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異世界からの来訪9

 俺のことだと?


 アトスが俺のことで悩んでいる?

 どういうことだ?


 益々出にくくなってしまい、俺は息をひそめる。


「なんで、それを?」


「なんとなく」


 本当に読めない奴だ。


 なんで俺にも分からないアトスの悩みを。


 胸がもやもやした。


「俺はどうせもうすぐ抜けるんだ。木にでも話すつもりで言ってみないか?」


 俺のことで悩み。

 兄貴分として、あいつを悩ませることをしてしまったのだろうか?


「レオダスは、本当に凄いんだ」


 アトスはスティーグを見ることなくぽつりぽつりと話し出す。


「ずっと僕の憧れだった。強くて頼もしくて、だから、彼のようになりたいと思っていた。だって」


「『だって僕は勇者なんだから』、か?」


 バッと、アトスはスティーグを見た。


「・・・なんで?」


「なんとなく。ほれ、続きを話せ」


 戸惑いつつ、アトスは続ける。


「僕は勇者だ。名目上は僕がリーダーだけど、実際にはレオダスだ。彼の凄さを最近身に染みて分かって、僕もあんな風にならなくちゃって」


「世界を救う勇者はそうじゃなければならないってか?」


 コクリとアトスは頷く。


 アトス。

 あいつそんなことを考えていたのか。

 勇者のプレッシャーをずっと感じていたんだな。

 気が付かなかったのか。

 ずっと傍にいながら、俺は・・・。


「阿呆」


「なっ!?」


 こ、この野郎。

 アトスの悩みをアホで片付けやがった。


「お前はまだガキで未熟だ。出来なくて当たり前だ」


「で、でも、僕がやらなきゃ!」


「そのまま気を張って、張り続けてるとつぶれるぞ?」


 ぐっと、アトスは唇を噛む。


「辛いと思うこともあるけど、僕は勇者のスキルを授かった。僕がやらないといけないんだ!」


「スキルか。なるほど、スキルが“勇者”だから勇者なのか」


 コクリと頷く。


「だったら逃げろ」


「えっ?」


「そんな誰とも知らない奴に押し付けられた使命なんぞ忘れて、とっとと逃げろ」


「そ、そんな無責任な」


「逆だろう? そもそもお前みたいな子供に、いきなり責任を押し付ける奴が悪い」


「そ、そんな」


 俺は衝撃を受けた。


 使命を押し付ける奴が悪い。


 勇者に選ばれるなど、この上ない名誉だ。


 それを、そんな風に考える奴がいるなんて、思ってもみなかった。


「僕が勇者を辞めたら、世界が危機に陥るんだ。誰かが苦しむんだ!」


「だから?」


「だ、だからって」


「それがお前に押し付ける理由になるのか? “誰か”と言ったな? その“誰か”の苦しみを全てお前が背負わなければならないのか? じゃあ、お前はどうなる?」


「・・・」


「特別な力があるから何かを背負わなければならない。そういう考えを俺は大嫌いなんだ。それを使命だ運命だと周りは騒ぐ。お前一人を生贄にしてな」


「っつ」


「そんな顔も知らない奴らより、周りを見ろ。あいつらはお前が旅を辞めたからってそれを責めるような奴か? 無責任と罵倒するのか?」


「そ、そんなことないよ!」


「だろう? お前が旅を続けるのは自由だ。だからって全てを背負う必要なんてねーんだよ。気楽に行け気楽に」


「そう、なのかな。それでいいのかな?」


 スティーグは鼻で笑う。


「赤の他人がお前を否定しようと、あいつらは否定しないだろうさ。お前はどっちを信じる? 赤の他人か、仲間か」


「・・・仲間さ。当然だよ」


「レオダスがやたらと強いから、劣等感を感じているんだろ。だからどうした、頼れ、背負わせろ。仲間なんだったらな」


 よっと、と。

 スティーグは立ち上がる。


「んーー! ガラにもなく人生相談しちまったな」


 伸びをすると、スティーグはそのままトコトコとアトスから離れていく。


「あ、あのっ」


「寝る。お前もさっさと寝ろ」


「あ、あのスティーグ」


「あ?」


 スティーグは振り返る。


「あの、ありがとう」


「感謝するなら金払え」


「・・・台無しだよ」


 アトスはがっくりと肩を落とした。


 俺はそれを隠れながら聞いていた。


 本来なら、この会話は俺がしなきゃならなかった。

 俺が、アトスから聞いてやらなければならなかった。


 俺は知らず臍を噛んでいた。

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