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国王様からの呼び出し

「んんーー! いい朝だあ」


 俺はグイッと身体を伸ばして、汚れたベッドから起き上がった。


 昨日は最低限の掃除をして寝てしまったが、当然行き届いていない箇所は多々ある。


 時間をみて、少しづつ片付けていこうと考え、身支度を整えて、昨日買っておいたパンを頬張る。


 味気ない味のパンを水で流し込み、簡単すぎる朝食を済ませた。


「クレアがいたら、なんて言うかな・・・」


 思い出す。


 常日頃から俺の食事の大雑把さを見かねて、何かと世話を焼いてくれた優しい聖女を。


 信頼関係を築けていると思っていたが、彼女も俺が足手まといだと感じていたのか。


 いや、親しいからこそ言えなかったのか。


 苦い思いが胸を支配していく感覚に襲われて、パンと、頬を叩いた。


「何時迄も引きずるな!」


 自分自身を叱咤し、俺は冒険者ギルドに向かうべくスケルトンソードを持った。


「・・・これ、鞘がないんだよな。武器屋に先に行っておくか」


 抜き身の状態で拾ったからどうしようもない。


 となると、武器屋に行って、これの鞘だけを作ってもらわないといけないのか。

 オーダーメイドで。


 もう新しいのを買った方がいいかもしれない。


 幸いにも、クロスのおかげで金は手に入った。


 高価な武器でなければ手に入りそうだ。


 このスケルトンソードは何かあった時の予備として置いておき、新しく武器を買いに行こう。


 そう思って外に出た時だ。


 騎士の姿をした男性が俺の元に駆け寄って来た。


「レオダス殿で間違いないだろうか?」


「そうだけど、騎士が俺に何の用だ?」


「国王陛下がお呼びだ。王宮に参られよ」


 え?


*********


 どうしてこうなったーー!!


 現状をありのまま話すぜ。


 俺は今、謁見の間にて、王様を前にして膝をついている。


 な、何を言っているんだと思うだろうがマジだ。

 って、誰に言ってるんだ俺。


 一体なんで俺は呼ばれたんだろうか?


 心当たりとしては、当然昨日会ったアティシア王女の件だろうな。


 たらりを、汗が頬を伝う。


 ま、まさかぁ!

 俺が誘拐したと疑われたままなのか?

 昨日は王女がすぐに誤解を解いてくれたが、やっぱり問題になったのか?


 あるいは、俺が王女を拐かそうとしていたと思われているとか?


 ま、不味いぃーー!


 く、首か?

 首が飛ぶのか?


 ど、ど、ど、どうする俺!


 今の俺なら逃げられる。


 このままダッシュで逃げるか?


 だけど、その後どうする?


 一生お尋ね者として生きるのか?


 い、嫌だー!


 せっかく新しい人生が始まったと思ったのに、こんな転落は嫌だー!!


「レオダスよ、頭を上げよ」


「は、ははぁ」


 俺はゆっくりと頭を上げた。


 国王はまだ青年と言っていい歳の男性だ。


 美しい金の髪(アティシア王女の青い髪は王妃様似だな)と締まった表情。


 若いながらに王としてのオーラを感じる。


「久しぶりだな、レオダス」


「ははあ、陛下も御壮健で何よりで御座います」


「そう畏ることはない。俺とお前の仲だ」


「は、はい」


 王様とも、昔はよく話したしな。


 あっちも大分ラフな感じだ。


「昨日はアティを送ってくれて助かった。どうも、可愛がりすぎて奔放に育ってしまってな」


「い、いえそんな」


 おや?

 怒ってるんじゃないっぽいぞ?


 じゃあ、何で呼ばれたんだ?


 そうか!


 俺はピンと来た。


 お礼だ!


 そうか、娘を送ってくれてありがとうってことで褒美をくれるんだ。


 ワハハ。

 ツイてる。


 勇者パーティーを追放された時はそりゃあ凹んだもんだが、キャリアオーバーのスキルにクロスとの出会い、今回は褒美まで貰えるなんて、まだまだ俺もこれからだな!


「それでだレオダス」


「は、はい!」


 一体何をくれるんでしょうか?


「アティシアの護衛を断ったそうだな」


「あー」


 王様の目が、ギラリと光った、気がした。


 や、やっべぇーー!!


 ダメじゃん。

 やっぱダメじゃん!


『娘の誘い、なんで断ってんだよ、あ~ん?』って感じじゃないのかよこれ。


 どっどっどっ、どうなるんだこれ!?

 不敬罪か?

 首か?

 飛んじゃうのか?


 真面目に逃亡を視野に入れた。


 やっぱり調子になんか乗るもんじゃない。


 人生そう上手くいく筈がないのだ。


「なんでも、冒険者になりたいそうだな?」


「は、はい。俺のような無作法な男は、王女の護衛なんて分不相応な役職ではなく、気ままな冒険者の方が性に合うと思いまして」


 正直に言っちゃったけど、どうなんのこれー!


 王様は顎に手をやって「ふむ」と唸った。


 ゴクリと唾を飲み込む。


 俺の言葉の選択肢、合ってんのかな?


 それとも、取り返しがつかないところまで、来ちゃっているのか?


「だが、あれもお前に懐いていてな。勇者パーティーとして冒険に出て行った時も、随分心配していたのだぞ?」


「そ、そうだったんですか」


 知らなかった。


 王女はそこまで俺のことを気にしてくれていたのか。


 そんな王女の誘いを俺は断ってしまった。


 ・・・父親としては恨むだろうな。


「だが、お前が冒険者としての道を行くのであれば、それを止める権利はアティにはない。俺が命じればお前も応じる他ないのだろうが、そんなことはしないから安心してくれ」


「あ、ありがとうございます」


 恨んでもいない?


 じゃあ、なんで俺は呼ばれたんだろう?


 褒美ではなさそうだし、一体何故?


「あの、陛下。今日はどういった理由で俺を?」


 もう考えるのが面倒だ。


 ここはストレートに聞いてしまおう。


 すると王様は、ニヤリと笑った。


 な、なんだその笑いは。


 どういう意味だ?


「お前が冒険者になる。それはお前の決めたことだ。どうこう言わん。それでな」


「は、はい」


 なんだろう。


 この人、飛んでもないことを言いそうな気がする。


「アティもお前に付いて行きたいと言うんだが、構わないな?」


「構います」

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