシュメル!!」


 エシュメルは私の胸から顔をほんの少しだけあげた。

 ほんの少しだけ。

 だから私に見えるエシュメルの顔は、悪戯そうに私を見返す彼の目元だけ。


 うあ。


 なんだか、下半身がなんか腫れちゃったような感覚がする。


「たったかな?」


 何ですと?

 立ったって、何が?

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