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レキスターシャ公

 レキスターシャ領は王都から西にあり、王国最大の広さを誇る。

 その歴史は、国が興った当時のレキスターシャ公が、敵国と戦った際、多大な貢献をしたとして、下賜されたものだ。

 大きな町もいくつか点在し、そこには常に兵士が駐屯している為、治安もいい。

 なので、商人が行きかう為、商業も盛んで、経済的にも発展している。

 軍事力は国内最大。

 魔王軍、モンスターが現れた際、真っ先に矢面になってもらう為、王様からの信頼も厚い。

 本来であれば、だが。


 俺達は馬車で揺られながら、レキスターシャ領までやってきた。


 公都は王都に負けない程に広く、活気があり、こちらでも、まさか公爵家の方で大事が起こっているなど夢にも思ってはいないだろう。


「それにしても、賑わってるな」


 治安がいい為か、商人も、行きかう人々も生き生きとしている。


「これだけ発展していると、公国として独立も出来ちゃうのよね。まあ、レキスターシャ公にはその気はないらしいけど、この件でこじれたらもしかしたら・・・」


 アティの表情は暗い。


 どうしてももしかしたら(・・・・・・)を考えてしまうのだろう。


「アティ、今は深く考えてもしょうがない。まだ手立てがあるんだ。やれることをやろう」


「う、うん。そうね」


 俺達にとって、“国”という概念はアティよりもずっと軽い。


 王族はその重みを背負っているんだ。


 だから、俺が気軽に元気づけるなど、畏れ多いとも思うが、今は彼女の心の負担を和らげてあげたい。


「行こうか、公宮へ」


*********


 話は通っているのか、意外にも俺達はすんなり通された。


「おー」


 内部を見て、俺は感嘆の声をもらす。


 凄いな、王宮と比べても遜色ないぞ。


 通された先は、謁見の間。


 流石は公爵。


 王様以外にも、その広間があり、その玉座に座る人物がいるらしい。


 さて、その人物は俺達を(多分正確にはアティを)認めると、こちらにやって来た。


「おお、殿下」


 アティの足元までやって来ると、レキスターシャ公は膝をつく。


 慣れたもので、アティはそれを悠然と見ていた。


「立ちなさいレキスターシャ公。公爵のすることではないわ」


「はっ! ですがわしも王の家臣の一人ですので」


 そう言うと、ゆっくりと立ち上がる。


「前置きはいいわ。貴爵ともあろうものが、なんて体たらくなの」


「・・・面目ありません」


 どうやら想像と違って、傲慢な人ではないらしい。


 軍服は着ていない。

 貴族然とした恰好をしているけれど、筋肉は隆起し、眼光は鋭い。

 立ち振る舞いには隙がなく、歩行一つとっても達人と判る。


 キャリアバウンドを使わず、レベル20の素のままの俺で戦えば、勝ちを拾うのは容易ではないだろう。

 

 騎士団長と同レベル、あるいはそれ以上か。


 既に50を超えているという話だが、ワックスで固めた口元の髭、あまりまとまっていない髪は燃え上がるように逆立っており、その様はまるで獅子のようだ。


「なんでこんなことになっているの?」


「それは・・・」


 口ごもるレキスターシャ公に、アティは多少さっきよりも柔らかく問いかける。


「話してくれないと、対処も出来ないわ」


「そうですな」


 コホンと頷くと、俺達を見た。


「その者達は、殿下の従者ですかな? 出来れば人払いをして貰いたく」


 ああ、そうか。

 そう思うよな。

 これは身内の恥。

 誰にでも話していいことではない。


「彼らは問題ないわ。この人はレオダス。あたしのパートナーよ!」


「なんと!」


 目を見開いて、レキスターシャ公は俺を見る。


「うん? レオダス? レオダスレオダス・・・。おお、主は何度か王宮に招かれていたな」


 俺は驚いた。


「は、はい。そうです」


 公爵はこっちにいることが主なはず。

 それなのに、俺のことを覚えていてくれたのか。


「確か特殊なスキルを取得していたのだったか?」


「そう、ですね」


 早熟は今になって思うと、苦いものを感じるが、確かに俺を支えてくれていたスキルだ。


「それだけじゃないわ。ここにいる少年こそが、勇者アトスよ!」


「なんと!!」


 初めて見るのか?


 あるいは以前見た時は、小さかったから判らなかったとか。


「アトスです」


「た、確かに、少年とは思えないその佇まい。なるほど、君がアトスか」


「そして、彼女はステラ。とても優秀な武闘家よ」


「ふむ」


 レキスターシャ公は顎に手を当て、値踏みするようにステラを見る。


 流石のステラも、こうまで威圧感を感じる公爵に視線を向けられると、身構えてしまうだろう。


「ほぉ。見事に鍛えられた身体だ。隙もない。どうだお主、わしの部下にならんか?」


「や、あたしは今このメンバーでいるほうが楽しいんで、遠慮します」


「そうか」


 本気ではなかったのだろう。

 それほど残念がっているわけではない様子だ。

 だが、あの英雄とまで称えられた人のお墨付きをもらった。

 流石といったところか。


「で、おまけに聖女のクレアよ」


「だ、誰がおまけですか!」


「聖女、そうか、主が聖女クレアか」


 またも公爵は驚いた。


 というか、聖女をおまけって。

 ほんと仲悪いなこの二人。


「いやはや、錚々(そうそう)たる顔ぶれですな」


 アティは誇らしげに頷く。


「そんなわけで、彼らはあたしの大事な仲間。聞かれても一切構わないわ」


 レキスターシャ公は大きく頷く。


「では、話しましょう。これまでの経緯を」

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