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謎の少女

「おお、まだ残っていたか!」


 やって来た俺の生家を見つめ、思わず感嘆の声を上げる。


 俺がいない間は誰も手入れをしていないので、当然ボロボロであるが、潰れているわけでもなく残っていた。


 これで少なくとも野宿はしなくてすみそうだ。


 中は多分ホコリだらけだろうけど、それは掃除すればいいだけ。


 これからは家を拠点としてやっていこう。


 そう思い、胸を弾ませた時、視線を感じ、そちらを見ると、一人の少女がこっちを見ていた。


 淡い青の美しい髪をまとめている少女だった。


 背丈は165センチ前後といったところか。


 体を隠すように外套を被っているが、なんで俺を見ているんだ。


 俺が気がついたと知ると、少女は慌てて後ろを向き、走って行ってしまった。


「なんなんだあれは?」


 追いかけようと思えば追いかけられるが、何かをされたわけでもないからな。


 俺がオンボロの家を前に喜んでいたなら不審に思ったのかも知れない。


 それほど深くは考えずに、俺は中の掃除に取り掛かった。


*********


「かあぁ~、うっめぇーー!」


 俺は酒場でラガーを一気に飲み干すと、美味さのあまりその感動をそのまま声にした。


 クロスから報酬として貰った金で、俺はプチ豪遊をしている。


 一人で酒を飲み、旨い飯が食えれば幸せだ。


 何かの使命に燃えるわけでもなく、この先を心配することもない。


 その日暮らしの気ままな人生。


 こんな生活も悪くない。


 明日は冒険者ギルドに行って正式に登録をしよう。


 それで晴れて無職脱却だ。


 そう考えるとワクワクが止まらない。


 ますます酒が進むってもんだ。


 そんな感じでひとしきり感動を終えると、昼間感じた視線をまた受けた。


 視線の先を見てみると、やはり見ていたのは昼間の少女。


 もうたまたまそこに居たって言い訳は通らないよな?


 一体なんだって言うんだ?


 声をかけようとしたら、なんとあっちからやって来た。


 な、なんだ?

 やんのか、おお?


 まさか喧嘩を売られるとは思っていないが、思わず構えてしまう。


 すると、俺の前まで来たその少女は、突然袖を掴み、ぐいと引っ張った。


「来て」


「え、おい?」


 少女は力を入れて、無理やり俺を立たせてグイグイと引っ張っり、店の外に出ようとした。


 抵抗するのはわけない。


 今の俺ならば、どんな屈強な男であろうと動かずにいる自信がある。


 だが、俺は敢えて彼女について行くことにした。


 この少女が何者で、なんで俺に構うのか知りたかったからだ。


「お、お代。ここに置いていくよ」


 チャリンと代金をテーブルの上に置くと、少女に連れられて俺は店の外に出たのだった。


*********


 店の外に出て、あまり人気のない路地まで行くと、少女はようやく引っ張るのを止めた。


 周りを見渡しも誰も居ない。


 もしかしたら、タチの悪い連中が待ち受けているのかと思ったが、そうではないらしい。


 俺は彼女に問う。


「さあ、ついて来てやったぞ? 君は何者だ? 何故俺にかまうんだ?」


「久しぶりね」


 彼女はそう言ってニコリと笑った。


 正面から見るととんでもない美少女だ。


 年は俺よりもずいぶん下。

 おそらくは16、17ってところか?


 久しぶりと言われても全く心当たりがない。


「あー、その、誰かと勘違いをしていないか?」


 最もありそうな可能性を口にしたつもりだったが、少女は心外とばかりに眉間に皺を作る。


「まさか、あたしのことを忘れた?」


「勘違いじゃないって言うのか? 俺の名はレオダスって言うんだけど」


「勿論分かってるわ。馬鹿にしないで」


 間違いなく俺と分かった上で連れて来たのか。


 そうすると心当たりが全くないぞ?


「すまん。失礼かと思うが全く心当たりがない。降参だ。君は一体誰なんだ?」


 少女は唇を尖らせて縛ってあった髪を下ろした。


 するとまた雰囲気が変わり、活発な感じから美しい淑女となる。


 やはり心当たりが、


「いや、まさか、君は、いや、貴女は・・・」


 顔を引きつらせ、俺は彼女の名を呼ぼうとした。


「久しぶりねレオダス。アティよ」


「ア、アティシア王女!!」


 そう。

 彼女はこの国の王女。

 アティシアだった!

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