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王国の危機

「王国の危機だって?」


 俺は背筋が凍った。


 なんだそれは?


 一体何が起こっているんだ?


 真っ先に考えたのは魔王の軍勢だ。


 魔王。


 それは魔界を支配し、魔界の住人を従える魔族の王。


 俺が生まれる遥か以前から存在しているとされる魔王は、何千年も生きているのか、あるいは代替わりを繰り返しているのかは定かではないが、長い間魔界を統治している。


 その魔界は、ここより遥か北にある。


 ある一定の地域に来ると、魔力が禍々しくなり、人間には瘴気と呼ばれるそれへと変わる。


 急に死んでしまうことはないが、体調を悪くし、住むなど出来ない土地なので、人間がそちらに開拓することはないが、あちらは違う。


 こちらの肥沃な大地を狙い、版図を広げるべく、ずっと戦いを繰り返してきた。


 最前線では今も戦いを続けているし、実は俺も一度はその戦いに身を投じたこともある。


 俺が参加したのは一度きりの遠征だったけど、今なお、戦いは続いている。


 だからこそ、俺達は旅をしている。


 この戦いに終止符を打つため、魔王討伐の手がかりを集め、貴重なアイテムを収集し、手ごわい魔族、モンスターを倒しながら、徐々に魔王の軍勢の力を削いでいたのだが、それよりも早く、あちらが大規模な侵攻を開始してきたとしたら?


 それは王国どころか、世界を巻き込んだ大戦争となる。


 アトスをちらりと見た。


 考えていることは同じなようで顔が真っ青だ。


 だが、


「あ、いえ。皆さんの考えは解りますが、魔王とは関係がないようです」


「そうなのか?」


 意外にもあっさりと、最悪のイメージが騎士によって払拭された。


「それならば、自分にも戦争準備の声がかかる筈。そんな命令は受けておりません」


「なるほど」


 確かに、そうなれば騎士には伝わっているはずだな。


「じゃあ、一体国家の危機とはなんなんだ?」


「その、自分には分りかねるのですが」


「君の考えでいい」


 無茶ぶりだったか?

 まあ、考えの取っ掛かりでも掴めれば。


「その、政治の話ではないか、と」


「「「政治?」」」


 なんだそれ?


「その、俺達は言ってみれば戦闘集団だ。政治関係で役立てるとは思えないんだが?」


「し、失礼しました。王から指令を受けた際に、自分が感じた印象ですので、気になさらないよう」


「ああいや、責めているわけじゃないから」


 しかし、政治か。


 もしや、人間同士の戦争?


 それならば確かに、武力行使になる前に、外交で解決できなかったのだから政治と言えるだろうが。


 それにだ、政治というならば、ここで一番関わりがありそうなのは、王女であるアティなのだが、この騎士は“勇者一行”に話しかけた。

 アティではなく、だ。


 アティは俺の視線に気が付き、俺と同じ考えを持ったようだが、首を横に振る。


 心当たりなし、か。


「まあ、とにかくだ。王様からの召還じゃ、行かないわけにはいかない。さっそく準備しよう」


「おお、よろしくお願いします」


 騎士は頭を下げる。


 その騎士に俺は言った。


「疲れているだろうが、早馬で君は一足先に行って、俺達もすぐに向かうと伝えてくれないか?」


「はっ! 了解いたしました」


 そう言って、騎士は素早く大衆食堂から出て行った。


 その後で、俺達は顔を突き合わせる。


「どう思う?」


 俺がまず誰ともなく尋ねると、アティは首を捻る。


「うーん。あの騎士さんの話を鵜呑みには出来ないけど、魔王関係じゃないとして、国家の危機かー。とすると確かに政治になるのかなー」


「心当たりはまるでないのか?」


 尋ねるとすんなりコクリと頷く。


「少なくとも、あたしが王宮にいる時に、そんなきな臭い話は出ていなかったわ」


「そうか、それは安心材料だ」


 しかし、さっきも言ったが、俺達は戦闘集団だ。


 武力が必要な戦争じゃないとすると一体なのだ?


 あるいは、急激に関係が悪くなって国がいるっていうのか?


「レオダス」


 クレアが俺を見る。


「ここで考えていても仕方ありません。すぐに王都に向かいましょう」


「そうだな」


 頷き、アトスを見る。


「冒険は一時中断だ。行けるな、アトス」


「うん」


「よし、戻るぞ。王都に」

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