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異世界からの来訪者8

「う、旨い」


 思わず、俺は称賛の声を上げてしまった。


 スティーグの作った料理は、本当に意外なことに旨かった。


 特別に材料を新しく調達したわけではない。


 持ってきたそのまま食べようとしていた材料をちょっとひと手間加えただけなのに、それが旨いのだ。


 無論、宮廷料理とは比べられないが、これはこれで味わい深い。


 舌の肥えているはずのアティも思わず口に手を当てる。


「くっ、美味しい」


「本当ですね」


 調理担当になってしまっているクレアも納得の美味しさらしい。


「どうしてこんなに美味しくなるんですか?」


 クレアが尋ねると、スティーグはなんでもないというように答える。


「保存食は塩が効いてるからな。それだけで調味料としては十分だし、煮込めば味わいも豊かになる。その他の食材も、そのまま食べられるが、工夫すればそれだけ旨くなるんだ。ようは愛情だな。料理に対する」


「なるほど、愛情。料理は愛情」


 なにやらクレアはメモを取り出した。


 なんかこいつが愛情って言うと物凄い違和感があるぞ。


「しかし・・・」


 ふぅっと、スティーグはため息をついた。


「どうしたんだ?」


「こっちの食材も料理も、俺の世界と変わらないみたいだな。がっかりだ」


 本当に残念なようで、スティーグは肩を落とす。


 こいつ、食べるの好きなんだな。


「そんなに落ち込むものか?」


「お前みたいな馬鹿舌には分らんだろうが」


「悪かったな」


「旅行に行ったらその土地の料理に心躍らせるものだろう? 食べてみたら地元のチェーン店と同じ味だってくらい残念だぞ」


「安心の味でいいじゃないか」


「はっ、ゴミめ」


 そこまで言うことじゃないだろう。


「ま、まあまあいいじゃないですか。楽しく食べましょう」



 そう言って、クレアはフォローに入る。


 ステラは悔しそうにモグモグ食べていた。


 気に入らない奴の料理が旨いので面白くないようだ。


 アトスは黙々と食べてるな。


「ところで、レオダスだったか?」


 話を振られ、俺は料理から顔を離す。


「なんだ?」


「お前の剣。大丈夫か?」


「えっ!」


「あれだけの力と力で打ち合ったからな。無事か?」


「っつ」


 俺はひやりとしてドラゴンスラッシュを抜いた。


「ああっ」


 一か所刃こぼれがある。


 大金出して買った俺の愛剣が!!


 俺はがっくりと膝をついた。


 皆が俺の周りに集まってあたふたしているが、俺のショックは癒せない。


「しょーがねーなー」


 スティーグは呆れて息を吐く。


 ほっといてくれ、そもそもこいつのせいだろうが。


「んじゃあ、ホイッホイッと」


 スティーグは例の剣を抜くと、俺のドラゴンスラッシュの欠けた部分に軽く当てる。


 すると、


「なっ! 欠けて部分が復元されてる!!」


 な、なんで?

 なんで剣を当てると元に戻るんだ!!


 俺が目を白黒させてスティーグの剣を見ると、既に納剣してしまっていた。


「・・・どういう理屈なんだ?」


 スティーグは事も無げに言う。


「さて? お前らが言う通り、これが神剣というのなら、奇跡の一つも起こせるんだろうさ」


*********


 明日は厳しい戦いとなるだろう。


 俺達は食事もそこそこに、早めの就寝することにした。


 ・・・スティーグ、得体のしれない奴だ。


 さっきドラゴンスラッシュを復元させたことも、なんでもないという風に何も言わないし。


 飄々(ひょうひょう)としていて、何を考えているのかまるで分らない。


 異世界から来っている胡散臭さ、あの人を食った性格。

 教師をやっていると言っていたが、あんなので務まるのか?


「眠れないな」


 明日は決戦だ。

 早く寝ないといけないっていうのに、寝付けない。


 俺は諦めて、少し風に当たろうと腰を上げた。

 皆寝ているから起こさないように、ってあれ?


「アトスがいない」


 トイレか?


 俺は気になって辺りを探した。


 程なくアトスを発見する。


 木の根元に腰を掛け、空を見上げていた。


「アト」


 俺が声をかけようとすると、それよりも早く、あいつ。スティーグがアトスの傍に寄っていた。


「あいつ、何を」


 俺は咄嗟に隠れてしまった。


 いや、なんでだよ!?


 何かを話している。

 俺はそっと聞き耳を立ててしまった。


「よお、何黄昏てるんだ少年?」


「あなたか・・・」


 アトスは一瞬だけスティーグに視線を移すも、すぐに空に戻す。


「何か悩み事か?」


「・・・関係ないでしょ」


「まあ、そうなんだが」


 スティーグはそう言いつつも、お構いなしにアトスの傍に腰を下ろす。


「悩みがあれば言ってみ。これでも教師なんでな」


「そんなタイプには見えないけど。先生っていうのも半信半疑だし」


「ま、そうだな。気まぐれだ」


「相談する相手が気まぐれな人ってなんなの?」


「はっはっは。まあいいじゃあないか」


「別にあなたに話すことなんて」


 アトスはそっぽを向くが、スティーグは無遠慮に言葉を続ける。


「レオダスのことか?」

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