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カルルタート山の攻略は難しい③

 もうすぐこの山の峰だ。


 俺は辺りを見渡した。


「アティ、もう一度スケッチを見せてくれ」


「分かった」


 アティは荷物をゴソゴソとあさる。


 その中から一枚の紙を取り出す。


「はい」


「ありがとう」


 特薬草のスケッチだ。


 いくつものアングルから描かれているスケッチを見つめると、再び辺りを見渡す。


「ざっと見る限りはないな」


 俺はアティにもスケッチを渡し、彼女にも見るように促した。


 じっと見つめた後、彼女も周りを見渡すが、やはり見つけられない様で首を横に振る。


「一度見つけた冒険者はこの辺りで見つけたって言っていたんだよね」


「そう言っていたな」


 冒険者ギルドで聞いた限りだと、その時見つけた冒険者は珍しい草だ、くらいに思っていたらしい。


 それを持って帰り、研究を進めたところ、それが非常に有効な薬草であることが判明し、もう一度採取してくるように、その冒険者に依頼を出した。


 しかし、その冒険者は帰ってこなかった。


 捜索に向かった別の冒険者は、山の中腹辺りで亡くなっている冒険者を発見したらしい。


 その冒険者はランクはそれほど高くないC級だったらしく、峰の辺りまで来れたのは単に運が良かっただけのようだ。


 結局のところ、特薬草を見つけた唯一の人間は死に、どの辺りに生えていたのかは不明なまま。


 特薬草のスケッチと、あやふやな証言だけが手がかりとなった。


 せめてもう少し場所が絞れれば良かったんだが。


「手分けして探す?」


 アティはそう提案するが、これは賢明とは言えない。


「いや、ここで単独行動は危険だ。非効率だが、二人で探すしかないだろう」


 フーッと、アティは息を吐く。


「だよね。とはいえ、何処を探せばいいのかしら?」


「本当にな」


 カルルタート山は大きい。


 峰付近で発見されたとはいえ、広範囲だ。


 しかも発見した冒険者の主観な為、それが本当に峰付近なのか、実はずっと下なのかも判らない。


 無論、注意しながら登っては来たが、それらしい草は発見できなかった。


「取り合えず、その辺を探すしかないな・・・」


「それしかないよね」


 地面に注意を向けながら、俺達は探し回る。


 山頂まで踏破すればいいとかなら楽なんだけどな。


 木の傍だとか、日の当たる場所だとか、手掛かりが少しでもあればよかったんだが。


「ねえ、あれ違うかな!」


「どれだ?」


 喜びで声が弾むアティが指した先には、綺麗な色の草が生えていた。


 俺達はその草に近づき、じっと見つめる。


「・・・ちょっと違わないか?」


「・・・そう言われると」


 荷物からもう一度スケッチを取り出し、交互に見ると、はやり少し違う気がする。


 スケッチは詳細に描かれており、非常に分かりやすい。

 違いがよく分かる。


「一応持っていこうか。これだって可能性もある」


「そうだね」


「とはいえ、多分違うよな」


「そう、だね」


 二人で大きく嘆息した。


 それからも俺達は特薬草を探した。


 だが、これだという確信が持てる物は見つからなかった。


 しばらく経って、


「これはここでもう一泊することになるんじゃないか?」


「えー」


 アティは不満の声を上げた。


 俺だってうんざりだ。


 だが、ここまで来てなんの成果もなければそれこそうんざりだ。


 いくつかそれっぽいものは採ったが、おそらくは違う。


 そろそろ日が傾く頃合いだ。


 日が暮れれば探し出すのは難しい。


 切り上げてキャンプ支度した方がよさそうだ。


「ん?」


 俺は石を拾い上げ、勢いよく投擲した。


「ギャン!」


「え!?」


 投げた先で何かが当たった。


 アティは、俺の取った行動と、当たった何かに驚き、声を上げた。


 俺はアティの傍に寄り、当たった何かを睨む。


 そこにいたのは一匹の狼。


「いや、ワイルドドッグか」


 狼型のモンスター。


 俺が当てた一匹が木の陰から姿を現した。


 そして、ゾロゾロと。


「ええ!」


 ゾロゾロと、ワイルドドッグが現れた。


「な、何匹いるの?」


「ひい、ふう、みい。見えるだけで12匹だ」

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