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異世界からの来訪者6

 強い。


 圧倒的な強さだ。


 異世界から来たと言った言葉がにわかに現実味を帯びてきた。


 確かに、こんな奴が俺達の世界にそうそういるわけがない。


 スティーグは首を傾げ、何やらぶつぶつと独り言を言っている。


「うーん。やっぱりこっちで魔法を使うのは無理かもしれねーな。ま、なんとかなるだろう」


 あの膨大な魔力で魔法を使えば、それは凄まじい威力となるだろう。


 それこそ、強化された俺の【ファイアーボール】が霞むほどの。


「ところで、聞きたいんだが、こっちの世界ではお前みたいな規格外の力を持った奴がゴロゴロいるのか?」


「・・・あんたに言われても困るぞ」


 俺が規格外ならこいつはなんだ?


「俺みたいな人間は、多分そうそういない」


 スティーグはそれを聞いて、頷く。


「そうか。あーよかった。お前みたいなのがわんさかいれば、俺いらないじゃんと思ったんだが」


 そう言った後に、


「いや、むしろいらないほうがよかったのか? それなら俺も帰れるし。しかし、これ多分手伝わないと帰れないパターンだよな?」


 またよくわからないことを言っている。


「俺からも逆に聞きたいんだが、異世界にはあんたみたいなのがゴロゴロいるのか?」


 スティーグはにやりと笑う。


「俺が異世界から来たって話を信じる気になったか?」


「・・・そうだな。まだ戸惑っているが、少なくとも俺達の常識では測れない存在だということは分かった」


 それは俺達の共通認識のようで、後ろの仲間達も頷いている。


「それで、さっきの質問なんだが、どうなんだ。異世界の人間というのは、そんなに強いのか?」


 まあ、まずありえないと思うが、こんな奴がこっちの世界に雪崩れ込んできたら、飛んでもないことになる。


 しかし、スティーグは「いや」と否定した。


「俺も規格外なんだ。そうだな。多分お前の後ろにいる仲間くらいの奴が、強者と呼ばれるレベルなんだろうさ」


 皆の戦闘力を測っていたのか。


 俺は抜きにするとして、皆は十分に一般人から見れば強者だ。


 とすると、やはりこいつは別格なのだろう。


「あんた、レベルはいくつになるんだ?」


「レベル?」


「異世界にはない概念なのか?」


 スティーグは首を傾げる。


「ないな」


「じゃあ、スキルも?」


「ふむ。ないな。レベルにスキルか。技術とか技量って意味とは違うんだよな?」


「それとはまた別だ。レベルは主に身体能力。スキルは特別な能力のことを指す。因みに俺はレベル20だが、キャリアバウンドってスキルのおかげで実質70になる」


「なるほど。後ろの連中は?」


「大体レベル20からちょっと上当たりだ。スキルは勇者とか聖女とかそういったのがある」


「ゆうしゃ~?」


「僕がそうだけど」


 アトスがそう名乗ると、スティーグは膝を叩いて笑う。


「ははは、そうか。勇者か。こっちにはそんなのがいるんだな」


「・・・何かおかしい?」


 アトスは勇者という称号に誇りを持っているし、斯くあるべしと思っている。

 馬鹿にされたような言い方が気に入らないようだ。

 勿論俺も気に入らない。


「いやいや、そう怒るな。俺の世界にもそういう連中がいるぞ。かくいう俺も英雄とか呼ばれているしな。勝手に」


「あんたが英雄か。世も末だな」


 確かに、力だけならばそう呼ばれるんだろうが、この性格がな。


「他には、馬鹿とかカスとか女の敵とか化け物とか。一番多いのがクズ野郎だな」


 ぴったりじゃあないか。


 どうやら異世界も俺と基本的考え方は一緒らしい。


 というか、それを恥ずかしげもなく言うとは、つまりはこいつはそれを受け入れているわけだ。

 それでいて、この態度を崩さないとは、周りが何を言おうとどう思われようと気にしないんだな。


 傲岸不遜、傍若無人。


 アティやステラじゃないが、俺もこいつが気に入らない。


 だが、悔しいが、こいつの力だけは認めざるを得ない。


「さて、それで? 俺は合格か?」


 そうだった。


 俺はこいつを協力者として認めるかどうかを試しているんだった。


 人間性は評価出来ないが、確かに共に戦ってくれるのなら心強い。


「分かった。あんたが協力してくれるのなら助かる」


「そうか、それはよかった。それで? 何に困っているんだ?」

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