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虚偽の塔11

 ゲリュオーン。


 頭が三つに腕が六本のモンスター。


 手強いだろう。


 既にオーラで解る。


 だが、アンデットには違いはない筈だ。


「クレア」


「はい!」


 クレアは高々と杖を掲げ、呪文を唱えた。


「“ホーリーライト”」


 再び照らされた聖なる光がフロアに満ちる。


 ゲリュオーンはその光を浴びて身を縮こませた。


「グウウウウウウウゥ」


「よし、効いてるぞ、えっ?」


 俺が効果を喜んでいると、屈んでいたゲリュオーンを纏っているオーラが、噴射した。


「グウウウウウウウウウウ!!」


「なっ!」


 オーラは聖なる光を跳ねのけ、ゲリュオーンは勢いよく叫びを上げる。


「そんな、私の聖なる光を跳ね返した!」


「なんて奴だ!」


 くそ、これじゃあ、弱体化は難しいか。


 ならば、


「うおおおおおおお!!」


 俺はゲリュオーンに斬りかかり、一気に仕留めようとしたのだが、当然あちらも迎撃してくる。


 俺の剣を右腕の一本で受け、更に、もう一本の剣で横に薙ぐ。


「ぐっ」


 俺は急ぎバックステップを踏んで、これを躱すが、今度は左腕に持っていた剣を俺に振るう。


 持っている剣を三つ使っての同時攻撃だ。


「レオダス!」


 アトスがそこに割って入って、ゲリュオーンの攻撃を受け止めると、今度は剣を持ってない方の腕で、アトスの首を掴みにかかる。


「ぐぁ!」


「アトス!!」


 後ろからステラが踏み込むと、三つあるうちの一つの頭が、ぐるりと後ろに回転した。


「え、キモ!?」


 更に、本来であれば、動く筈のない稼働部分を超えて、腕が後ろに捻られ、ステラの拳を手で受け止める。


「くっそ」


 不味い、ステラも止められた。

 アトスが!


「ぐあああぁ」


 首を掴まれている。


 このままだと潰されるぞ。


「アトスさーーーーん!!」


 悲鳴を上げてクレアがアトスに向かって駆けつける。


 それを防ぐかのように、アティが杖を持ってゲリュオーンに攻め入った。


「だーから、あんたは無駄に突っ込むなって言ってんの、よ!!」


 ガッと、ゲリュオーンに詰め寄ったアティが超至近距離から、魔法をぶっ放す。


「“エアブレイド”」


 バキンと激しい音を鳴らし、アトスを掴んでいた腕が、根元から切断され、アトスは地面に落ち、苦しそうに咳き込んだ。


「ご、ごほぉ」


「アトスさん。しっかり!」


「早く後ろに下がらせなさい!」


「は、はい!」


 アティに叱咤され、クレアはアトスを担いで後ろに下がった。


 ゲリュオーンはアティの魔法を食らって、一本、腕を持っていかれたが、すぐに態勢を立て直し、お構いなしに襲ってくる。

 くそ、アンデットめ。


「下がれ!」


 俺は“ファイアバレット”を放ち、更に衝撃を与えると、ぐらりとゲリュオーンに揺れ、一瞬行動を停止した。


 その隙に、ステラはゲリュオーンに握られていた手を抜け出し、アティも退避する。


「あー、やばかった。あのまま掴まれてたら、あたしの拳もっていかれたかも」


 手をプラプラと振りながら、ステラは冷や汗をぬぐった。


 アティのファインプレーでなんとか難を逃れたが、あの六本腕(今は一本減って五本だが)を持っているゲリュオーンに接近戦を挑むのは極めて危険だ。


 三体よりも一体になった方が強くなるとは。


「魔法で組み立てるぞ。アティ!」


「了解!」


 俺とアティは同時に呪文を唱える。


 どれだけ頭が働くのかは分からないが、ゲリュオーンはアティに向けて突進するも、ステラに阻まれた。


「ちょっとあたしと遊んでいきなよ。かる~くでいいからさ」


 そう言って、ステラはステップを踏んで、付かず離れず、なんとかゲリュオーンの気を逸らす。


 そして、俺とアティの魔法が完成した。


「「“ファイアボール”」」


 飛び出した二つの火球。


 それが、左右の腹に見事命中。


 爆発を起こし、もうもうと煙が立ち込める。


「わぉ、あぶな。同時着弾だと凄いね。爆風だけでもあっついよ」


 撃つ直前、アイコンタクトで指示を出して、ステラは下がらせたが、それでも衝撃と熱波は襲ってきたらしい。


 さて、これでどうだ?


「やったの?」


「アティ、それフラグって言うんだよ・・・」


 こんな時でも的確にツッコむステラ。


 煙がなくなり、視界が開けてくると、ゲリュオーンが未だに健在であると思い知らされた。


 頭が一つ吹き飛び、鎧もデコボコであるが、未だに戦闘続行は可能のようで、まるで動きに乱れはない。


 マジか。


 しかも、俺とアティが危険だと見て、ステラを無視してこちらに走って来る。


「あ、こら待て、あたしと遊べ!」


 ステラが叫ぶもそれを無視。


 まずはアティに詰め寄る。


「っつ」


 接近戦にも対応できるといっても、こいつ相手では荷が重いだろう。


 アティの顔が強張った。


 そこに、


「はああああああああああああ!!」


 裂帛(れっぱく)の気合と共に、アトスが飛び上がり、もげてしまっていた頭部から伽藍堂(がらんどう)の鎧へ剣を垂直に突き刺す。


 回復したかアトス!


 本来であれば、これで完全に決まっているのだが、相手はアンデット。


 鎧はただのハリボテだ。


 これでも動きは止まらず、アトスを掴もうと、腕を上に上げるが、


「“セイクリットストライク”」


 アトスの両手から光が溢れ、伽藍堂の鎧を爆砕した!


 胴部分は吹き飛び、頭も腕も足も塵切りに飛び散る。


 これで完全勝利、と思われたが、カタカタと音がして、鎧は再び結合しようとしている。


 俺は体を硬直させた。


 まさか、まだ戦うのか!?


 再び剣を構える。


 しかしだ。


「“ホーリーライト”」


 クレアの聖魔法が放たれ、揺れ動く鎧を照らす。


 すると、辺りに漂っていた暗い魔力は浄化され、フロアから消えていき、鎧の動きはピタリと止まった。


 しばし、辺りに静寂が訪れる。


「・・・今度こそ、やったの?」


「だからそれフラグだってばアティ。でも、まー」


 ステラは鎧を見つめる。


 大丈夫だ。

 もう完全に活動を停止している。


「・・・もう大丈夫っぽいね。あー、疲れたー」


 そう言うと、ステラはその場で座り込んだのだった。

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