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異世界からの来訪者11

 俺がそう通告した。


 アトスとクレアが驚く。


「レオダス・・・」


 アトスが何か言いたそうに俺を見る。


 俺は敢えてアトスを見ずに、違う、見れずにスティーグを見た。


「そーだそーだ」


「追放だよ追放」


 アティとステラは俺に賛成のようだ。


 告げられた本人であるスティーグは驚くでも騒ぐでもなく、コクコクと頷く。


「ほほぉ? 俺を追放すると?」


「ああ、やる気のない奴がいてもしょうがないからな」


 胸がざわつく。


 こいつに対する感情。


 この俺が追放を言い渡したこと。


 ない交ぜになって俺の胸を締め付けた。


 スティーグは大きく頷いた。


「よし、お前の意見は分かった」


「ああ、じゃあな」


「だが断る」


「なんでだよ!?」


 納得したわけじゃなく、はなからこっちの言うことを聞く気がなかったのかこいつ。


「言ってるだろ! 戦わない奴がいたってしょうがない。出て行ってくれ!」


「だから、戦わないわけじゃないぞ? お前らが無理そうなら手を貸すって」


「何様だあんた!」


「レオダス」


 アトスが俺の服を掴んだ。


「駄目だよ」


「アトス、しかし・・・」


 アトスが反対とは。


 昨日の、あれがあったから、か・・・。


「レオダスが、その言葉を言っちゃ駄目だ」


「っつ」


 くっ、俺だって抵抗がないわけじゃ。


「まーまー」


 何故かスティーグが俺達を宥める。


 いや、あんたのことで揉めてんだよ。


「レオダス。ちょっと顔貸せ」


「・・・なんだ?」


「男のナイショ話だ。ちょっと来い」


 俺が行くべきか断ろうか迷っていると、何故かクレアが「お、男の」と喉を鳴らし、ステラが「まさか、クレア、そっちも・・・」と、よくわからないことを言っている。


 悩んだが、俺はスティーグに付いていき、皆と少し距離を取った。


「昨日手合わせしたお前なら判るだろ? 別に足手まといにはならねーよ」


「士気に関わる」


「まあ、何を言われても付いていくけどな」


「くっ、この野郎」


 イライラする。


 俺はセリシオに追放を言い渡された時、ショックでしばらく動けなかった。それでもついていこうなんて厚顔無恥なことは言えなかった。


 こいつはさも当然のように。


「随分イラついてるなぁ」


「誰のせいだ誰の!!」


 スティーグは嘆息し、頭をぽりぽりとかく。


「昨日、アトスとの人生相談でイラついてるなら気にするな」


「っつ。あ、あんた気が付いて」


 そ、そうだ。

 こいつ程の腕前なら、気配を察することなんて簡単。


 くっ!

 コソコソ見ているのがバレた。滅茶苦茶恥ずかしい!!


「あれは外の人間の俺だから言えたってのもある。お前のことで悩んでたんだしな。言いにくかったんだろ」


「い、いや、俺は・・・」


 くっ、あれがバレたとなると、それで俺が苛立っていたのも見抜かれていたってことか。

 つまらない嫉妬で、あんなことを言ったのが。


「なんだかなー。お前も追放された口なのか?」


「な、なんでそれを!?」


 こいつエスパーか!


「なんとなくだ」


「い、いや。そこは流せないぞ。なんで分かった?」


「あいつらもお前も、やけに“追放”って単語を気にしていたからな。アトスもお前が言ったことにショックを受けてたみたいだし」


「うっ」


 罪悪感で胸が痛い。


 それにしてもこいつ、それだけの情報で当たりを付けたのか?


「事実上、このパーティーのリーダーはお前だろう? もっとデンと構えてろよ」


「わ、悪かったな」


「お前に何があったのかは知らん。一度追放されてなんで戻ってきたのかも。だが、あいつらがお前を頼りにしているのは判る」


「・・・そう、思うか?」


「外から見ているとな」


「俺は、一度追放された」


 俺は何故か口を開いていた。


「レベルが中々上がらなくてな。足を引っ張りたくなくて」


「レベルねー。それが上がれば身体能力が上がるのか。便利なもんだ」


 こいつの世界にはないんだったな。


「・・・俺は、あんたみたいに、追放されても付いていくなんて思いもしなかった。俺は、あんたとは違う・・・」


「そりゃそうだろう」


 スティーグはあっさりと認めた。


「いや、肝が太いって意味じゃないぞ。大事にしていればそこを出て行けと言われたらキツイだろうし、尚更まだ付いて行くなんて言いにくいだろう」


「・・・ああ」


 確かにな。


「だが、お前は戻って来た」


「行き違いがあったんだ。それに追放された後に、新しいスキルに目覚めて」


「ああ、あの規格外の力な」


 だから、こいつには言われたくない。


「だが、関係ねーだろ」


「えっ?」


「力が多少劣ったとしても、それでもお前はあの中に要れたはずだ。あいつらはお前を必要とした筈だ」


 ああ、確かにアトスもクレアも戻ってきてくれと言った時には、まだ“キャリアオーバー”のことを知らなかったしな。


 それでも、あいつらは・・・。


「気が晴れたか? もっと気を大きく持て」


「・・・すまん。つまらないことで当たってしまった」


「いやいい。それより」


 ぱっとスティーグは手を出した。


「相談料。金くれ。貨幣は使えないだろうから(きん)とか」


「だから、台無しだよ!!」

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