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賢者サイド 外道2

「なっ、私は高い金を払って」


 またも、冒険者は私の言葉を言い終える前に、懐から金の入った袋を取り出すと、私に向かって投げつけました。


 私は慌ててそれをキャッチします。


「ほらよ。金なんかよりも命が大事だ。もし、命を賭けるなら、納得のいった形で賭けたい。こんな阿保みたいな依頼で死んでたまるか」


 そう言うと、他の冒険者達もぞろぞろと先頭に立つ冒険者の後に付いて行きます。


 こっちを睨みつけることも忘れずに。


 馬鹿な。


 金で雇ったのですから、私は仲間というわけではないのですよ?


 同じ立場でものを言われても困ります。


 これでは金を払った意味がない。


 こいつら、どういう認識で、私と同行したのですか?


 ※ここに認識の差異があった。

 ギルドの掲示板に、セリシオは「同行求む」としか載せていなかった。

 ソロで活動している人間が、金を払ってでも、難しいクエストの為に仲間を募集することはままある。冒険者達はそう思っていた。

 一方、セリシオは盾になる人間が欲しかったので、黙って前で戦ってくれる人間が欲しかったのである。


「このことはギルドに報告する。もうあんたの依頼を受ける冒険者はいないだろうよ」


「なっ、なんですって!?」


 不味い。


 こいつらなどどうでもいいのですが、今後パーティーを組む人間がいなくなるのは非常に不味い。


 私の壁になる人間がいなくなるというのは、もう冒険に出られないことを意味しているのです。


「ま、待ちなさい。二倍、いえ、三倍の報酬を出します。だから」


 私が破格の条件を出しているのに、冒険者達の足を止まりません。


 私は焦りで汗を垂らします。


「ま、待てと言っているでしょう!!」


 絶対にこいつらを行かせるわけにはいかない。


 どうする?


 もう、これしかありません!!


 私は彼らの後ろから魔法を放ちました。


 冒険者の何人かがそれを食らって吹き飛びます。


 これにはあちらも面食らったようですね。


 ですが、ここでギルドに報告されては困るのです。


 最悪こいつらはここで始末しなくては。


「て、てめぇーーーーー!!」


 冒険者は目を赤くしてこっちに向かって走りながら剣を抜きました。


 ですが、


「ふっ、この距離で私の挑むというのですか?」


 こいつらがスタスタ行ってしまったので、私との距離は優に1〇〇メートルは離れています。


 私は慌てずに次の魔法を放ちました。


「“エアブレイド”」


 風刃が、冒険者を襲います。


「ぐあああああああああ!!」


 ザクザクと斬られて、冒険者はゴロリと転がりました。


 フッ、愚かな。


 その時です。


 ピコン。


『レベルが上がりました』


「な、なんですって?」


 私は驚きました


 ここでレベルアップ?


 人間を倒してもレベルは上がるのですか?


 今まで試したことはありませんでしたね。


 以前、城中の人間を生贄にした時は何も起きませんでしたが、あれは厳密には戦闘に入らなかったということですか。


 後ろからの攻撃は不意打ちですが、戦闘は成立しているということですかね。


 私のステータス値が少しづつ上がっていきます。


 そして、ついに、ついに。


『スキル、“最適解”を取得しました』


 ん? “最適解”? 一体どんなスキルなのでしょうか?


 私は説明を読みます。


『熟考した末に導き出される結論を、即断することが出来る』


「ほうっ! これは面白い」


 『思考加速』のスキルに近いものがありますが、少し違いますね。


 あれは、早く考えられますが、それでも間違った結論を導き出してしまう可能性もあります。


 ですが、このスキルは、じっくりと考えた末に私が導き出した最適解を一瞬で考えられるということ。


 右に避けるのか左に避けるのか。

 前に出るのか後ろに下がるのか。


 わずかその一瞬の間に、最適な行動をとれるということですね?


 面白い。


 実にユニークなスキルを覚えましたよ。


 それと、面白いのはもう一つ。


 どうも、モンスターを倒すよりも、人間を倒した方が、レベルアップの効率がいいのではありませんか?

 ※国同士の戦争に参加した人間ならば、当然知っていることだが、セリシオは知らなかった。


 フフッ、これは面白い。


 この冒険者達は、モンスターにやられたということにしましょうか。


 冒険に危険は付き物。

 死んでしまっても何の問題もないでしょう。

 これを繰り返せば私はどんどんレベルアップしていくのでは?


 ははっ!


 素晴らしい!!


 私はゆったりと、心が晴れる思いで、公都に戻りました。


 待っていなさいレオダス。


 私はお前など、及びもつかない存在になってしまいますよ?

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