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賢者サイド ステラ、呆れる

 賢者サイド


 私率いる勇者パーティーは、この前から苦戦を強いられているダンジョンへとやって来た。


 それなりに大きな造りをしているが、大人数で乱戦になると、中々面倒なことになりますね。


 その辺りは、うまい具合に前衛に頑張ってほしいものです。


 しばらくは何事もなく進むことが出来ました。


 ですが、これまで何度も苦い思いをした辺りに来ると、ずっと苦しめられてきた恨らしいモンスターに遭遇してしまったのです。


「あー、リザードマンですね。そこそこ頭がいい上に、素早くて中々やっかいな相手ですよ」


 ステラがそう言って構えを取った。


 さて、この女がどれだけ出来るのか?

 この戦いであなたの力量を見極めさせてもらいますよ?


「おっしゃあー。新入り、俺に続けえーーー!!」


 また暑苦しい声を上げて、アルトスが剣を抜いて突っ込んだ。


 相変わらずに脳筋馬鹿ですね。


 まあ、この猿にはそれしか出来ないのですからいいのですが。


「あ、ちょ、ちょっと!」


 ステラは驚いて、それに続きます。


 アルトスは思い切り剣を振りかぶり、リザードマンとぶつかりました。


 これまでもアルトスは二体程のリザードマンを押さえていましたね。


 ですが、それでは数体群れで行動するこのリザードマンには通用しなかったのです。


 そして、今回もリザードマンは五匹。


 私は危険が自分に及ばないよう、これまで同様後ろに下がりました。


 やはりというべきでしょう。


 リザードマンはアルトスの横を抜けて、こちらに迫ってきました。


「おりゃ!」


 ここでようやくステラが動きました。


 鋭い震脚からの当て身で、リザードマンを吹き飛ばします。


 ほぉ。

 口先だけの女ではないようですね。


 アトスは聖剣に力を送り、いつでも斬撃が飛ばせるように準備をしています。


 クレアはアルトスとアトスの中間辺りに陣取り、いつ誰が怪我をしてもすぐに回復ができるように待機中。


 私は小さくほくそ笑む。


 ほぉら、思った通り。


 レオダスなど不要なのですよ。


 数が一人増えただけで、以前の構成に戻れたのです。


 クレア、これが現実ですよ。

 あなたはレオダスに対して低級な幻想を抱いていたようですが、頭数を一人増やすだけで、この問題は簡単に解決出来るほどに、取るに足らないものだったのです。


「さあ、そのままモンスターをそこに留めておきなさい。私の魔法をお見舞いしますよ」


 私は勝利を前に、愉悦で心を満たした。 


「さあ、決めますよ!!」


 ここは私得意の火炎魔法で、あのトカゲ共を焼き尽くしてあげましょう!


 私は内なる魔力を手に集め、巨大な火球を生み出す。


 ステラがそれを見てギョッとした。


 ふはは、私の力を目の当たりにして声も出ませんか?


「ち、ちょ! ちょっと待って!」


「さあ退きなさい! 丸焼けになりますよ?」


「ぎゃー!」


 ステラは横っ飛びで私の火球を躱す。


 危ないですね。


 もっと上手く躱しなさい。


 アルトスが近くにいたクレアを抱きながら急いで下がる。


 何をしているのです!


 その女は私のもの。


 下らない劣情に負けて、クレアの肌に触れるなど、許しませんよ!


 火球はドンと、衝撃を与えながらリザードマンを焼いた。


 一瞬でした。


 ほんの僅かな時間で我々、いや、私は手こずっていたモンスターをアッサリと倒したのです。


 アルトスが此方に顔を赤くしてやって来る。


 私は嫌な予感がして魔力でシールドをはりました。


「て、てめえはまたぁーー!」


 やはり、今度は初めから拳を振り上げています。


 ガツンとアルトスの拳が私の結界に当たり、弾かれました。


 これがまた気に食わなかったようで、アルトスはますます顔を赤くします。


 ふふ、本当に猿そのものですね。


「アルトスさんダメです!」


「クレアいいのか!? コイツはお前も巻き込もうとしたんだぞ!?」


「大丈夫です。ギリギリ当たらない位置にいましたから」


「その通り。クレアには(・・)当たらないように撃ちましたよ。当然でしょう?」


 再び馬鹿猿は結界に向かって殴りつけます。


 ほらほら、手が赤くなっていますよ?


 それにすら気がつきませんか?


「それだって爆風食らったら怪我するだろうが!」


「成されるべき正義は果たされました。それが全てですよ」


「こ、この野郎」


 ふと気がつけば、ステラがポカンとしてこちらを見ていました。


「なんなのこの人達・・・」


 そんな不可解なことを呟いて。

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