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予知夢を見たからには

 その日の夢は詳細過ぎて吐きそうなほどだった。

 私が守る城塞都市ガリビキアが陥落し、私は侵略者によって処刑されるのだ。


 ただし、首を刎ねられる時の私は恐怖ばかりか幸せばかりだった。


 侵略してきた魔王軍のデミヒューマン達によって、限りない恥辱と永遠と思える拷問を受けていたのだから、確実なる死は解放そのものだったのだ。


「のわけあるか~!!」


 夢の中で首を刎ねられた瞬間に私は目覚め、自分の血どころか寝汗ばかりで濡れそぼっていた私は、天井に向かって叫んでいた。

 死を納得なんてしてたまるか。


 だって私は、二度目なんだから!!


 前世は処女のまま恋も知らずに、いいえ、恋はしまくったけれどどれも成就せずに処女のまま終わったという喪女人生だった。

 小説や漫画で、素敵な体験、と事後の主人公が夢見がちな目で恋人に抱きつく、そんな世界を羨ましく思いながらも、一度だって体験した事が無いままだった。


 こんなの初めて!!


 そんなの一度だって無いよ!!


 それで?

 そうよ、これが予知夢だとしたら、私は処女のままどころか、最低最悪な体験を受けたあとで殺されてしまうのよ。


 私は自分の頭を両手で掻きむしった。

 私の指先が感じる髪質は、前世と違って柔らかくさらさらとしたものである。

 そこで私は冷静になり、ベッドから飛び出す。


 ぜんぜん冷静じゃないのは認めます。

 だって今すぐに確認しなきゃって思ったの。

 今の自分の姿を。


 洗面用のタライを覗き込み、そこに鏡の魔法を施す。

 単なる水が銀色に輝き、水面は揺らぐどころか硬質化した。

 そして転生した今の私の姿を映し出した。


 肌は二十代になったばかりの年齢に見合う光沢で健康的に輝き、明るいローズブラウンの髪色が滑らかな白肌の白さをさらに際立たせた上に温かみと華やかさまでも添えている。

 前世とは段違いに綺麗だと思える自分の顔にうっとりしてしまうが、そんな私を水鏡に映った私が冷静に見返しているように見えるのは、私の瞳が少し蛍光カラーが入った水色だからだろうか。


 アニメ絵ならば可愛い色合いなのだろうがリアルでは不気味だな、と、私は自分の瞳を見るたびに冷静になってしまう。


「うーん。でも、前世の喪女の時と比べれば、男の人は今の私を選ぶわよね、きっと、たぶん」


 私は自分の胸の前で拳を握った。

 決意せねば。

 行動するために。

 今度こそ死んでしまう時に後悔なんかしないように。


「よし。告白、するぞ」


 聖女に選抜されて北城壁のガーディアンにされて五年。

 私が住まう北の塔から、実は毎日決まった時間に私は町を眺めている。


 私達聖女がスーパーナチュラルな力で町を守っているならば、スーパーマッスルな力で町を守ってくれている騎士団様達が町を巡回されていらしゃるのだ。

 私は彼らの凛々しく絵になる姿を、日々の癒しとしているのである。


 毎日、毎日、私に眺められているとは知らないで、彼らは前世の私が愛したBL本のキャラや乙女ゲーの男性キャラや、リアルアイドルを彷彿させる男の子達な振る舞いをしてくださっている。

 中世の歴史絵のタイツ履き騎士衣装じゃなく、ファンタジーアニメや乙女ゲー世界の煌びやかなコスプレしているんですかって衣装な上に、騎士達の外見が細マッチョというモデルみたいな線の細い美青年ばかりでいらっしゃるの。


 そんな彼らの姿を、前世腐女子だった私が美味しく頂かないはずがない。


 ああ、その中でもひときわ輝く、騎士エシュメル様。

 金色の輝ける髪をお持ちの、神様よりも美しいだろうと評判の騎士団長様。

 慈愛の心をお持ちで情に厚く礼儀正しいと評判の、彼、ならば。


 聖女の私がお願いしたら、一晩ぐらいの思い出を私に作って下さるわよね?

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